手持ちの食材を使い、通常のオペレーション過程で完成させながらも、オリジナリティーを光らせることが、看板メニューの肝といっていいだろう。丼の両端から、肉が“これでもか”というほど、はみ出している「高屋敷肉店」の「カブリつきステーキ丼」は、まさにそんな逸品だ。

かめばかむほど肉のうまみと脂の甘みが

高屋敷肉店は黒毛和牛A4の雌牛限定の焼肉店。一頭買いしているが、メニューとして消化しきれなかったウデの一部が余り、その部位の商品化が模索された。

「ミンチにしてハンバーグに入れたりもしたんですが、縦に切ってみたら、他にはない長さで、これをこのまま丼にのせたら、ビジュアル的に面白いと思ったんです」とメニュー開発のヒントを語るのは、高屋敷陽介店主。

食べるときにハサミでカットする

しかし、丼からはみ出している見た目の話題性だけでは、初回のオーダーは取れても、リピートにつなげることは難しい。11時半のランチタイム開始と同時に、このメニュー目当てのお客さんで満席となり、12時には限定20食が売り切れるには見た目以外にも、もちろんワケがある。

まずは肉のうまさ。この部位は肉としてのうま味は満点だが、歯応えのある食感で、硬さを若干感じる。そこを筋切りの隠し包丁を入れることで肉が軟らかくなり、かめばかむほど肉のうま味と脂の甘味が口の中に広がる焼き上がりになる。

肉を軟らかく焼き上げるために、丁寧に隠し包丁を入れて筋切りする

次にお得感。焼く前のサイズは、長さ約30cm、幅は一番広い箇所で約7cm、厚さ約1cm、重さ160~170gとたっぷりのボリューム感。「これで1000円でおつりがくるなんてお得でしょ?」の言葉に納得。

看板ランチメニューで集客力アップ

提供までの時間が早いことも、サラリーマンやOLのランチにはうれしい。肉を片面、約1分ずつ焼き、盛り付けて約5分で完成。焼き過ぎると硬くなるので、レアめのミディアムレアが決まりだ。

「ランチでうちの肉の味を知っていただき、それが夜の集客につながればと思っています。だからランチは原価も手間もかけています」と、インパクトのあるランチメニューは、焼肉店の集客力アップの必須アイテムといえるだろう。

【店舗情報】
「高屋敷肉店」 
所在地=東京都中央区日本橋3-8-10
開業=2014年3月
坪数・席数=20坪・35席
営業時間=月曜~金曜11時30分~13時30分、17時~23時、土曜17時~22時。日曜・祝日定休
平均客単価=昼950~1000円、夜4500~5000円
1日平均集客数=昼約55人、夜約40人

◇外食レストラン新聞2018年7月2日号の記事を転載しました。