野菜の力で体の中からコロナに勝つ!免疫力アップ野菜スープとは…医学博士・前田浩さん
新型コロナウイルスの治療薬は既存薬を転用するアプローチが先行し、いまだ抗ウイルス薬は開発途上です。そんな状況のもとで、QOL(生活の質)を重んじ副作用のない抗ガン剤の研究でノーベル化学賞候補(2016年)にもなった世界的権威である前田先生が、コロナに負けない最強食事術として提唱しているのが野菜スープです。先生が毎日召し上がっている「前田家野菜スープのつくり方」も教えていただきました。
特効薬がないウイルスへの対策 感染しにくい身体をつくるには?
ウイルスが世界中で猛威をふるっています。人類はこれまでもウイルスによる感染症とたたかってきました。コロナウイルスはSARSなどいくつか種類があり、昨年12月に流行が始まった新型コロナウイルス感染症もコロナウイルスの一種です。新型で正体も分からない恐怖が、私たちのパニックに拍車をかけました。
私の専門はもともと細菌学、微生物学、ウイルス学です。ウイルスの多くは、ヒトに感染すると軽い風邪の症状を呈します。ほとんど症状がない、あるいは感染に気づかないケースも多くあります。一方で、感染力が強く、重症化するものもあります。それが新型コロナウイルスです。
そもそもウイルスとは何でしょうか? ウイルスは微生物の一種で、他の生物に寄生して初めて生き延びられるという、なんとも頼りない生き物です。宿主がいなければ生き延びられないくせに、急激に増えて宿主を殺してしまうものもいるのです。
とても厄介なもので、これだけ科学が進歩しているにもかかわらず、一部を除いて特効薬は見つかっていません。 私たちはこうしたウイルスに負けないために、どう備えたらいいのでしょうか? もちろん人混みを避ける、手洗い・うがい、マスク着用は当たり前ですが、大切なことはウイルスに感染しにくい身体を普段からつくっておくことです。私はコロナにも負けないよう、野菜スープを毎日飲んでいます。
野菜が持つファイトケミカルで活性酸素を中和すれば病気知らず!
ウイルスが体内に入った時、身体はどう反応するか、その仕組みを紹介しましょう。まず血管内にウイルスが侵入すると、白血球がそれを食べ、同時に活性酸素を出します。活性酸素は殺菌力が強く、細菌やウイルスを撃退する役目を果たします。
ところがウイルスが多いと活性酸素が増えすぎ、細胞を傷つけてしまうのです。インフルエンザウイルスに感染させたマウスを調べると、活性酸素量は非感染時の200~600倍に達しました。
急激に増えた活性酸素が肺の細胞や組織を傷つけ、炎症になり、発熱や肺炎を起こします。活性酸素は老化や動脈硬化、潰瘍、リュウマチ、アルツハイマー病の発生などにも深く関わっていると言われています。
どうしたら活性酸素を中和できるのか? 私はあらゆる食品成分を探し出し、行き着いたのが野菜でした。野菜は、カビや病原菌、害虫の攻撃を受けても自ら動いて逃げたり防御したりできません。そのため身体の中に自分の身を守る仕組みを整えたと考えられます。それがファイトケミカル。野菜は、活性酸素を中和・除去して炎症を抑え、免疫力を向上させる私たちの健康を守る救世主なのです!
さらに調べていくうち、調理法が非常に大切であることに気づきました。ファイトケミカルの成分は、加熱することによって人体に吸収されやすくなるのです。その吸収率と抗酸化力は、実験では最大100倍にもなることが分かっています。サラダやジュースでは、ファイトケミカルは吸収されません。ベストな調理法が野菜スープなのです。
野菜は生よりスープにして火を通す 毎日飲むことを習慣化しよう!
なぜ、サラダよりスープなのでしょうか。野菜の植物細胞は、細胞をくるむ膜とそれを丸ごとくるむ細胞壁の二重構造になっています。一番外側の壁は非常にかたく、噛んでもすりつぶしても壊れません。しかし、加熱すればすぐに破裂し、中にある有効成分のファイトケミカルや食物繊維が外に出てきます。
生では有効成分の90%以上は細胞の外には出ません。加熱すると生ですりつぶすよりも、抗酸化力が10~100倍にもなるのです。特に5分以上煮込むと、煮汁にウイルスやガン予防に大切な成分がたくさん抽出され、余すことなく摂取できます。ビタミンCが熱に弱いというのは迷信です。
我が家でよく使う野菜は、たまねぎ、にんじん、キャベツ、かぼちゃ、きのこ、ブロッコリー(茎も)などです。ルテインの多いほうれん草や小松菜などの葉物を必ず1種類は入れるようにしています。
根菜ではれんこん、里芋、じゃがいもなど、切り口が褐色に変わるものがおすすめです。褐色の正体はポリフェノールです。根菜類は食物繊維の含有量も多く、水溶性食物繊維と不溶性食物繊維は腸内の善玉菌を増やして免疫力を高めることが分かっています。
最強の野菜スープのポイントは、なるべく露地物で、できるだけ多くの種類を使うこと。にんじんや大根は、根よりも葉の方が抗酸化作用が50~100倍強いのでおすすめです。
肝心なのは、毎日飲むことを習慣化すること。たとえウイルスに感染しても、活性酸素を除去するファイトケミカルたっぷりの野菜スープを習慣的に飲んでいれば、軽症ですむか、早い回復力が期待できます。
<プロフィール>
まえだ・ひろし 医学博士。ハーバード大学がん研究所研究員を経て、熊本大学名誉教授、バイオダイナミックス研究所理事長。大阪大学招聘教授、東北大学特別招聘プロフェッサー。副作用のない抗ガン剤の研究でノーベル化学賞候補に(2016年)。ウイルス感染で活性酸素が大量に生成、細胞や核酸を傷つけることを世界で初めて明らかにした。新刊『ウイルスにもガンにも野菜スープの力』(幻冬舎)で緊急提言。
『ウイルスにもガンにも野菜スープの力』
前田浩著/幻冬舎刊/1200円(税別)
(C)HIROSHI MAEDA, GENTOSHA 2020
前田先生の野菜スープ・カレー味
「前田家の野菜スープ」のメソッドをもとに葉物は小松菜、根菜はじゃがいも・にんじんをプラス。味つけは「S&B 赤缶カレー粉」のカレー塩で。
【材料】5人分
なす 1本
ミニトマト 5個
さやいんげん 30g
小松菜 1/2束
じゃがいも 小1個
にんじん 小1本
水 5カップ
<カレー塩>作りやすい分量
「S&B 赤缶カレー粉」 小さじ1
塩 小さじ1/2
【作り方】
- 野菜はすべて小さめに切る。
- 鍋に水を入れて火にかけ、沸騰したら(1)を入れ、ふたをして中弱火で40分ほど野菜がやわらかくなるまで煮る。
- カレー塩の材料を合わせる。
- (2)の粗熱を取りミキサーでポタージュ状にしてカップに盛る。
- お好みの量(3)をふりかけ味つける。
※(4)の残りは冷水ポットに移し冷蔵庫で保管。飲む時に温める。
◇百菜元気新聞の2020年8月1日号の記事を転載しました。
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