愛媛県松山市在住のたべぷろ編集部員・藤田竜一です。生まれてこのかた方20年以上を愛媛で過ごし、現在は松山に移り住んで10年。愛媛の中でも繁華街のある松山でさまざまなものを食し、愛媛ならではの食べ物にも触れてきました。今回は「うどんの日」にちなみ、松山で愛されている鍋焼きうどんの歴史や食べ方についてご紹介しましょう。

松山で「鍋焼きうどん」を注文すると…

鍋焼きうどんは、松山に残るソウルフードの一つです。1人用サイズのアルミ鍋にうどんとだしを入れ、ぐつぐつと煮込んで作る簡素な食べ物。中にはちくわと愛媛名物の1つであるかまぼこを入れ、さらに牛肉を入れて食べるのが松山流となっています。

一般的に大きな土鍋で作る焼きうどんなどと違い、松山で「鍋焼きうどん」とい言えばあくまでも1人用サイズのアルミ鍋で作られたものを指します。松山には「アサヒ」と「ことり」という、戦後から営業しているお店があるほど鍋焼きうどんの歴史は長く、地域では「松山のソウルフード」とまで呼ばれています。

老舗店以外にも繁華街には鍋焼きうどんを提供する「つるちゃん」というお店も存在しており、松山で「鍋焼きうどん」を注文するとアルミ鍋に入った1人用のうどんが出てきます。

お店により多少の違いはありますが、基本的には鍋から直接麺をすすって食べます。熱いのが苦手な人は小鉢に麺とつゆを入れて、しっかりとつゆに絡ませてからうどんをすするのが松山流です。

アツアツの柔らか麺とつゆで楽しむ

四国内にはうどんの聖地ともい言われる香川県があります。香川県のうどんはコシが強くて歯ごたえを楽しみますが、松山の鍋焼きうどんに使われる麺は柔らかめです。その影響もあってか、熱いはずの鍋焼きうどんでもスルスルと食べられるので、松山では夏場でも鍋焼きうどんを食べます。

味付けは愛媛でおなじみの甘めのつゆ。柔らかい麺がつゆを吸い上げ、香川うどんとは違ったテイストの味を生み出しています。

松山流の鍋焼きうどんは市販の生麺とアルミ鍋、だしの素やうどんつゆに砂糖をお好みで2分の1杯から1杯ほど入れれば完成です。生めんとつゆ、砂糖とお好みの具材があれば簡単に作れることもあって、一般家庭で出ることもあります。

セットでいなり寿司を食べるのが松山流

松山で鍋焼きうどんを提供しているお店の多くは、いなり寿司を一緒に販売しているところが大半です。老舗店と言われる「アサヒ」や「ことり」を始め、「つるちゃん」でも同じようにいなり寿司があります。松山には『松山あげ』という特産品があるほど油揚げが有名で、いなり寿司の専門店があるほどです。

その影響もあってか、鍋焼きうどんの老舗店でも昔からいなり寿司を置いてあり、1個から注文できます。いなり寿司1個は程よい大きさになっており、鍋焼きうどんが出てくるまでのつなぎとして食べるのが通例となっているほどです。

今回は松山のソウルフードと呼ばれる鍋焼きうどんについてご紹介しました。松山市内で考えただけでも鍋焼きうどんを提供するお店は数多く存在しており、地元の郷土料理の1つとして未だに慕われているのがわかります。他の地域の方も簡単に自宅で再現できるので、一度ぜひ試していただきたいです。