デパ地下などでお馴染みの詰め合わせ洋菓子。色とりどりのかわいらしいお菓子たちがキレイに並んでいる様はまさに宝石箱! 見るだけでワクワクしますよね。
でも、そんなお菓子が、誰に、どんな風に作られているのかなんてマジメに考えたことはありますか? なんとなく、イメージとして白いコック帽をかぶったパティシエさん(イケメン)が、せっせと……(完全にファンタジー)。
でも考えてみたら、それってすごく大事なこと。その疑問に楽しく、優しく、でも詳しく答えてくれるのが各務葉月さんの漫画『食品工場の中の人たち』です。

洋菓子工場で6年間働いた経験をマンガ化

この漫画、同人イベント「コミティア」で累計2500冊も売れて注目された作品で、2018年9月にKADOKAWAから単行本として発売されたものです。

「工場の中」というマニアックなテーマに注目が集まったのは、異物混入など食品の安全に対する関心が高まっている表れ? または工場見学の人気の高まりが関係? いえいえ、評価の理由はそれだけではなさそうです。

(C)各務葉月/KADOKAWA

この漫画がすごいのは、ユニフォームやマスク、工場のルール、仕事の流れ、食中毒の防ぎ方や異物混入防止の方法、道具の名前から裏話まで、事細かく記してあること。まるでマニュアルです。

明日から工場で働けるかも!? くらいの細かさで描けるのは、著者の各務さんが実際に詰め合わせ洋菓子を製造する工場で6年間働いていたからこそです。

(C)各務葉月/KADOKAWA

高級菓子はどのように作られている?

そして、堅苦しくなく分かりやすいのがいいところ。笑いや哀愁を随所にちりばめながら、「高級菓子」ができるまでが勉強できます。

漫画は元ニートの市井君が「他人が応募しなさそうなところ」「キツくなさそうなところ」という条件でバイト探しをし、食品工場地帯にある高級菓子を作る工場で働きだしたところから始まります。

(C)各務葉月/KADOKAWA

最初は同じユニフォームと帽子、マスクに包まれた大勢の人たちを見て「何だか悲しくなってくるわ…」と感じる市井君ですが、働くうちにその下にある個性やバックグラウンドに触れ、次第に生き生きとしていきます。

(C)各務葉月/KADOKAWA

さて、「工場の中」でまず驚くのが、製造工程で出る失敗作=ロスの多さ。毎日ものすごい量のお菓子が形やデコーションの崩れ、焼き色の加減などで「損傷品」として捨てられているのです。

(C)各務葉月/KADOKAWA

もちろん、いくらかは工場の人たちのおやつになったり(太りそう…実際太る人が多いみたい)、従業員用の販売で格安で売られたりはするのですが…。

(C)各務葉月/KADOKAWA

実際にお店で販売されているのは「選ばれしエリートたち」のみ。味や安全には問題ないのに捨てられていったお菓子を思うと、大事に食べなきゃなと思います。

(C)各務葉月/KADOKAWA

異物混入についても、読む前と読んだ後ではちょっと見方が変わりました。髪の毛やほこり、機械の部品などが入り込まないため、工場では「これでもか!」というほどの対策が取られています。

(C)各務葉月/KADOKAWA

人間がすることですから、当然ミスもあれば、思いもよらない過程で入り込む場合もあるようです(作品ではミキサーのネジが混入していたのを金属探知機でみつけたエピソードが紹介されています)。

これを読んだら、プラスチック片が~!! 髪が~!! といちいちニュースで大騒ぎするのもどうかなあと思いました。だって人間だもの。

そして工場によっては休憩が「全くない」というのも驚きです。おいしくて安全な食品を作るために、働く人にも健康的な働き方をさせてほしいものです。

読み終えると工場見学ツアーに行ったかのような満足感。食品業界に興味のある人、日々口にする食べ物の製造過程を知りたい人、工場マニアの方、お子様の自由研究の題材に、単純にエンターテインメントとして……。ぜひ読んでみてくださいね!

(C)各務葉月/KADOKAWA

『食品工場の中の人たち』各務葉月・著。発行・KADOKAWA。定価1188円(税込み)。お問い合わせは、平日12時~17時、エンターブレインカスタマーサポート・ナビダイヤル(0570-060-555)へ。

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