ワインは「ジャケ買い」で、多彩な図柄から選んで注文
今、ワインの「ジャケ買い」が盛り上がっている。「ジャケ買い」とは、CDなどで中身よりジャケットを気に入って購入するという消費行動だ。一見して楽しそうな、ちょっと凝ったラベルが飲食店でのワイン消費を喚起している。業務用酒販・柴田屋酒店(本社=東京都中野区)が運営する「テイスティング・バー柴田屋酒店本店」にワイン需要活性化策を聞いた。
凝ったラベルとオーガニックが女性の人気
柴田屋酒店は「テイスティング・バー柴田屋酒店本店」「神田店」の2店舗を展開している。得意先の飲食店にとっては、いつでもワインの試飲ができる場であり、一般消費者には気軽にワインが味わえ、気に入ったワインを購入できる店として注目を集めている。同店から柴田屋との取引のある飲食店への送客も行っている。
飲食店にとってワインは、料理と組み合わせることで満足度と客単価をアップするために必要不可欠な存在だ。そしてワインは料理だけでなく、気分に応じてさまざまなシーンでいろいろな楽しみ方ができるのも大きな魅力だ。
だが、飲食店がワインを導入する時、まず味を知る必要がある。またボトルで提供する場合、コンビニやスーパーで売られている銘柄では、消費者にすぐにスマホなどで価格が検索されてしまう。そうなっては、せっかくの食事が台無しになってしまう。
「テイスティング・バー柴田屋酒店」が扱うワインは自社輸入がメーン。消費者に原価が知られることがない。ラベルも楽しくポップな図柄やワイルドな動物の図柄など多彩だ。飲食店ではそのデザインを見て注文する、また隣のテーブルのワインを見て、“私もあれを”という「ジャケ買い」が増えている。最近のSNSブームも「ジャケ買い」の盛り上がりに拍車をかけている。
自社輸入ワインでは、スペイン産の「オーガニック」が人気。凝ったラベルと「オーガニック」が女性の人気をがっちりとつかみ、得意先店舗のワイン消費をけん引している。
柴田屋酒店の自社輸入ワインは約140種類、ほかにも主要インポーターが輸入するワイン約6000種を取り扱う。売れ筋の中心はインポーターから仕入れるワインだが、自社輸入のアイテムも大きな伸びを示している。
柴田屋酒店の前期業績(8月決算)は約70億円、品目別売上構成比はワインが約30%、日本酒5%弱、そのほかをビールと洋酒が占める。8年ほど前の売上げは約30億円。ワインの構成比は変わっていないが、ワインの取り扱いを充実させていったことで売上げが倍増した。もちろん売上げ拡大の要因は、ワインの強化だけではない。
得意先の業態、店舗コンセプトに合わせたドリンクメニューの作成といったサービスなども、その一つだ。単なるリストではなく、得意先の繁盛のための「儲かるドリンクメニュー」づくりを実践している。「ワインの場合は、エチケット(ラベル)を載せることが絶対条件。そしてどんなフードに合うのか味わいの特徴をきちんと消費者に伝えることが基本」と担当者はいう。
また、ホールスタッフのセールス力アップを目的とした海外ワイナリーの視察ツアーなどにも積極的に取り組んでいる。「次の一杯を待つ」のではなく、「取りに行く」というスタンスが得意先の信頼を獲得し、売上げの伸びにつながっている。
一番人気は「ワイン5種類テイスティングセット」
「テイスティング・バー柴田屋酒店本店」はワインだけでなく、日本酒、クラフトビールも楽しめる。「神田店」はほとんどがワインで、一番人気は「ワイン5種類テイスティングセット」(1000円税込)だ。多様なワインを少しずつ楽しむことで、ワインへの関心が高まる。
客層は30~60代ぐらいの男女。当初は女性客が多かったが、現在では男女比率は半々だ。平日は通勤客、休日は地元客と理想的な集客。リピーター客は、気に入ったワインを指名買いすることが多い。フードは、アヒージョなどバルの定番メニューが人気。客単価は3000円。
本店は2011年6月にオープン。14年8月にリニューアルした。17年7月には日本酒専門の店舗を出店する予定だ。これらの店舗運営は同社シャトー課が行う。シャトーは「宮殿」や「城」と訳されるが、シャトー課は「攻める出城」といったイメージだ。
◇日本食糧新聞の2017年7月22日号の記事を転載しました。
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