福島県会津若松市在住のたべぷろ編集部員・結城助助です。5月1日は5(コ)1(イ)ということで「コイの日」なのだそうです。鯉というと、普段あまり口にすることはない食材。しかも、鯉といえば旨煮や洗いといった食べ方がオーソドックスかと思います。
しかし、会津若松市内には、鯉を天ぷらにして提供しているお店があるのです。今回は、その「鯉の天ぷら」をご紹介したいと思います。

鯉は貴重なたんぱく源

会津は、海から遠く離れた山国です。そのため、海で獲れる魚はめったに手に入らず、昔の人は川魚を主に食べていたと言われています。

そんな会津地方を、大きな飢饉が襲いました。天明の大飢饉です。当時、会津藩でも多くの人が飢饉のために亡くなりました。

そこで、二度と天明の大飢饉のような悲劇を起こさないように、当時の家老・田中玄宰(たなか はるなか)が鯉の養殖を奨励したのです。新鮮な海産物が手に入りにくい会津に置いて、養殖の鯉は貴重なたんぱく源になりました。

鯉は栄養たっぷりの「薬用魚」

これは、「鯉の天ぷら」を提供しているお店のメニューです。左端に「滋養強壮」や「婦人病の予防」といった言葉が並んでいます。単なる川魚なのに、どうしてこのような言葉が並んでいるのでしょうか。

それは、鯉が「薬用魚」とも言われるほど栄養に富んでいるからなのです。鯉には、私たちが生きていくうえで欠かせないアミノ酸がたっぷりと含まれています。その数なんと21種類! うち8種類は、人間の体の中では作り出すことができない必須アミノ酸です。

また、コレステロールの生成を抑制するタウリンや、肌や関節に潤いを与えるコラーゲン、様々なビタミンも豊富に含まれているのです。昔の会津藩では、栄養たっぷりの鯉は最高級の魚でした。

塩でさっぱりといただく「鯉のてんぷら」

鯉というと、どうしても鯉の甘煮や洗い、鯉こくといった食べ方がメジャーですが、「鯉の天ぷら」もおすすめです。会津若松市内の蕎麦屋さんでは、この鯉の天ぷらを提供しているお店があります。

鯉の天ぷらは、天つゆではなく塩で食べるのが会津流です。お好みでレモンを搾ってもおいしいですよ。鯉の天ぷらは、川魚独特の臭みはなく、とても上品な味わいです。比較的淡白な味わいですが、特筆すべきはそのコク。鯉の持つ旨味が口いっぱいに広がります。骨もすべて取り除かれているので、子どもでも安心して食べることができるのではないでしょうか。

鯉というと、あまり馴染みのない魚ですが、会津では昔から食べられている高級魚です。甘煮や洗い、鯉こくといった食べ方も良いですが、一度「鯉の天ぷら」も召し上がってみてください。