福島県の中通り(中部)で親しまれる「いかにんじん」は、シャキシャキとしたにんじんの食感がくせになる、いかのうまみが染みた浅漬けのようなお惣菜です。するめとにんじんをしょうゆやみりん、お酒で漬け込んでいます。アレンジしてみるとさらにおいしく、バリエーションが広がります。今回はお子さんが喜ぶ2品の料理に大変身。作り方も簡単なので、ぜひ試してみてくださいね。

いかにんじんチヂミ とろ~りチーズがアクセント!

いかにんじんをにらと合わせて具だくさんのチヂミに。仕上げにチーズをふりかければ、子どもも大好きなチーズチヂミの完成です。大人はピリ辛のたれと一緒にどうぞ。

【材料】(2〜3人分)
いかにんじん 80g(お好みで)
小麦粉 100g
片栗粉 小さじ2
卵 1個
にら 1束
だしの素 5g
塩・こしょう 各少々
水 150g
ごま油 大さじ2
チーズ お好み
糸とうがらし お好み

※今回はいわき市にある西野屋食品株式会社の商品を使用しております。

【作り方】
1.ボウルにチーズ以外の材料を入れ、木べらなどで混ぜ合わせる。

2.熱したフライパンにごま油を引き、(1)を丸く平らにのばして焼く。
※ポイントはたっぷりのごま油で焼きあげること! 焼き上がりがカリッとし、ごまの香ばしい香りが漂います。

3.焼き目が付いたらひっくり返し、両面を焼く。

4.食べやすい大きさに切って器に盛り、チーズをかける。
※1分ほど置き、チーズがとろけるのを待ちましょう!

【チヂミのたれ】
ポン酢、ごま油を3:1の分量で混ぜ合わせる。大人が食べる場合は、食べるラー油を適量加えると、かんたんに旨辛たれが完成。

いかにんじん炊き込みご飯 いかのうまみが染みる!

いかにんじんを活用すれば、具材を準備することなく炊き込みご飯も作れちゃいます。ポイントはいかにんじんの汁も全部入れること。汁にこそうまみ成分の宝庫です! ご飯と一緒に炊くことで、よりおいしく、栄養満点に。

【材料】(作りやすい分量)
お米 2合
だしの素 5g
ツナ 1缶
きのこ(冷蔵庫にあれば)
いかにんじん 100g
三つ葉(彩り)

【作り方】
1.お米は2合分の水とともに土鍋に入れ、あらかじめ2~3時間水につけておく。

2.だしの素、ツナ、きのこ、いかにんじんを加え、15分タイマーをセットして土鍋を強火にかける。

3.沸騰してお米が踊るようになったら弱火にして蓋をし、タイマーが切れるまで加熱する。
※炊飯器で炊く場合は具材をすべていれスイッチをオン!

4.タイマーが鳴ったら火を止めて蓋をし、さらに15分蒸らす。

5.まんべんなく混ぜ、具材と味をごはんになじませる。

6.器に盛り、三つ葉を散らす。

シンプルながらも基本的な調味料が使われ、いかのうまみが染み込んだいかにんじんは、このようにさまざまな料理にアレンジすることができます。今回のレシピを参考にしつつ、オリジナルのアレンジレシピを考案するのも良いですね。

いかとにんじんのおいしいコラボ

「いかにんじん」は、いったい、どんなふうに生まれ、どんなふうに食べられているのでしょうか。その歴史や成り立ちをのぞいてみましょう!

福島県は浜通り地方(海に面する地域)・中通り地方(中部地方)・会津地方に分かれていますが、「いかにんじん」とは、なかでも中通り地方の北部で古くから親しまれている伝統的な郷土料理のこと。するめとにんじんを細切りにし、しょうゆやみりん、お酒とあえて、半日~数日漬け込んだお惣菜です。

シャキシャキとしたにんじんの食感と漬け込むことで染みたいかのうまみ、しょうゆやみりんなどのシンプルながらも懐かしい、甘みのある味付けが愛されています。

漬け込み時間や調味料の配合は家庭によってさまざまであることから、その家庭の味を表現できるものとしても知られています。また、地元のスーパーではお惣菜としても販売されており、手軽に購入することも可能です。

とてもシンプルな料理であるゆえに、福島県以外ではなかなか知られることはありませんでしたが、近年はメディアに取り上げられるようになり、地元でも名物料理として提供するようになりました。

過去には東北限定でポテトチップスの味となって販売されたこともあり、まさに福島県を代表する一品に。親しみやすく、ついつい箸が進んでしまうおいしさが大人から子どもまで多くの人の人気を呼び、話題となっています。

江戸時代末期に誕生! 栄養補給や保存食としての役割も

いかにんじんが誕生したのは、なんと江戸時代末期ごろ。現在は一年中作られたり、お惣菜として販売されたりしていますが、昔は年末年始に食べることが多かったようです。

当時は、山間部に新鮮な魚を届けるには時間がかかりすぎてしまうため、するめなどの乾物がよく届けられていました。そして、冷蔵庫のない時代だったこともあり、秋から冬にかけての時期に保存食として扱われていたようです。

おまけにいかにんじんは、栄養も豊富。特に寒い冬の時期には貴重なたんぱく源となっており、栄養補給するという観点からも重宝されていたといいます。

現在はさらに、にんじんに含まれるβカロテンやいかに含まれるタウリンによって、免疫力向上、ストレス予防、抗酸化作用などの効果も期待できることが明らかになっており、心身ともにきれいになるための味方となってくれることも。おいしさと実用性を兼ね備えた料理として、今も昔も愛されています。

北海道の松前漬けに似ている? その関係とは

いかにんじんのことを語るときに欠かせない存在となるのが、北海道松前町で親しまれる「松前漬け」。かずのこやするめ、昆布などを合わせて作る北海道の郷土料理ですが、にんじんを加えることがあったり、使う調味料が同じであったりすることから、作り方や風味がいかにんじんと似ているとよくいわれています。

このため、松前漬けの原型なのではないか? あるいはその逆に、いかにんじんの原型が松前漬けなのではないか? とされる説もあげられています。

実は現在の福島県伊達市にあった梁川藩と北海道松前町にあった松前藩は、国替え(領地を移し替えること)をしたという歴史があり、その際に食の交流もあったのではとされています。

いかにんじんは、こうした時代背景もあり、ずいぶん長く、福島県民の方々に親しまれているのです。福島に行った際にはぜひ、地元のスーパーをのぞいてみてくださいね!

現在いかにんじんは、全国的に名物惣菜としても人気が高く、県外でも好んで食べる方が増えています。さらに、シンプルな味付けだからこそ、料理アレンジも自由自在。アレンジレシピも多数生み出されています。

日本のお惣菜のおいしいアレンジをご紹介していきます

日本各地には昔から親しまれているおいしいお惣菜がたくさんあります。「ニッポンお惣菜ばなし」では、子どもにも伝えていきたいお惣菜の魅力とおいしいアレンジをママ目線でご紹介していきます。法政大学大学院地域創造システム研究所特任研究員の鈴木里加子氏が監修します。お楽しみに!