21世紀、最もヒットした地方料理といえば、文句なく宮崎の「チキン南蛮」だろう。いまや外食中食を問わず全国的な人気を誇っている。だが、よく見てみると、鶏唐揚げにマヨネーズをかけたり、チキンカツにタルタルソースだったり、変な「チキン南蛮もどき」も数多い。そこで、本当のチキン南蛮をおさらいするため、発祥店「おぐら」の事例を紹介する。

中華と洋食が融合 まかないをメニュー化

昭和30年代、「おぐら」の創始者である甲斐義光氏は、宮崎県延岡市の洋食店「ロンドン」のコックを務めていた。当時、鶏料理が盛んで丸鶏を店で切り分けていたのだが、人気がある鶏もも肉に比べ、鶏むね肉は余りがちだった。

そこで中華好きの甲斐氏は、酢豚(唐揚げ+甘酢あん)をヒントにチキン南蛮の原型を作り、まかないに定着させた。後、同僚の後藤直氏が独立して「直ちゃん」を出店し、まかないをメニュー化して延岡市内に広げたという。そのため、タルタルソースがないチキン南蛮は「直ちゃん」が発祥とされる。

繁忙日は駐車場(35台)待ちが絶えない

甲斐氏は昭和31年に宮崎に移り洋食店「おぐら」を創業。昭和34年、エビフライに付くタルタルソースと、かつてのまかないを合わせ、現在の主流であるチキン南蛮をメニュー化し、宮崎市と延岡市でチェーンを展開。同店を手本にしたメニュー化が県内に広がり宮崎名物に定着した。8店舗は親族と分社化し本家は現在2店舗。

鶏むね肉に塩、コショウをふり、卵黄、小麦粉を付けてラードで揚げる。揚げた後、南蛮酢に約2分しっかり漬ける。毎朝作る自家製マヨネーズ、ピクルス(玉ネギ・ニンジン・キュウリなど7種類)のみじん切り、香辛料を合わせてタルタルソースとする。

テイクアウトも好評

旗艦店の瀬頭店は31卓・160席。日中11時間営業で平日は約600人、繁忙日(休日/行楽・帰省シーズン)は約1200人を集客。そのうち約6割がチキン南蛮を注文する。繁忙日は客足が途切れず、売り切れ閉店もあり。店に入れない客や、店に来られない高齢客に対し弁当を販売。

弁当の内容は「店内提供と同じ」というが、空きスペースに福神漬けが追加されている

揚げ物とマヨネーズの組み合わせで超コッテリに見えるが、南蛮酢とピクルスの酸味が刺激的で、意外にもアッサリと食べられる。県民から「また食べたくなる」と表現される、南国の食文化に育まれた味わいだ。

●店舗概要
「おぐら 瀬頭店」
経営:(有)おぐら
販売実積:日販・平日約360食 繁忙日約720食※店内提供と弁当の合計

◇外食レストラン新聞の2018年12月3日号の記事を転載しました。