個性的なギョウザ専門店が次々と登場している。難点といえば、あんを皮で包むという変化に乏しい形状のため、SNSブームに乗りづらかった点だろう。そうした課題をフランス料理のエッセンスを取り入れてブレイクスルーし、女性客の支持を集めているのが東京・中野の「餃子バル ぴこれ」で提供する「泡とエビの水餃子」だ。

ユニークさで女性客に人気

「当店はギョウザを主力商品とした洋風のバルというスタイル。ギョウザメニューにも洋食のエッセンスを取り入れたいと検討していたときに、総料理長がフランス料理から発想したんです」と石井直樹店長は開発のきっかけを語る。

完成した同品は深紅の皿全体を覆う泡というビジュアルでギョウザの姿がまったく見えない。おそるおそる泡の中に箸を差し込むとモチモチとした水ギョウザが現れるという寸法だ。

出てきたギョウザのいでたちもユニークで、あんの形状はミートボールを彷彿させる丸みを帯び、水ギョウザの皮もいったん包んでから両端を折り重ねることでより丸さを強調している。こうした独自性の高さがとりわけ女性客の支持を獲得、8割の女性客が注文する人気ぶりだ。

牛乳をベースにしたスープを泡に

さて泡の正体はといえば牛乳ベースのマイルドでコクのあるスープだが、泡立て方法は、泡立て器を使うだけとシンプルこの上ない。それでも皿を覆うほどの泡が立ち、保形性にも優れている。

牛乳をベースにしたスープを泡立て器で泡立てる。作り方はシンプルだが泡持ちに優れている。

「エスプーマなども試してみたのですが、ビジュアル面でもオペレーション面でも泡立て器の方が優れていましたね」(石井店長)。泡は口に入れた瞬間に溶けるため舌ざわりの違和感はゼロで、水ギョウザのモチモチ食感やうま味を邪魔しない。

水ギョウザは5個入りで1個約30gと食べ応えのあるサイズ。中のあんは、中びきの鶏もも肉、粗びきのエビ、そして季節の根菜で、取材時はクワイを使用。鶏もも肉が全体をまとめる役割で、これにエビのプリプリ感、根菜のシャキシャキ感が合わさって食べ飽きない食感とうま味を形成している。

ただし「スープも水ギョウザも味そのものはオーソドックス」と石井店長。スタイリッシュな見た目とは裏腹に味は万人に受けるものにすることで敷居を下げ、気軽な注文につなげているわけだ。

「今後はトマトソースなどカラフルな色の泡も開発してみたいですね」と石井店長は意欲を見せる。

JR中野駅南口から徒歩1分の飲み屋が連なるレンガ坂通りに入居。定番、お薦めを合わせて12種のギョウザと、バル料理を組み合わせ、ドリンクはワインとのペアリングを提案するなど独自性を打ち出す。カフェを連想させる内装で、カップルでの利用や女子会のニーズが高い。

●店舗情報
「餃子バル ぴこれ」
所在地=東京都中野区中野3-34-24 千野ビル地下1階
坪数・席数=12坪・24席
営業時間=11時30分~15時、18時~23時、土・日・祝日18時~23時。月曜定休
平均客単価=3000円
1日平均集客数=40人

◇外食レストラン新聞の2018年10月1日号の記事を転載しました。