鶏卵に関する最新の研究や情報を広く発信する「タマゴシンポジウム」がこのほど、東京大学農学部・弥生講堂で開催された。鶏卵に関する情報を学術的・中立的に集め、発信するタマゴ科学研究会が主催するもので、5回目となる今回は「タマゴの魅力~タマゴが創る未来の食生活~」をテーマに有用な研究結果を発表。基調講演では卵アレルギーの最新知見などが紹介されたほか、卵白ペプチドの抗疲労効果などが発表された。

同シンポジウムは農林水産省や日本栄養・食糧学会などのほか、食品メーカーではキユーピーが後援。会場では渡邊乾二同研究会理事(岐阜大学名誉教授)が、「13年2月の設立以来、コレステロールに関する最新の知見を発表し続けていたが、今回は卵のもう一つの課題であるアレルギーに触れる。卵のあふれる魅力を今後も発信したい」とあいさつした。

基調講演では相模原病院臨床研究センターの海老澤元宏副臨床研究センター長が、「タマゴアレルギーの最前線」を発表。従来は卵アレルギーの防止策として、摂取そのものをなくすことが中心だったが、現在は段階的な摂取による軽症化や低減が可能で、摂取による対策の研究が進んでいるという。

また経口負荷試験の方法の改善も進み、離乳食段階からの発症予防も世界各国で注目されるなど、「微量摂取を促すことが今後の重要なアレルギー対策となるだろう」との所感を示した。

また、「卵黄リン脂質の多様な機能性」を佐藤匡央九州大学大学院教授が講演、卵黄の(1)血清脂質改善作用(2)脂肪肝改善作用(3)脳機能改善の有用性と可能性–について説明。杉山喜一北海道教育大学教授の「マラソントレーニングにおける卵白ペプチド摂取による抗疲労効果」では、市民ランナーなどを対象にした調査で多くの疲労軽減効果が見られたことなどが発表された。

シンポジウムではこのほか、「健康食品素材としての卵殻膜の可能性」(加藤久典東京大学大学院特任教授)、「卵殻カルシウムは高齢女性の骨密度低下予防に関して炭酸カルシウムよりはるかに効果的であった」(山本茂十文字学園女子大学教授)などを報告。いずれも有用な研究成果となり、参加者は熱心に耳を傾けた。

◇日本食糧新聞の2017年6月28日号の記事を転載しました。