熊本県熊本市在住のたべぷろ編集部員・涼野リノです。大分で生まれ育ち宮崎で学生時代を謳歌し、東京の荒波にもまれ、帰ってきた九州・熊本の地で感じた各地での「食文化のちがい」をご紹介。熊本は農産物だけじゃない☆とアピールするべくB級グルメに注目してみました!

「たいぴーえん」は熊本のソウルフード

熊本のB級グルメといえばコレ。あまり名前からは想像のつきにくい、けれども美味しいソウルフードです。熊本ラーメンも食べてみたいけど、今日はカロリー控えめでいきたいな・・・そんな観光客のあなたへ贈る、お野菜たっぷり、やさしい一皿。

たいぴーえん・・・熊本弁でもないし、中華料理じゃないの?

字面はどう見ても中華料理の太平燕ですが、どこのお店でも「熊本発祥」と言われています。それもそのはず、中国で「太平燕」と呼ばれている料理とは似て非なるものなのです。

熊本の太平燕はパッと見、ちゃんぽんの春雨バージョン。県民食として給食にも出るほどのローカルっぷりを見せる太平燕の基本レシピは、アッサリだけれどコクのある鶏ガラスープに、豚肉、魚介類、たっぷりのお野菜と緑豆春雨が入っています。

対して中国の太平燕は、お祝いの席で振る舞われる縁起の良いお料理なのだとか。春雨はおろか麺類は入っておらず、アヒルの卵、ワンタンのような肉包みが入っているスープ料理。名前に「燕」という文字はあれど「宴」で出される料理という韻を踏んだ言葉が由来という説が有力で、本場だからと言って高級食材「燕の巣」が入っている訳でもないようです。

でも、どうして熊本?

発祥の経緯を追ってみると、明治時代頃、熊本へ移住してこられた華僑の方がきっかけという有力説が出てきました。故郷の味を再現するために日本で手に入る材料で工夫した結果、熊本の太平燕の原型が生まれたようです。

「アヒルの卵→鶏卵を揚げたもの」、「ワンタン風の肉包み→春雨とお肉」でそれぞれ代用・・・といったところでしょうか。また、一説には「春雨が燕の巣に似ているから」というアレンジ秘話を唱える人もいらっしゃいます。

当時ではさほど多くなかった中華料理店では次々と「熊本版・太平燕」のレシピが広まり、今でも続く熊本の老舗中華料理店で変わらぬ味はしっかりと受け継がれています。

ボリューム満点なので食べ応えは抜群

もはや本場中国の太平燕とは全くの別物として、そして「熊本のソウルフード」として確固たる地位を築き上げた太平燕。かつて全国ネットのテレビ番組でご当地グルメとしても紹介され、熊本以外の方でも知っている方が増えたのではないでしょうか。

学校給食の献立にも度々登場し、近所のスーパーではカップラーメンと肩を並べ、外食をすれば太平燕を見かけない中華料理店は希少というくらい、土着性は100%!

熊本へ観光に来ると一つだけ困ることがあります。それは「美味しいものが沢山ありすぎて食べきれない。もしくは食べ過ぎて胃もたれになる。」というあるある。

しかし、そんな時こそ太平燕の出番です!鶏ガラスープと春雨、お野菜に魚介類というヘルシーさ。しかもボリューム満点なので食べ応えは抜群です。あぁ素晴らしきかな、太平燕。熊本へお越しの際は、ぜひ太平燕も食べてはいよ〜♪(熊本弁で「食べてくださいね〜」の意味)