納豆は、からしとしょうゆを加えてかき混ぜるだけで、食卓の一皿になる便利なものです。値段も安価なたんぱく源ですから、冷蔵庫の中に常備しておきたい食品です。何よりそのおいしさに、日本人は長年魅了されてきました。
そのせいか、納豆を用いた家庭料理というのも結構あります。その中の一つが「納豆チャーハン」です。ハムや小エビといったたんぱく質食材の代わりに、納豆を加えて炒めるチャーハンです。中華料理屋などの外食店で見かけることはないのに、家庭や一人暮らしの世帯では結構普及しているメニューです。

家庭料理の定番・納豆チャーハン

私の記憶では、1980年代の初頭にはすでにこのメニューは世間に登場し、メディアや口コミにも時折取り上げられていました。もっと以前からあった料理なのかもしれません。

納豆チャーハンはよく作っていましたが、20年ほど前に「納豆を炒めない納豆チャーハン」というのを思いつきました。炒める納豆チャーハンの別のバリエーションとして思いついたのですが、作って食べてみると、納豆のヌルヌルネバネバとチャーハンのお米のパラパラが絶妙に合い、それ以来、炒めないチャーハンのほうをメインに作るようになりました。

納豆チャーハンのレシピ

〈材料・1人分〉
納豆…1パック
からし…適宜(パックに添付のものがあればそれで可)
めんつゆ…適宜(パックに添付のタレがあればそれで可)
にんじん…中4分の1本
ピーマン…1個
玉ねぎ…中2分の1個
卵…1個
ご飯…茶碗1杯
塩…少々
油…大さじ1
アオサ…少々

〈作り方〉
1.納豆はかき混ぜ、からし、めんつゆと合わせる。にんじん、ピーマン、玉ねぎはみじん切りにする。ご飯と塩、卵を混ぜて一粒一粒に卵が覆うようにする。

2.フライパンか中華鍋を熱して油を入れ、中火で(1)の野菜を炒め、(1)のご飯を加え、野菜とご飯が混ざり、ご飯がほどけるように炒めていく。

3.(2)がパラパラになったら器に盛り、(1)の納豆をトッピングし、アオサをふりかけて完成。

納豆を炒めないのは、先ほど述べたように納豆チャーハンのバリエーションの一つとして考えたものです。とくに加熱で納豆の酵素ナットウキナーゼが壊れないようにとか健康に良いとされるネバネバ成分が壊れるからという理由ではありません。

血液サラサラ効果があると喧伝されるナットウキナーゼは酵素(たんぱく質でできている)ですから、胃と小腸でアミノ酸やペプチドに分解されるため、加熱してもしなくても体内でその効果は失われます。

国立健康・栄養研究所の「健康食品」の素材情報データベース(納豆菌の項)にも、人での有効性について、それを示す「信頼できるデータがない」と書かれています。ネバネバ成分が体に良いというのも科学的に証明されたわけではありません。

ナットウ (ナットウ菌) 「健康食品」の安全性・有効性情報

加熱した納豆と加熱しない納豆の両方のおいしさを味わえるチャーハンも

さて、先日、tvk(テレビ神奈川)の音楽バラエティ番組「関内デビル」を観ていたら、準レギュラーの橘柊生(たちばな・とうい)さん(若者に人気のダンスロックバンド「DISH//」のメンバー)が納豆チャーハンを作っていました。

彼の作り方は、納豆を炒めるタイプのチャーハンを作り、さらに好みで「追いがつお」ならぬ「追い納豆」を加えるというものでした。

加熱した納豆と加熱しない納豆の両方のおいしさを味わえるということで、さっそく試してみました。具材は同じものではおもしろくないので、知り合いから伝授のアスパラガスと生しいたけ入りにしてみました。

また、先ほどのご飯と卵を混ぜてから炒めるチャーハンはご飯がパラパラになりますが、卵の形が残らないので、今度は残るようにしました。

追い納豆式納豆チャーハンのレシピ

〈材料・2人分〉
納豆…2パック
からし…適宜(パックに添付のものがあればそれで可)
めんつゆ…適宜(パックに添付のタレがあればそれで可)
グリーンアスパラガス…4本
生しいたけ…2枚
にんじん…中4分の1本
玉ねぎ…中4分の1個
卵…2個
ご飯…茶碗2杯
塩…少々
油…大さじ2
アオサ…少々

〈作り方〉
1.納豆は2パックともかき混ぜ、からし、めんつゆと合わせる。アスパラガスは小口切り、しいたけ、にんじん、玉ねぎはみじん切りにする。ご飯と塩、卵1個を混ぜて一粒一粒に卵が覆うようにする。残りの卵1個は溶いておく。

2.フライパンか中華鍋を熱して油大さじ1を入れ、中火で(1)の溶き卵をスクランブルエッグにし、器に取り出しておく。

3.中火で(1)の野菜を炒め、(1)の納豆1パックを加えてさらに炒める。(1)のご飯を加え、野菜と納豆、ご飯が混ざり、ご飯がほどけるように炒めていく。

3.(3)がパラパラになったら(2)のスクランブルエッグを加えて混ぜ、器に盛り、(1)の納豆1パックをトッピングし、アオサをふりかけて完成。

柊生さんは青椒肉絲にも納豆を加えるそうで、「肉を入れるタイミングで納豆も入れて炒める」とのことでした。これもおいしそうです。もはや納豆を、栄養源というよりうま味の素の調味料として用いているなと思いました。ぜひ、興味のある方はお試しください。