レストランで素敵な盛り付けをみると、ついつい家で試してみたくなる調味料研究家の松本葉子です。ただし失敗することも多いんですが。艶のある濃い茶色と甘やかな味わいが特徴のイタリアの酢・バルサミコ。料理店では調味料としてだけでなく、デコレーションソースとして使われることも多く、盛り付けの華やかさにも一役買っています。
そんなバルサミコ酢を使って、いつもの料理をぐんとドレスアップしてみませんか?クリスマスの食卓や年末年始のおもてなしにもおすすめです。

バルサミコ酢を選ぶ時のポイントは熟成年数じゃない!

日本でも容易に手に入るようになったバルサミコ酢ですが、それだけに店頭には何種類も並んでいて、お値段も数百円から数万円までと千差万別。どれを買えば良いのか迷ってしまうかも知れません。そんな時に役立つチェックポイントをご紹介しましょう。

バルサミコ酢というのは、ぶどうから作られた調味料です。ぶどうの濃縮果汁を酢酸発酵させ樽で長期間熟成させる(これまた樽替えなど独特の方法があるのですが)伝統的な製法で作られることで、あの酸味、甘味、芳香が生まれます。

イタリアでは、製法に加えて、原料ぶどうの種類、熟成年数、産地などの細かな規定や審査があり、それによって格付けや名乗れる名称が変わってきます。

が、それはともかく、選ぶ時の一番のポイントは「原材料」です。

安価なものは伝統製法では作られておらず、「ワインビネガー」「カラメル」(着色料)「香料」などが加えられていることがあります。イタリアではこれらの中にはバルサミコ酢とは名乗れないカテゴリのものもあるのですが、日本ではすべてバルサミコ酢として販売されています。

できれば原材料がぶどう果汁のみのもの。でなければ、ぶどう果汁とワインビネガーのものがおすすめです。カラメルなどが入ったものよりは高価ですが相応の価値があると思います。

ところでこのバルサミコ酢、「○年もの」とか書いてあると、すごい!と思いがちですが(実際すごいのもありますが)、実は熟成年数よりも、伝統製法かどうか、原材料になにが使われているかの方を確認して選ぶ方がより正統派のものを手に入れられるでしょう。

今、私が主に使っているのは下の2種類。

右がレッジョ・エミリアの老舗メーカー品

左はバルサミコ酢の主産地モデナの主要メーカーの製品で、この5グレープというグレードのものは上手に作ってありますが、ワインビネガーと酸化防止剤を使っています。

右は同じくバルサミコの有名産地レッジョ・エミリアの老舗メーカーの製品で、価格は左のものの6倍程度。限定品種のぶどう果汁のみを用いて伝統製法で作られたもので熟成期間は12年未満。ですがこれプロの料理人でも12年以上熟成のトラディツィオナーレグレードと間違うほどのデキで、しかも価格はその半額程度とお値打ちです。

色と粘度の違いは写真の通り。味は、左は甘いけれど酸もしっかり感じるのでドレッシングや煮込みにも使いますが、右はプルーンのシロップのような感じなのでほとんど仕上げのソース用です。そもそも高価なものはそんなにじゃぶじゃぶ使えませんしね。

バルサミコ酢でデコレーションする時のコツ

レストランでよくみかけるバルサミコソースを使ったカッコイイ盛り付け。あれをやるには濃度(粘度)が必要です。なので、一番簡単なのは高級品を使うこと。長期熟成の高価なものならとにかく濃密。カラメルソースのようにそのまま使えます。

でも数万円の酢なんて抵抗がありますよね(私はあります)。だからさほど濃度がなくても良い場合は、上に書いた右の製品をそのまま使っていて、こんな感じ。鴨のソテーに添えています。

でも下の写真のアイスクリームにかける時のようにかなり粘度があった方が良い場合は、左のモデナのものかもっと安いバルサミコ酢を自分で加工して使っています。

簡単バルサミコソースの作り方

<用意するもの>
・バルサミコ酢
・はちみつ
・醤油(少量)
・バター(少量)

分量は適当でいいです。というかバルサミコ酢の酸っぱさや濃度で変わるため、とりあえず試してみてください。

*醤油を入れるのはコクと色を深め、はちみつのクセを消すため。でも必須ではありません。
*バターの代わりにオリーブオイルでもok。

<作り方>

  1. 耐熱容器にバター以外の材料を入れてよく混ぜます。
  2. ラップなしで電子レンジで加熱します。W数は弱~中くらいで。ぶつぶつと泡だってきて煮詰まっていくので、好みの濃度よりちょっと薄いぐらいになったら加熱をやめます。(冷めてくるととろみが増すことを考慮)
  3. 熱いうちにバターをしっかり混ぜ込んでできあがり。

ソースをたらすための器具もありますが、スプーンでもOK。細い糸のようにしたい場合はミルクピッチャーを使うとうまくいくこともあります。

左はちょっと煮詰めたバルサミコ酢のみ。右はオリーブオイルを混ぜてからデコレーションした場合。

バルサミコソースでデコレーションすると、簡素な素材でも映えます。アイスクリームなどもそうですが、かぼちゃやじゃがいも、カリフラワーなどを茹でたものに添えてもおいしく味わえます。フルーツではいちごが相性良しです。

バルサミコ酢は常備しておくと便利です

バルサミコ酢はソースデコレーションに使うだけではなく、もちろん調理にも使えます。定番のドレッシングのほか、実は中国料理の黒酢の代わりに使うのもありなんです。酢豚の調味や、蒸し鶏のつけだれに使ってみてください。

できれば普段使いのものと、ちょっと上等で濃厚なものと2種類あると使い勝手が良いですが、1種類でももちろん便利。

お気に入りのバルサミコ酢をみつけてくださいね!