群馬県在住の日越食育研究家Bo_Beo(ボォベオ)です。他県ではめったにお目にかかれない美味しい食材や、群馬県ならではの食べ方についてモリモリっと、食リポしてまいります! 7月2日は「全国なまずサミット・なまずの日」です。群馬には、頑なに伝統のなまず料理を守り続けている専門店も少なからず残っています。今回は、群馬県邑楽郡板倉町で天保4年から営業している「小林屋」を訪問し、久方ぶりになまず料理に舌鼓を打ってきました。

天保4年から今なお愛される「小林屋」のなまず料理

天保4年から営業している「小林屋」。今から約180年前から同じ場所で営業を続けているという老舗中の老舗とのことで、少々畏れ多い気持ちになるかと思いきや、店内は昔懐かしい感じの普通の食堂。

「あぁ…子どもの頃、よく家族でこんな食堂に行ったなぁ…」と郷愁に思いを馳せながら、店内を見回します。

手書きのメニューも、温かみが感じられます。今回は、なまず天ぷらが2枚ついた定食(930円)と、なまずのたたきあげ1人前(250円)を注文しました。

15分ほど待つと、注文の品が運ばれてきました。すべての品をお盆にまとめず、1品、1品をテーブルに置くスタイル。昭和時代の食堂では定番のスタイルです。

「いただきます」と小声で言った後、迷わず、なまずの天ぷらに箸を伸ばして持ち上げると、そのズッシリした重みに少し驚きました。天ぷらの先っちょあたりを天つゆに浸し、ガブリ。

川魚特有の臭みはまったくなく、弾力のある肉質は、魚とはちょっと違う感覚でこれまた面白い。よく見ると卵らしきものが。この時期、産卵を控えたメスのなまずが真子(卵巣)を抱えていることが多いとのこと。ほろ甘苦く、とても珍味です。

時を待たずして、単品で注文した「なまずのたたきあげ」が運ばれてきました。なまずのすり身を豆腐と自家製味噌と合わせて包丁で叩き、人参、しその実を加えて素揚げした、とてもシンプルな料理です。

大和芋を想像させるもっちり感は食べ応え十分。自家製味噌のほろ苦さが口に広がります。料亭で味わう味というより、家庭で食べるお袋の味といった表現がピッタリの1品です。ご飯のおかずとして食べるも良し、酒の肴にも相性良し、と思いました。

小鉢で添えられた「小魚(モツゴ)の佃煮」も美味。丁寧に作られた感じが、ひと口ごとに伝わってきます。お土産用として販売もされており、定期的に買い求めるお客さんも多いそうです。

「小林屋」のなまずはすべて天然もの

美味しく完食した後は、女将さんと少しおしゃべりタイム。「小林屋」で使われるなまずについて伺ったところ、こちらで使用しているなまずはすべて天然もので、養殖なまずは一切使っていないとのこと。

その昔、神社に隣接した池に生息する天然なまずを店主が毎日捕獲し、それを調理して参拝客に提供していたそうで、今は釣り人から購入しているそうです。

確かに神社を囲むように大きな半月状の池や用水路があり、その日もひとりの釣り人が竿を振っていました。彼も小林屋用のなまず狙いだったのでしょうか…。

雷電神社の本殿で参拝

群馬県邑楽郡板倉町は「なまずサミット」にも参加する、群馬を代表する「なまず町」。東北自動車道の館林I.Cを下りて、西へおよそ10分走ると、板倉町役場のほど近く、雷電神社に到着します。

昔から落雷が多い群馬県。ここは全国各地に点在する雷電神社の総本宮とのことで、本殿の造りや装飾も威風堂々としており、高度な技法が用いられた社寺建築物としても一見の価値があります。

車道を挟んだ向かいに雷電神社の社務所があり、案内板を頼りに社務所を覗いてみると、そこにはドーン!と鎮座した「なまずさん」が雷様を従えて私を出迎えてくれました。

日本人となまず料理

日本では古くから鰻や鯉などと同様に、なまずも貴重なタンパク源として、庶民の食生活に根付いていた魚です。特に内陸地域では、物流の機能性が悪く、また、ハイテクな冷蔵庫がない時代に海の魚を日常的に食べることが難しいため、川魚を食す習慣がありました。「海無し県」である群馬県も然り。

しかし、高度経済成長による豊かな消費行動の結果、日本の食文化が著しく変化します。加えて、商流や物流のシステムも整備されたため、新鮮な海の幸を毎日購入することが可能になりました。その結果、庶民は次第になまずを食べなくなりました。そして、時代に押し出されるように、なまずを扱った多くの専門店も姿を消してしまっています。

7月2日は「なまずの日」。伝統的な日本の食文化に触れる貴重な記念日に

皆さんは7月2日が「なまずの日」ってご存じでしたか? 実は「なまずの日」が正式に制定されたのは昨年の7月2日。今年で2年目のまだまだ新しい食の記念日なのです。

昨年の7月2日、広島県のマツダスタジアムにおいて「第2回なまずサミット」が開催された折に、7月2日を「なまずの日」とする調印式が執り行われ、正式に制定された訳ですが、なぜ、7月2日が「なまずの日」なのか? 調べたところ、702の語呂から7月2日に決まったそうで…

7(なな)0(まる)2(ツー)
→「なーまーツー」
→「なまずー」
→「なまず」の日

かなり苦しくないですか?…と思うのは私だけではないはず(笑)

ちなみに「第1回全国なまずサミット」は昨年の2月18日に埼玉県吉川市において開催されました。古くから「なまず」と所縁がある地域の自治体や団体、企業や学校そして個人が共に連携して、さまざまな視点から「なまず」の魅力をより多く発信し、町おこしを全国に広げよう! と、吉川市市長(現、全国なまずサミット代表)がサミットを主催しました。

全国なまずサミット 吉川市公式ホームページ

昨年の「全国なまずサミット」において7月2日が「なまずの日」と制定されたことをきっかけに、今後は全国各地でなまずに関するさまざまなイベントが催されるでしょう。是非、廃れゆく日本の伝統的な食文化について関心を持ち、ご家族や友人と足を運んでみてください。先人が大事にした日本人としてのアイデンティティーについて気付きが得られるかも知れません。

見た目がグロテスクで、ヌメヌメして気持ち悪いので毛嫌いする人も多いようですが、よ~く見ると案外かわいい顔しているんですよ。なまずって(笑)