円卓を囲んで料理を分け合う中華料理は、和食や洋食にはない独特のルールやマナーがあります。中華料理のマナーは知らない人も多いですが、和食で気にせずに行っていることがマナー違反になる場合もあるため、最低限の作法は知っておく必要があるでしょう。かたくるしいマナーはありませんが、周囲への気配りは大切なものです。親しい人たちとの食事や会話を楽しむためにも、中華料理のテーブルマナーを正しく覚えておきましょう。

中華料理のフルコースの基本

中華料理のフルコースは、前菜、湯、主菜、主食、点心という順番で出されます。フルコースの基本的な構成は、前菜が4種、メインが6~8種、点心が2種です。

前菜では、クラゲやバンバンジーといった数種類の冷菜が盛り合わせで出されるのが一般的で、温菜が含まれる場合もあります。湯(タン)はスープのことで、ふかひれスープなどボリュームのあるものは前菜のあとに出され、卵スープなどの軽いものは主食の前に出されます。

主菜(大菜)は肉類や魚介、野菜などを使ったメインディッシュのことです。エビなど手でむいて食べる料理には必ずフィンガーボウルが用意されます。フィンガーボウルはお茶が入っていることが多いですが、汚れた手を洗うために使うので誤って飲まないように注意が必要です。

主食ではチャーハンや焼きそばといったご飯や麺類が出されます。チャーハンを食べるときは箸でなくレンゲを使用し、少量になったら皿の手前を少し持ち上げて傾けレンゲで奥側へすくって食べましょう。

点心はデザートのことで、杏仁豆腐やごまだんごといった甘いお菓子のほか、春巻きやシュウマイなどの軽食も点心に含まれます。

油を使う料理が多い中華料理では中国茶はかかせないものです。ポットでサーブされる中国茶は、ふたを半分ほどずらすことがおかわりの合図になるため大声でお店の人を呼ぶ必要はありません。

これだけは覚えておきたい円卓のルール

円卓に置かれた大皿から各自が料理を取り分けますが、最初は主賓が取るという決まりがあります。目上の人から順番に右回り(時計回り)に回転台を回して料理を取っていき、自分の順番が来たら素早く料理を取って次の人にすすめます。

大皿の料理は人数分が盛り付けられていますが、すべての人に料理が行き届くよう各自の分量を計算しながら取ることが大切です。最後の人の分が足りなくなることがないように少なめに取ることがマナーになります。

料理を取るときは、次の人に「お先に」とひとこと声をかけ、取り終えたら「どうぞ」と言って回します。

ほかの人も料理を取るということに配慮し、きれいに盛り付けられた料理を崩しすぎないように注意しましょう。

全員に料理が行き渡るのを待ってから食べますが、主賓や年長者が手を付ける前に食べてはいけません。

食事が始まり、全員が取って残った料理については自由におかわりすることができます。遠くの料理を立ち上がって取るのはマナー違反になるので、必ず自分の正面へテーブルを回してから取るようにしましょう。

回転台は急に回したりせず、ほかの人が料理に触れていないか確認してからゆっくりと回します。基本的には右回りですが、全員に料理が行き渡ったあとであれば、左にある料理を取りたいときに少しだけ左へ回すということも可能です。

回転台は全員が使う共有スペースなので、自分の取り皿や箸、グラスなどを置いてはいけません。ビール瓶など倒れやすいものを置くことや、料理がこぼれるほどの速さで回すという行為はしないように注意が必要です。

また、調味料など全員が使うものは使用したら回転台の上に必ず戻すようにしましょう。

中華料理にかかせない取り皿のマナー

中華料理では、料理の味が混ざらないように取り皿は料理ごとに替えるのが基本です。1枚の皿に何種類もの料理を乗せるのはマナー違反となるため、取り皿は何枚使っても構いません。空いた皿は重ねて邪魔にならないところに置き、回転台の上には乗せないようにしましょう。

また、中華料理のマナーでは、食べるときに茶碗以外の食器は持ち上げてはいけないことになっています。料理を取るときや食べるときには、取り皿は置いたままということを忘れないようにしましょう。

小さなスープ皿は手に持ってしまいがちですが、口を直接つけずにテーブルに置いたままで必ずレンゲを使うようにします。

大皿に盛られた料理は各自が取り分けますが、自分で取った分の料理を残すことは失礼にあたるので食べられる分だけを取ることが大切です。

レンゲを使った麺類の食べ方のマナー

麺類を食べるときは、箸だけでなくレンゲを上手に使う必要があります。右手の箸で麺を口に運び、左手のレンゲは受け皿代わりにして汁が飛び散らないようにしましょう。麺類は一度レンゲに取ってから食べると汁がはねにくくなります。

レンゲは人差し指を柄のくぼみに入れて親指と人指し指で持ち、真横でなく斜めに口をあてます。汁だけを飲むときは、左手に持ったレンゲでそのまま飲むようなことはせずに箸を一度置いてレンゲに持ち替えるのがマナーです。

また、食器を持ち上げて口を直接つけてスープを飲んではいけません。スープの残りが少ないときは、食器を傾けてレンゲですくいます。スープ類、麺類を食べる際はレンゲと箸を使い分け、音を立ててすすらないように注意しましょう。

取り分けはNG!気を付けたい中華料理ならではのマナー

中華料理では、回転台の上にある料理を全部たいらげてしまうと「量が足りない」という意味に取られてしまいます。もてなしが十分であったという意味で大皿の料理を少し残すことがマナーとなるので注意が必要です。ただし、自分の取り皿に取った分は残さず食べるようにしましょう。

また、ほかの人に料理を取り分けてあげることはマナー違反です。中華料理では各自が自分の分だけを取り、お茶やお酒も自分でつぎ足すことになります。相手をもてなす場合など、自分で料理を取らせることに抵抗があるかもしれませんが、必要なときは店の人に取り分けを頼むようにしましょう。

マナーを守って楽しく食べよう!

中華料理は、円卓に座ることで全員の顔を見渡すことができ会話がしやすいのが特徴です。大皿に盛り付けられた料理を分け合って、大勢で賑やかに食事を楽しむことができます。中華料理ならではのルールやマナーがありますが、覚えてしまえば複雑なものではありません。

中華料理の基本的なテーブルマナーを押さえて、おいしい料理を食べて和気あいあいと楽しい時間を過ごしましょう。