ハンバーグといえば、洋食メニューの定番中の定番。チーズ、デミグラス、和風おろし、照り焼き、トマトソース……など多くのバリエーションがあるが、要はハンバーグに「何をかけるか?」という違いにとどまっている。その枠を一気に飛び超えて、ハンバーグの可能性を大きく広げたのが、「榎本ハンバーグ研究所」の「しるばーぐ」だ。

ヒントはつけ麺にあり

「榎本ハンバーグ研究所」は“研究所”と冠しているだけあって、これまでに380種類以上のハンバーグを開発したハンバーグ専門店。

その中でも、「しるばーぐ」は煮込みハンバーグやチーズハンバーグと並ぶ同店の人気3トップ。ソースやトッピングで変化を出すという、ありきたりの発想ではなく、「こんなハンバーグあり!?」という逸品だ。

「しるばーぐ(200g)」1,780円(税込み)

「つけ麺からヒントを得た」と語るのは榎本稔店主。「ライスは麺の代わり、ハンバーグは同じ肉類のチャーシューの代わりといったところです。食欲がないときでも、スープと一緒なら、お茶漬けのようにサラサラと食べられるかなと思いました」。

ここまでくれば説明しなくても、メニュー名のいわれは明らかだろう。「しるばーぐ」の「しる」とは汁=スープ、「ばーぐ」とはハンバーグのことだ。

まずはスープを付けずに、ハンバーグとライスを味わう

今でこそメディアやSNSで話題となっているが、「最初はまったく出ませんでした。店の外に看板を出しても、『なんだこれ~?』と通る人に笑われていましたから」と従来のハンバーグの概念を飛び越え過ぎているがゆえに、人気が出るまでには時間がかかった。

諦めなかった理由の一つが、このメニューだけの仕入れの手間がなく、食材ロスが出なかったこと。続けてきたおかげで、今では看板メニューになっている。

かつおだしが濃厚な醤油スープには豚の背脂を加え、コクを出している。具材はニラとモヤシ

肉の食べ応えとふんわりした食感

パテに使用しているのは牛すね、牛もも、牛ばらと豚肩肉の合びき肉で、牛肉と豚肉は7対3の割合。粗びき肉と細びき肉を独自の配合で合わせることで、肉の食べ応えとふんわりした食感の絶妙なバランスを出している。

玉ネギは軽く炒めて生の食感を残したものと、あめ色になるまでしっかり炒めたものの2種類を仕込む。つなぎはパン粉ではなく、粉砕した焼麩を使用しているのも特徴。「麩の方が吸水性が高く、ジューシーに焼き上がります」と研究を怠らない。

メニューは奇抜さだけでは売れない。「話のネタに」と1回は注文が取れても、その後が続かないのが現実。「しるばーぐ」がヒットしている背景には、ハンバーグとしての確かなおいしさがあってこそといえるだろう。

【店舗情報】
「榎本ハンバーグ研究所」
所在地=東京都北区西ヶ原2-44-13
開業=2016年
坪数・席数=約18坪・34席
営業時間=月曜~土曜11時~15時30分、18時~21時30分、日曜11時~15時30分。不定休
平均客単価=昼1800円、夜2800円
1日平均集客数=昼約70人、夜約50人

◇外食レストラン新聞2018年9月3日号の記事を転載しました。