自他共に認める肉好きの料理研究家・松本葉子です。そんな私が三重県四日市市で出会って一度でファンになったのが「四日市とんてき」です。
この世にとんてき、トンテキ、豚テキ…数あれど、思いっきり分厚く切った豚ロースに濃~いソース、丸ごとニンニクがどっさりという四日市とんてきは、これぞとんてきの王者と呼びたくなるほどの圧倒的な存在感。今回は、迫力満点のご当地肉料理・四日市とんてきをご紹介します。

専門店もあるけど、ラーメン屋のメニューにも載っている四日市とんてき

四日市には、とんてきといえば必ず名の挙がる「まつもとの来来憲」をはじめ、多くのとんてき有名店があります。

私は四日市を訪れるまで、とんてきはポークステーキの一種なんだから洋食店、あるいは食堂で食べるものだと思っていました。でもその認識はあっさり崩壊。

もちろん洋食店や食堂でとんてきを出しているところもあります。でも四日市には、ほぼとんてき専門という店もあるんです。また、居酒屋、道の駅や高速道のパーキングエリアの食堂、カフェなどでもとんてきを食べることができますし、特筆すべきはとんてきをメニューに載せているラーメン店や中国料理店が何店もあるということ。

三重在住の友だちによると、客のほとんどがラーメンではなく、とんてきを食べていることもあるラーメン店も存在するとか。びっくりです。

四日市とんてきってどんなもの?ほかの地方とどう違うの?

これだけいろいろなジャンルの店で登場する四日市とんてきですから、店によって形態が結構異なるのは当然といえば当然。でも共通点はちゃんとあります。

四日市とんてき協会による四日市とんてきの定義は次の通り。

1)ソテーした厚切りの豚肉である
2)黒っぽい色の味の濃いソースが絡められている
3)にんにくが添えられている
4)付け合わせは千切りキャベツが主である

なるほど。たしかに私が食べたとんてきはどれも上の定義を満たしていました。

そして、グローブ状という一枚肉の片側がつながっている独特の形がみられるのも、四日市とんてきの特徴の一つだそう。

この定義に付け加えたいのが以下のこと。

A)ロース肉の片側から切れ目をいれてグローブ型にしているところが多い。厚切りだから火が通りやすいようにということと筋切りの意味合いもあるのでしょうが、このビジュアルがまた迫力なんですよねー。

私も自分で作る時はこんな感じに切ってます。

でも地元では、「グローブ型は食べにくいから切り離してある方が好き」と言う人も多いそう。確かに四日市とんてき協会のHPにも、「短冊状・スティック状に切った「こま焼き」「こま切れ」といったものも、「四日市とんてき」です。」との記載があります。そういや私の友だちも「時間のない時はこま焼き頼む」とか言ってましたね。

B)ソースは一見とんかつソースやデミグラスソース風に見えますが、実際は、ウスターソースが主体のもの、醤油味が強めでソースよりたれという雰囲気のもの、ケチャップや八丁味噌の風味を感じるものなど本当にさまざま。いずれも濃厚ではあるけれどそれほど塩辛いわけではなく、どちらかというと甘口に仕上げたものが多いです。

自分で作る時は、『ウスターソース1:醤油1:ケチャップ0.5:みりん0.5:カキ油0.5』の割合で混ぜることが多いのですが、気分でとんかつソースやはちみつ、味噌を加えることも。本場でも千差万別ですからね。

そしてこんなのも売ってます。この「四日市とんてきソース」は比較的ウスターソースに近いテイストでした。

C)にんにくは丸ごと、しかもいくつも添えられていることが多いです。だから平日のランチに注文するには勇気がいるかも? 食べないでおこうと思っても、香ばしくソテーされたにんにくの誘惑はすごいですよ!

D)付け合わせの千切りキャベツにはドレッシングなどはかかってなくて、とんてきのソースで食べるのが基本。キャベツにソースがかけてある店もあります。

ということで、ユニークかつ多様なバリエーションを許容する懐の深さもある四日市とんてきの魅力、おわかりいただけたでしょうか?四日市近辺にでかけることがあればぜひ、四日市とんてきを食べてみてください。

単にボリューミィな料理というだけではなく、豚肉、にんにく、キャベツの組み合わせは栄養的にも優秀で、疲れた時にもぴったり。もちろん肉好きなら、何軒かまわって食べ比べてみるのもおすすめです。