予約販売のおせちは、百貨店や量販店、ネットなどチャネルを問わず拡大を続けている。家庭で調理せず、購入して用立てる傾向が進んでいるためだ。ハレの日の食卓を演出するツールとして需要は堅調で、各社の工夫もあって商品が多様化し、そのことが利用者の裾野を広げている。

東京・銀座と浅草に展開する百貨店の松屋は、この10年でおせちの売上げが1.5倍に伸長した。中でも08年ごろから本格化した洋風おせちは、全体の売上げの3分の1を占めるカテゴリーになっている。

食品部MD課の鈴木章浩バイヤーは「洋風おせちはカウントダウンパーティーのオードブルとして利用されることも多く、食シーンを広げている。正月の過ごし方が多様化する中、どのようなシチュエーションにも対応できるよう商品のバラエティーは増えてきた」と言う。

今季のおせち市場は、各業態が「平成最後」を銘打ち需要を喚起している。30~40代の子育て世帯にもおせちの慣習を継承していくため、キャラクターおせちや食物アレルギー配慮といった商品が増加傾向にあり、減塩や少量など高齢者や少人数世帯向けの品揃えも増えている。

松屋は、平成の世相を彩った「バブル」「アムラー」「ミニマム」「ゆとり」といったキーワード別にターゲットを絞り込んだ商品を開発した。

バブルは50~60歳、アムラーは40歳前後を対象とし、30代のミニマム向けには和洋のメニューを1セットに揃えた商品や、大みそか・元旦と食べ分けしやすい重箱を採用するなど合理性を重視した。

30代以下のゆとり向けには、SNS映えする商品のほか、おせちよりも価格的に購入しやすい雑煮セットを商品化している。若年層の開拓は、おせち市場を長期的に拡大する上で各社共通のテーマとなっている。

◇日本食糧新聞2018年9月12日号の記事を転載しました。