スイーツ&ベーカリーの新たな食シーンは…?日本食糧新聞が選ぶトレンドキーワード
新たなトレンドやジャンル、食シーンを創造しているスイーツ・ベーカリー市場。ライフスタイルやニーズが刻々と変化する中、食品業界でも屈指のマーケティング戦略が必須となる。作り手・食べ手・売り手の3者が求めているであろう価値を具現化できる、健全な成長に有用なキーワード・注目アイテムを今年も紹介する。
【インスタジェニック】カット断面の美しさを楽しむ「萌え断」
スイーツ・ベーカリーではここ数年、製品の見栄えや外観の楽しさを活用したコミュニケーションや拡散展開が活発化している。パティシエ人気を背景とするピエスモンテなどへの注目やプチギフトの浸透による自己表現の新しいあり方などに由来するが、SNSの浸透で、現在では莫大な潜在需要を包括するに至っている。
SNS人口は国内で約7000万人に達するが、特に若者・女性層を中心とするインスタジェニックの動きは新たな活性施策として注目が高い。17年はこれに対応する「映え」(SNS映え・インスタ映え)がキーワードになるだろう。
カット断面の美しさを楽しむ「萌え断」、視点の高さに製品を掲げ、食べる直前の臨場感を演出する「リフト(アップ)」などが「映え」を象徴する代表例だが、最大の特徴は市場本来の楽しさや話題性が画像・映像で共有・共感される点にある。
【ギルトフリー】おいしさそのままに「低糖質」
従来までのカロリーや体脂肪(ダイエット)などに加え、新しい形の健康志向の流れが波及している。16年はチョコレートの健康需要が浸透し、チアシードやキアヌ、麹などを材料に使用したスイーツ製品も依然露出が高い。
この中で、本紙が注目する動きとして「ギルトフリー」への注目度の高さを挙げたい。例えば、「糖質」。有力パティシエたちも取り組んでいる「低糖質」の流れは間違いなく、今後主流化すると思われる。CVS・ローソンの「ブラン」シリーズはヒット商材に成長し、洋生菓子で強力なブランド力を持つモンテールでも対応ブランドとして「スイーツプラン」を強化している。
糖の「吸収速度」に着目する動きも。砂糖最大手の三井製糖などが提案する「スローカロリー」は、食品の吸収スピードを抑えることで太りにくい体を目指すもので、注目される。いずれも独自素材・原料を使用することでおいしさを担保し、活性化へのキーワードとなりそうだ。
【ボーダーレス】 新たなトレンド模索の中 業界の垣根低下など
既存概念に捉われない新たなトレンド模索の中で、17年はスイーツ・ベーカリーともにあらゆる「ボーダーレス」がさらに加速しそうだ。その象徴とも言えるのが、両業界の垣根低下であり、本特集の取材対象も従来までの「スイーツ」に加え、今回から「ベーカリー」を含めている。
両業態のボーダーレス化は、09年前後からのブーランジェリー(焼きたてパンをウリとする高級ベーカリー業界)の台頭に端を発する。こだわりの高単価製品を揃える中で競合対象にパティスリーが含まれることから、チルド温度帯のこだわり菓子パン(冷たいパン)やドーナツなどを拡充。パティスリーサイドでもワンハンドブームを背景にベイク系(焼きたて系)の品揃えを拡充。メーン売場のショーケースの存在が垣根として残っているが、今後もボーダレス化は加速するだろう。
ミクロ的な側面ではスイーツにおける和洋折衷製品の台頭や「和菓子×コーヒー」や「朝食スイーツ」などに代表される食シーンのボーダーレスも挙げられる。これら多彩な消費形態の変化は食品業界でも類を見ず、17年も新たな「ボーダーレス」が登場しそうだ。
【容器でバリューアップ】 商品の魅力・こだわり訴求
スイーツ・ベーカリーでは、容器・資材で商品価値を総合的に向上させる「容器でバリューアップ」への動きが加速している。デザイン性や美粧性はもちろん、作業性や利便性を高めるものが続々と登場している。
近年人気なのは、色鮮やかに重なるスイーツの「層」を美しく見せる縦型の透明プラスチック容器。エンボスや凹凸加工を施すなど高級感を演出するものも増えている。ワイングラスのような足付き容器も売場やショーケースで見栄えが良く、需要が高まりそうだ。個食需要を背景にフタ付き容器も浸透しつつある。
また、焼成可能なトレーやカップは製造時の生産性や衛生面が評価され、焼菓子やチルドケーキで採用が進む。1.5~2人前の小さめのホールケーキやプリンアラモードなどの盛り合わせスイーツに適する大きさのトレーは今後のトレンドになりそうだ。
いずれもシンプルで上品なデザインが多く、メニューの高付加価値化で人気を呼んでいる。容器を活用したこだわりや商品魅力の訴求は、今後も重要性を増すことは間違いない。
【サンド】 カスタマイズで付加価値向上
近年、「サンド」する具材やクリームなどの中身をカスタマイズし、製品の付加価値を高める潮流がみられる。嗜好(しこう)の多様化に対応できるほか、高単価化やメニューの充実にもつながり、17年も拡大することが見込まれる。
「サンド」は市場の草創期から存在する手法だが、近年ではアイデア戦略などで対象が多様化している。例えばベーカリーの代表であるサンドイッチは前述の萌え断人気を喚起し、スイーツ市場でも多層ケーキなど新たな分野を構築させた。ベーカリー素材で知られるケンコーマヨネーズの「アートウィッチ」など関連メーカー発案の取組みにも注目したい。
今後の動きとして、サンドする具材・クリームなどのカスタマイズ化による「自己流スイーツ」への拡大に期待したい。スイーツではクレープやパンケーキなどでは主流だが、優れたオペレーション性や設備投資がほぼ不要なことから、活性化につながる高いポテンシャルを持つ。
◇日本食糧新聞の2017年4月12日号の「スイーツ&ベーカリー特集」の記事を転載しました。
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