もんじゃとタイ料理。これを同じ店で出そうと考えるところも少なそうだが、二つを組み合わせて新しい料理を作ってしまおうと考える店はそうはない。そんな常識的な発想では思いつきそうにない「タイもんじゃ」を開発し、テーブルオーダー率8割のヒット商品となっているのが、東京・恵比寿のタイ料理酒場の「タイ屋台 ラオラオ」だ。

酒のつまみでもんじゃ復権の兆し

店名が示す通りのタイ料理店。と思いきやメニュー表を見ると「タイカルパッチョ お魚刺し盛り(2種)」(1050円)や「タイの鶏の唐揚げ」(560円)といった具合にタイ料理らしい料理名がほとんどない。味付けはとことんタイ、スタイルは居酒屋という、ユニークなメニュー構成だ。

それにしても「もんじゃ」は、居酒屋でもタイ料理店でも見かけることはまれだ。そんな疑問を三浦拓丸店長に投げかけてみた。

「1号店の『だるまてんぐ』は鉄板料理居酒屋なのですが、そこでもんじゃを提供しているんです。思いのほか注文の多い人気商品で、お客さまは酒のつまみに注文しています。これをタイ料理風にアレンジしたら面白いんじゃないかと作ってみたら、ここでも売れちゃいました(笑)」。

タイもんじゃ(手前:トムヤムクンもんじゃ、奥:グリーンカレーもんじゃ)/1人前各890円(税抜き・注文は2人前~)

一番人気のトムヤムクンもんじゃの作り方は、エビと鶏肉を炒め、次いでキャベツとモヤシを投入。具材に火が通ったところで、オーソドックスなもんじゃ生地にトムヤムペーストを合わせた生地を投入する。

具材のエビや鶏肉は小さめのブツ切りにして存在感を出している

一般的なもんじゃの焼き方は具材で円形の「土手」を作るが、タイもんじゃにそうしたこだわりはない。炒め煮の要領で、もんじゃの作り方にこだわらず「うまさ」のみに集中する。

土手は作らずに、炒めた具材に生地を流し入れるのがラオラオ流。もちろん仕上がりに違いはない

香草が味の決め手

生地に火が通ってきた頃合いを見計らってタイ唐辛子、レモングラスなどの香草類を投入。これらの香草はフレッシュなものを厳選することが味の決め手だ。

食べた時に広がる爽やかな酸味と辛味がクセになる味わいでヘラを口に運ぶ手が止まらなくなってしまう。グリーンカレーもんじゃでもホラパーなどフレッシュハーブを使用して、味わいを引き立てている。

仕上げに細かく刻んだフレッシュハーブを加えるのが品質アップのポイントだ

2017年11月に東京・渋谷にオープンした居酒屋「酒場 晩酌 Tezuka」でもフレンチ出身シェフ考案の「極みもんじゃ クワトロフォルカッチャ」(1050円・2人前~)など創作もんじゃ3品をオンメニュー。やはり人気メニューとなっている。

お好み焼きと比べて長らく劣勢だったもんじゃだが、居酒屋つまみという新たなポジションを得て復権するかもしれない。

●店舗情報
「タイ屋台 ラオラオ」
経営=だるまてんぐ
店舗所在地=東京都渋谷区恵比寿4-4-14 イナビル1階
開業=2014年4月
坪数・席数=8坪・30席
営業時間=11時30分~15時(土・日12時~15時30分)、17時~翌1時。不定休。
平均客単価=昼900円、夜3200円

◇外食レストラン新聞の2019年2月4日号の記事を転載しました。