蒸し暑い雨の日が増えてくると、さっぱり爽やかなレシピが恋しくなります。
タイ・マレーシア・ベトナムなどの東南アジアのエスニック料理は、日本の食文化のルーツと関わりが深いこともあり、日本料理と材料が似ています。魚やお肉の出汁を使いスープや煮物を作ること。主な味付けに塩・醤油・酢・砂糖・唐辛子などを使うこと。フレッシュな生姜・ニンニク・唐辛子・香菜・山椒・柑橘類を使い、香りと刺激を楽しむこと。これらのポイントを押さえると、意外と簡単におうちにある材料でエスニック風のお料理が楽しめます。

タイのスパイシーな食卓

私はタイが好きで、何度か旅行をしてます。外食がさかんで三食外食でも当たり前の文化。家で調理すると台所の設備や光熱費など、かえって家計を圧迫するそうです。タイの観光ガイドさんに、市場の食材で調理する方法を聞いても「料理したことないから、わからない」と言われることが多いのです(笑)。

タイの屋台やフードコートなど庶民が毎日利用するところの食卓には、必ず4種の味付けセット(クルワンプルーン)がのっています。「唐辛子の入ったお酢」「乾燥した唐辛子」「砂糖」「魚醤(ニョクマムやナンプラー)―――魚醤はお店によって生唐辛子がたっぷり入っています」。日本のうどん屋さんの「七味」「一味」「柚子胡椒」といったところでしょうか。

この4種類を駆使し、シンプルな麺料理に好みの味付けをします。現地のかたの食べている様子をのぞいてみると、びっくりするほど大量の唐辛子を入れて真っ赤なスープをすすっていたりします。辛そう〜(・∀・;)

お店によってはパクチーなどの香草が「お好きにどうぞ」とタッパーにたっぷり入って置いてあります。これまた、博多っ子の私の感覚で言うとラーメン屋さんの辛子高菜みたいな感じです。

今回は、ベトナムの麺フォーを使った「香味野菜のさっぱりヌードル」と、タイ料理の「ピリ辛サラダ・ヤムウンセン風」を紹介します。いずれも材料は手近な和食の材料も使っていますので、あくまでも「風」であることをお忘れなく。

香味野菜のさっぱりヌードル

ベトナムのフォーといえば、定番は鳥や牛のスープや、お魚の出汁のさっぱりスープが一般的。同じ麺類でもタイの米粉麺は、麺の太さや種類も豊富。スープもトムヤム風やココナッツ入りのものまで、サッパリなものだけでないのも特徴。

今回は手に入りやすい、ベトナムのフォーを使います。鶏ガラスープをとれば、より本格的で濃厚な味に仕上がりますが、今回は少し手抜きをして、手作りの鳥つみれからお出汁をいただきます。

【材料】
ベースの出汁:昆布、干しエビ
具材:鳥ミンチ、タケノコ、生姜、ニラ、パクチー(香草)
味付け:塩又は柚子胡椒、ナンプラー、子寶酢(亀)

【作り方】

  1. 昆布と干しエビはしばらく水に浸ける。火にかけたら、昆布は早いうちに引き出す。
  2. 鳥ミンチは、塩・白コショウをふって揉んでおく。スープが沸騰したら、一口づつスプーンですくって入れる。タケノコも一緒に投入。
  3. 鳥からも出汁が出ます。湧いてきたら丁寧にアクを取り、味見をする。
  4. 柚子胡椒!生の青唐辛子でももちろん良いですが、ゆず・塩・唐辛子で作られたシンプルな柚子胡椒は意外に便利!辛さも調節しやすいです。生の唐辛子を入れるときは、お塩で薄めに味付けしてくださいね。仕上げにナンプラーを入れることをお忘れなく。
  5. 麺は別の鍋で硬めに茹でておき、(4)の鍋に入れて軽く煮込む。
  6. ニラ・パクチーを盛り付ける。お酢を添えて完成。

ピリ辛サラダ・ヤムウンセン風

タイでソムタム(パパイヤサラダ)と人気を二分するのが、ヤムウンセン。春雨を使った爽やかな見た目に反し、ビリっとくる辛さは暑い季節にぴったり。辛さは唐辛子の量で調整できます。旬の食材、生ニンニクや新玉ねぎ、生キクラゲとも相性抜群

【材料】
・生姜
・ニンニク
・生唐辛子(柚子胡椒で代用できます)
・玉ねぎ(新玉又は紫玉ねぎ)
・子寶酢亀(かぼすの絞り汁でも可)
・豚ひき肉50g
・エビ(剥き身でも可)
・春雨50g
・キクラゲ
・パクチー(香菜)
・パプリカまたはミニトマト(彩にあれば)
・塩
・ナンプラー(ニョクマムでも可)

【作り方】

1.生姜・ニンニク・生唐辛子・パクチーの茎の部分はみじん切りにし、お酢につけて置く。

2.玉ねぎは小さめにスライス。キクラゲは戻して細切りに。

3.鍋に湯を沸かし、春雨の湯で時間を見て、背ワタを外したエビ・ひき肉(ほぐして)・キクラゲを茹でる。アクが出るときは、綺麗に取り除く。

4.鍋の材料を一緒にザルで水切りし、(1)(2)と合わせる。

5.熱々の状態でよくかき混ぜ、お酢を軽く飛ばしてなじませる。ナンプラーと塩で味を整える。ナンプラーはメーカーによって香りが異なるため、好みの香りを探すと良い。

6.お皿に持ってパクチーの葉を飾って完成。

エスニック料理にぴったりのお酢!

酸味を上手に使い分けると、味付けのバリエーションがとっても増えます♪

ところで、日本のお酢、どうやって造られているか知っていますか?

お酢は「造る」と書きます。お酢は「醸造」されるからです。日本のお酢「純米酢」は、米で作る純米酒「日本酒」の発酵がさらに進んだものです。お酢ができるためには、一度「酒」になる必要があります。例えば、イタリア料理でよく使われるワインビネガーは、ワインの発酵が進んだものです。

米から作られる日本のお酢は、アミノ酸が豊富で世界で最も「うまみ」のあるお酢です。「利き酒」のように、蔵ごとに個性のある「利き酢」ができるのが、丁寧に造られたお酢本来の姿です。

わが家では、以前から二種類の米酢を愛用しています。いずれのお酢も四百年の歴史を持つ「お酢蔵」に依頼して造っていただいています。

一つ目は、和食用の純米酢「鶴」です。日本酒の香りとコクが和食の美味しさを引き立ててくれます。

そして今回紹介するエスニックのお料理にぴったりなのが、洋食向けのお酢「亀」です。このお酢は、一度酒を絞り、その酒粕を2年寝かせ、再びアルコールを入れて再発酵して造った酢です。酒粕で作ることで、米の香りは、よりフルーティーで爽やかなものになります。

わたしは以前から、日本酒の香りがオリーブオイルやハーブと本当にマッチするのかな?と疑問を持っています。そんな時、この「亀」のお酢は大変重宝します。お米の「コク」「甘味」「柔らかさ」は残しつつも、爽やかな香りが主張し過ぎず他の食材の香りに優しく寄り添います。

今回紹介した、子寶酢亀(こだからす かめ)は、エスニック料理だけでなく、オリーブオイルやハーブなど香りを大切にしたい食材とも好相性。ぜひお試しください。さっぱりスパイシーなおうちごはんで、ジメッと蒸し暑い季節も元気に乗り越えたいですね。