J-オイルミルズが2月23日から発売している「AJINOMOTO コクとうまみの大豆の油」が注目を集めている。大豆油といえばプロの調理人が愛用する、あの深いコクとうまみが浮かぶが、同品ではこの観点から最終メニューの「おいしさ」を徹底して追求。キャノーラ(菜種)と並ぶメジャーな油種ながら、大豆油の新製品は近年ほぼ不在の状態。ありそうでなかった“おいしさ”を基軸に、汎用油カテゴリーの活性化図る商品として注目だ。

非製油部門の社員がおいしさを検証

汎用油のガリバー・キャノーラ油は、軽くあっさりとした新たな味覚価値を市場にもたらした。一方で製品の乱立による同質化が進み、業界の課題となっていることは否めない。

これを背景に、同品ではコクやうまみなど、大豆油のおいしさを最大限生かすものとして商品化。開発に携わったマーケティング本部油脂事業部の沼倉克行家庭用グループ課長代理は、「汎用油での差別化提案には多彩な切り口があると思うが、同品ではまず、キャノーラ油とは異なる“おいしさ”に主軸を当てた」と説明する。

肝となるおいしさには、16年夏ごろから取り組んだ。意外だが、大豆油が家庭新製品として商品化されることは珍しく、フルラインメーカーである同社でもトクホの「AJINOMOTO 健康サララ」でノウハウは有していたものの、汎用油としては初のエントリーとなる。

おいしさの検証のため、選ばれたのが非製油部門の同社社員。初めての試みだけに、一般消費者に近い感度が必要だったからだ。「同じ搾油メーカーながら、油の違いに関しては一般消費者に近い感覚を持つだけに、有意義な意見が多く出た」(同)という。部門間の垣根を越えた貴重な意見を開発に落とし込み、「リリース直前まで検討を重ねた」(同)結果、絶対の自信作に仕上がった。

日本唐揚協会も認定済みの相性の良さ

使用メニューを試すと、その深いコクやうまみを感じることができるはず。例えば、定番の鶏の唐揚げ。かみしめた瞬間、肉汁とともに、ほのかに甘く深い味わいが口中に広がる。「キャノーラ油と異なるおいしさは、消費者にも新鮮に映るはず」(同)。

働き盛りの男性や食べ盛りの子どもが好きな、あの唐揚げの味–相性の良さは日本唐揚協会も認定済みだ。ほかにも「もやし炒め」では淡白な同メニューが一転してボリューミーに。「野菜の天ぷら」では濃厚な大豆油の魅力が楽しめる。

大豆へのイメージが非常に良好であることも注目したい。オリーブ油やごま油、近年人気のアマニ油などは、素材の健康感も人気の一因。食用油への健康需要を汎用油の差別化戦略に取り入れた意義は、非常に大きい。

発売後は「健康サララ」とコラボして、大豆油のおいしさを店頭で提案中。今までとは違うコクのある唐揚げに、驚きの声も多い。自社製品でのコラボ販促も同社では初で、メニュー冊子も作成した。

唐揚げの調理イメージを配したパッケージも、斬新を極める。原料素材を配するデザインが主流の中で、揚げ物の登場回数上昇にも貢献する可能性が高い。食欲をそそる唐揚げを揚げる音が聞こえてきそうなシズル感は、店頭での高い視認性を誇る。

ありそうでなかった家庭用向けの大豆油新製品。「食用油に対するポジティブイメージが浸透しつつある今、大豆の持つ優れた健康感や分かりやすさが支持されるはず」(同)。おいしさを切り口とした汎用油の新ジャンルの創出に、期待が寄せられる。

◇日本食糧新聞の2017年3月15日号の記事を転載しました。