カスタマーズディライト(中村隆介社長)は、土木業から07年に外食産業に参入。約10年間で国内外合わせて100店舗を展開する新興チェーン企業だ。社会貢献にも積極的に取り組み、18年1月に「ワンオペ育児撲滅居酒屋」をコンセプトに「博多やきとり筑前屋東陽町店」(東京都江東区)をオープンした。

江東区の待機児童がゼロになるまで続ける

–「ワンオペ育児撲滅居酒屋」とは。
中村 行政の支援で待機児童は減少しているが、まだ2歳児未満を受け入れる施設は少ない。出産後も働きたいママを支援したいと2016年に社内に従業員向けに託児所を設けた。

そして、働くママのスタッフが中心となった店舗ができたら、ワンオペ育児撲滅の啓発にもなるのではないかと18年1月に居酒屋「博多やきとり筑前屋東陽町店」をオープンした。他の「筑前屋」よりも女性客率が1割ほど高く、好調だ。

託児所の費用はすべて会社負担のため大変だが、江東区の待機児童がゼロになるまでは続けるつもりだ。また、要望があって、なおかつ対応できる条件が整えば他府県でも展開したい。

中村隆介社長

–人手不足対策にもなっているのか。
中村 託児所があれば女性も安心して働ける。また、新卒採用の場合でも、ご両親から「託児所がある」と好感を持っていただけている。今後も企業としていろいろな社会的な責任を外食企業ならではの形で果たしていきたい。

–御社の現状は。
中村 居酒屋の「筑前屋」を中心に国内外に11業態120店舗(FC比率約30%)を展開している。年間15店舗程度の出店を続け、順調に推移している。海外は韓国、フィリピン、イタリアに20店舗以上を展開している。

–イタリアに出店した理由は。
中村 欧州への出店は、規制は厳しいが、まだ本物の日本食を提供する店舗は少ないためチャンスが大きいという理由からだ。イタリアの出店業態はラーメン業態の「AKIRA」。現在、4店舗を展開している。

ラーメン店といっても使われ方は日本とは違い、ワインを飲みながら、ギョウザを食べ、そしてラーメンを食べて、最後はデザートをとレストランの感覚だ。客席数は50、60席で客単価はランチ2000円、ディナー4000円と客単価は日本より高い。今後もベルギー、南アフリカなどまだ日本食の店舗があまりない国にパイオニアとして出店したい。

海外出店して思うことだが、海外では仕入先のルートを確保することが大変だ。しかし、日本では必要なものは簡単に入手できる。

ワンオペ育児撲滅居酒屋をコンセプトにした「博多やきとり筑前屋東陽町店」

地域人気店とコラボ展開したい

–日本での展開は。
中村 主力業態の「筑前屋」は現在約50店舗でまだ伸びるが、単一業態では300店舗が限界だと思う。今後は第2、第3の柱の業態を開拓しなければならない。現在、地域で人気がある飲食店とコラボでの展開を考え、実際に進めている。専門店の料理やサービスを作りこむ力と当社が得意な展開する力をコラボさせて次の柱となる業態を作りあげていきたい。

–外食産業の現状の課題は。
中村 私は土木業からスタートした。いつかは自分もゼネコンのようになれると思っていたが、すぐに限界が見えた。そして、業容拡大のために07年に知人の沖縄料理店をFCで始めたのが外食参入の始まりだ。

外食に参入して思うことはトレンドの移り変わりが早く、大変な業界ということだ。5年ほど前から、トレンドを追うのをやめ、料理がおいしく、コストパフォーマンスが高いオーソドックスな業態に力を入れている。当社ではそれが「筑前屋」だ。

今後の課題はやはり人手不足だ。今後、外国人雇用が必要になってくるだろう。外国人スタッフだけで運営する「筑前屋」も考えたい。これは労働コストを下げるためではなく、新しい可能性を追求するためだ。

–新たに取り組みたいことは。
中村 新たにというよりさらに企業として社会貢献を進めたい。現在、スポーツや演劇志望の若者を社員として雇用してサポートしている。試合や舞台がある時はシフトが大変だが、「二兎を追え」というのが私の考え方だ。納得できるまでやりきってほしい。

◇日本食糧新聞2018年8月11日号の記事を転載しました。