真っ黒な見た目が印象的な岡山名物「えびめし」。早い話、エビと玉ネギを具材にした焼き飯なのだが、やんわりとしたブラックソースの風味がどこか懐かしく、外食中食を問わず県内に普及している。

のれん分けで拡散普及

起源は1966年に開業した「カレーキッチンいんでいら」。東京のカレー修業から帰郷した出井海達氏が独立出店して、修業先で学んだ「えびめし」をアレンジして提供した。

これが人気となり看板料理に定着。次いで出井氏の店で修業した料理人が続々と独立。のれん分け、孫分けを繰り返し、「えびめし」は県内全域に拡散した。いまやスーパーやコンビニの惣菜弁当にも欠かせぬ、岡山を代表するソウルフードだ。

えびめし弁当 920円(税込み)

東京・渋谷の洋食店「いんでいら」で修業した出井海達氏が、のれん分けを許され故郷の岡山に「カレーキッチンいんでいら」を出店。サイドメニューで提供した「えびめし」が大人気を呼び、多店舗化を加速。

カレー店の他、フレンチ、イタリアン、焼肉、居酒屋など最盛期は21店舗を出店し、ほぼ全店で「えびめし」を提供していたという。それらで修業した多数の料理人が独立。カレー店だけでなく多種多様な店舗を経営していたことから、料理人の独立店も多種多様となり、業種業態を問わず「えびめし」が拡散した。

業種業態を問わず多店舗展開したが、結局どの店も「えびめし」が一番売れるので、1995年、専門店化した「えびめしや」に集約。現在「えびめしや」3店舗の他、「おそうざい六根」など全7店舗を経営。全店で「えびめし」を提供しており、テークアウト販売も行っている。

「えびめし」の注文率は、「えびめしや」で90%以上、「おそうざい六根」で約30%。「えびめしや」の月間集客数は6000~8000人。

決め手のブラックソース、メーン具材のエビ、炒め油となるマーガリン、甘味を加味する玉ネギ

香りにじみ出るブラックソース

真っ黒に彩るブラックソースは、ソース、ケチャップ、カラメル、香辛料を配合した味作りの決め手。作り方は、フライパンにマーガリンを熱し、エビと玉ネギを加えて炒め、白飯とブラックソースを加えてあおり、仕上げに焼きを入れれば完成。焼きを入れると、ブラックソースに配合した香辛料の香りがにじみ出て、スパイシー感が際立つという。

エビは小ぶりだがブラックタイガーが6~7尾。当初はカップ麺に入っているような小エビだったが、バランスを突き詰めた結果、現在のサイズにたどり着いた。

昨今のB級グルメは、商標権などの争いごとが少なくないが、「えびめし」の場合、創業者の出井海達氏が弟子の成功や地域の活性を願って、レシピやノウハウを惜しみなく教示した。そのオープンな心意気が地元に愛されるソウルフードを育て上げたといえる。

岡山駅の駅ビル・さんすて岡山南館に出店。観光客の土産購入も多い

◆会社概要
おそうざい六根
岡山市北区駅元町1-1 岡山駅さんすて岡山2階
経営:(株)いんでいら
えびめしや
万成店・岡山市北区万成西町2-53、他2店舗

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◇外食レストラン新聞の2018年3月5日号の記事を転載しました。