福岡在住、管理栄養士の大山加奈惠です。2018年も食育・健康情報を発信していきますので、どうぞよろしくお願いします。
みなさん、博多の郷土食、《ごまサバ》をご存知ですか? 食べたことない人は、きっとゴマサバという品種のサバ(胡麻のような点々模様がある)を思い浮かべるはずです。でも、博多の《ごまサバ》は立派な料理で、白いご飯のおかず、酒の肴になる、博多の人が大好きな郷土料理なんですよ。
そして、この《ごまサバ》は動脈硬化などの生活習慣病予防にオススメの栄養素を含んでいるんです。美味しく食べて、健康に! 今回は《ごまサバ》パワーについてご紹介します。

博多の郷土食「ごまサバ」は、サバの刺身の醤油みりん漬け

博多の名物といえば、豚骨ラーメン、水炊き、もつ鍋、一口餃子など、たくさんありますが、意外と知られていないのが、《ごまサバ》です。実は私たち福岡県民も《ごまサバ》が郷土料理と知らず、日本全国で食べられると思っているんですね。

だから、福岡県外の人と居酒屋に行って《ごまサバ》を頼むと、何これ?サバを生で食べるなんてありえない!と言われ、初めて《ごまサバ》って博多でしか食べられないのと気づく人が多いのです。

《ごまサバ》は、生のサバに九州の甘めの醤油を使ったタレをかけて、胡麻をまぶし、海苔やわさびと一緒に食べる魚料理です。

どうして博多以外では《ごまサバ》は食べられないかというと、サバは腐るのが他の魚より早く、生で食べられるほど新鮮な状態で流通するのが難しいからです。博多はサバの取れる玄界灘が近く、鮮魚市場が市内にあるので、とれたて新鮮なサバを飲食店に持っていくことができるというわけです。

そして、もう一つの理由は、食中毒の原因となるアニサキスという寄生虫の種類が福岡のサバは違うということです。太平洋側のサバのアニサキスは、内臓から刺身部分へ移行することがありますが、日本海のサバのアニサキスは移行しにくく、特に福岡、長崎は移行しにくいという結果がでています。

生のサバを食べられるのは、福岡だからこそ!ということなんです。ぜひ福岡に来た時には、ぷりっぷり、新鮮な生のサバを食べてみてくださいね!

青魚のサバは動脈硬化の予防に効果あり

日本人の死因の第1番目はガン。不動の一位です。でも最近、追い越しそうな勢いの病気が2位の心疾患、4位の脳血管疾患で、これはどちらも動脈硬化、血液の病気が原因です。動脈硬化による死因は約30%と、ガンとほぼ一緒になっています。メタボリックシンドローム予防が始まったのも、この2つの病気を減らして、平均寿命を伸ばすためなんですよ。

福岡県は、心疾患でなくなる人数が全国一少ない県なんです。これはごまサバをよく食べていることと関係があるかもしれません。

平成29年度人口動態統計特殊報告 平成27年都道府県別年齢調整死亡率の概況(厚生労働省)

動脈硬化予防にいいと言われているのは、サバなどの青魚で、必須脂肪酸、EPA(エイコサペンタエン酸)、DHA(ドコサヘキサエン酸)が豊富に含まれています。

食べ方は、生が一番おすすめです。なぜかというと、サバは焼くとEPA 、DHAが壊れて、約1割〜半分にまで減ってしまうからです。

●EPAの効果
・血液の中の血小板凝集を抑制して、血栓をつくらせない働きがある
・善玉コレステロールを増やし、悪玉コレステロール、中性脂肪を減らす
・炎症やアレルギー症状を緩和する

●DHAの効果
・善玉コレステロールを増やし、悪玉コレステロール、中性脂肪を減らす
・情報伝達をスムーズにして、脳を活性化し、脳の老化を抑制する
・視力回復や精神安定にも効果がある

ごま、海苔、わさびにも動脈硬化予防の栄養素が

ごまサバは名前の由来のように、胡麻をふりかけて食べるのがポイントです。そしてこの胡麻にも、動脈硬化を予防する栄養素がたっぷり含まれています。

特にセサミンは抗酸化作用があり、老化の原因である活性酸素を取り除く働きがあります。動脈硬化は血管が硬くもろくなり、血管が詰まったり破れたりするので、胡麻を食べると血管の若返りにも良いということですね。

3つの薬味食材も血管の健康をサポートしてくれます

海苔にはビタミンB(6、葉酸、12)トリオが入っていて、この3つのビタミンBは血管の老化を防ぎ、動脈硬化や心疾患を予防する働きがあると言われています。

そして、薬味の王様、わさび。わさびは抗酸化作用が高く、つーんと鼻にくる辛み成分にも血液をサラサラにする働きがあると言われています。そして辛み成分には食中毒の原因になる菌を抑制する働きもあります。

3つの薬味食材も、すべて私たちの血液を守ってくれる働きがあるんですね。

管理栄養士の立場からも、《ごまサバ》は生活習慣病を予防してくれる、とっても心強い料理です。

博多に来る機会があれば、ぜひ《ごまサバ》をたっぷり堪能してくださいね!