数年前には大きな盛り上がりを見せた6次産業。補助金を付け、意気揚々と参入したものの、商品は売れず不良在庫化。そんな話が後を絶たない。今では、6次産業化否定論も多く聞かれる。成功に導く鍵は何なのか。その真相を確かめるべく、サクランボ100%のスパークリングワイン「さくらんぼの、あわ」を製造販売する相川ファーム(秋田県湯沢市)を訪問した。

ソメイヨシノの花びらから培養した秋田美桜酵母で発酵

相川ファームは、サクランボやコメを栽培する農業生産法人。2011年には、6次産業化法の認定を受けた。「さくらんぼの、あわ」は、秋田県産サクランボ「紅さやか」100%で作った本格的なスパークリングワイン。着色料を一切使わず、原料の色のみで鮮やかなワインレッドを実現した。

発酵には、秋田県のソメイヨシノの花びらから培養した秋田美桜酵母を使用している。秋田県総合食品研究センターが開発に協力し、類を見ないワインを生み出した。国産サクランボ100%の天然酵母発酵ワインは全国初。コアなワインファンからも、驚きの声が広がる。

宝石のように美しいサクランボ

華やかな香りと程よい甘み、そしてアルコール度数6%という飲みやすさがトレンドに敏感な若い女性にも人気だ。サクランボをかたどったハート形ラベルもキュートで、やはり女性受けが良い。明確にターゲティングされた商品である。今年の生産量は3000本で、11月には出来上がってくる見込み。全国規模の販売にも打って出ると意気込む。

園主の菅忠一郎氏

相川ファームの園主は菅忠一郎氏。周りの人は菅さんのことを親しみを込めて、「忠(ちゅう)さん」と呼ぶ。忠さんは現在67歳。この年齢の農業者が、新商品ブランディングを一からすべて手掛けるのは簡単なことではない。

しかし、忠さんは周りの意見を素直に聞き、そして巻き込むことによってそれを実現している。デザインや加工など、その道のプロに任せられることは、とことん任せる。また複数のモニター客へサンプルを配り、ワイン特有の時間とともに変化する味と香りを定期的に観察するなど、細かな検証にも余念がない。

「若い女性が働ける場をつくり、人口減少に歯止めを掛け、地域を元気にしたい」と将来を見据える。

◇日本食糧新聞の2017年8月4日号の記事を転載しました。