「おなか空いた、なに食べよ!」エッセイコンテスト入賞作品決まる
特定NPO法人国連WFP協会(安藤宏基会長)は10月12日、東京都内でWFPエッセイコンテストの表彰式を行った。今回は「おなか空いた、なに食べよ!」をテーマに、誰もが経験する感覚を通して「食」にまつわる体験や思いを文章にしてもらった。
全国から過去最多となる1万9291通の作品が寄せられ、厳正な審査の結果、WFP賞(最優秀賞)の野田有沙さんのほか、各入賞作品が決定した。
コンテストでは、応募1作品につき給食4日分(120円)が寄付協力企業(昭和産業、トヨタ自動車、日清食品ホールディングス、三菱商事)から寄付される。寄付金額は231万4920円となり、およそ7万7100人の子どもたちに栄養価の高い給食を届けることができた。
●WFP賞(最優秀賞) 東京学芸大学附属国際中等教育学校1年野田有沙(のだ・ありさ)さん 「おなかすいた、なに食べよ!」
私はおなかがすいた時、今まで食べたことがあるおいしい食べ物を思い出して、「おなかすいた、何食べよ」と考えます。そこで、「おなかすいた、何食べよ」はすごく幸せな言葉だと気づきました。「何食べよ」と言えるのは、食べ物がそこにたくさんあって選べるという有り難いことです。このことに気が付いたのは、マレーシアに住んでいた時の断食を思い出したからです。マレーシアでは断食月のラマダンがあります。断食はマレー語でプアサ。そしてブカプアサとは一日のプアサの時間が明ける時のことです。そのブカプアサの時間の少し前になると、みんなはラマダンマーケットに行き、食べ物を買います。買う時、みんなおなかがすいているのであれもこれも食べたくなって、たくさんの食べ物を買います。
断食の目的の一つは、貧しくて毎日十分な食事がとれない人たちの気持ちが分かるようになるためのものだと学びました。ですが、その人たちが毎日直面しているのは、食べられない、飲めないつらさだけでなく、それが終わらないつらさではないでしょうか。プアサではおなかがすいた時のつらさは経験できますが、毎日食べる物がなくて「何食べよ」と食べ物を選ぶことができないつらさを経験することはできません。
そしてここでもう一つ気がついたことは、食べ物がなくて困っている人たちを助けるために、例えば日本から食べ物を送ってあげても問題の解決にはならないということです。食べる物がない原因はそれぞれの地域によって違います。本当に「飢え」の問題を解決するには、それぞれの地域の「飢え」の原因を理解してその問題を継続的に解決できる方法を考えていく必要があると思います。
一日も早く、世界中の子供たちが「おなかすいた、何食べよ!」と言える日が来るように、私も少しでも何かができればと思います。(原文)
<湯川れい子選考委員長>
「おなか空いた」は、誰もが日常的に体験することでしょう。野田さんの作品は、さぁ「何食べよ!」と、喜びを持って考えられる幸せを、マレーシアでの断食を通して知ったというところが新鮮な驚きでした。
その上で「世界の飢え」を考え、それぞれの地域の「飢え」を解決して、一日も早く世界中の子どもたちが、「おなかすいた。何食べよ!」と言える日が来るように、自分も努力しようという姿勢が素晴らしい。感動しました。
<各部門の入賞作品>(敬称略)
▽小学生部門賞=「菜園の宝物」柴田杏樹(神奈川県湘南白百合学園小学校)▽中学生・高校生部門賞=「お弁当からのエール」日置七瀬(東京都連雀学園三鷹市立第一中学校)▽18歳以上部門賞=「わけっこ」大恵やすよ(兵庫県)
▽審査員特別賞(小学生部門)=「おばあちゃんの冷や汁」木下亜里紗(神奈川県カリタス小学校)▽中学生・高校生部門=「立場や状況で変わる食べ物の重み」熊谷凌風(宮城県仙台市立高森中学校)▽18歳以上部門=「祖母のふ菓子」小松崎潤(埼玉県)
▽WFP学校給食賞(最も応募数が多かった学校・団体)=京都府京都学園中学高等学校
◇日本食糧新聞の2018年10月19日号の記事を転載しました。
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