暑い季節になるとさっぱりしたものや酸っぱいものを欲したり、美味しいと感じることはありませんか? これは、身体が無意識に身体を整えようと「酸味」を選んでいるから。美味しいだけでなく、これからの季節に様々な効果が期待できる「酢」。最古の発酵調味料といわれる「酢」が持つチカラを知って、毎日の食卓に積極的に取り入れ夏を元気に乗りきりましょう。

お酢の種類と味の特徴

酢の種類は大きく2つに分けられます。

糖質を含む穀物や果実などをアルコール発酵させ、さらに酢酸によって酢酸発酵させたものを熟成して作る「醸造酢」と、酢酸などに水や調味料を加えてつくる「合成酢」です。現在の家庭用の酢はほぼ「醸造酢」になっています。

醸造酢は、米酢や穀物酢などの「穀物酢」とりんご酢やワインビネガーなどの「果実酢」に大別されます。

参考:全国食酢協会中央会 全国食酢公正取引協議会

穀物酢

トウモロコシや小麦を原料として作られる酢。柔らかな酸味とさっぱりとした味わいが特徴です。料理の下処理、煮物、炒め物などに適しています。

米酢

米を原料として作られる酢。コクのあるうま味とまろやかな味わいが特徴です。すし飯やマリネなど加熱調理をしない料理に適しています。

らっきょうの甘酢漬け

黒酢

玄米や大麦を原料として作られる酢。長く熟成発酵させて作られるため黒褐色でまろやかな酸味が特徴です。料理の隠し味に使うと味に奥行きが出ます。アミノ酸が多くアンチエイジング効果も期待できます。

果実酢

  • りんご酢
    りんご果汁を原料として作られる酢。フルーティーな香りと爽やかな酸味が特徴です。ドレッシングやサワードリンクに適しています。
赤しそとりんご酢でつくるオリジナルサワー
  • バルサミコ酢
    甘みの強いぶどう果汁が原料。木の樽で仕込み、長期発酵・熟成して作られる酢。うま味や風味が強く肉や魚料理のソースに適しています。
バニラアイスにかけてもおいしいバルサミコ酢
  • ワインビネガー
    ぶどう果汁を原料として作られる酢。赤と白の2種類があり、ワイン同様香りや渋みが特徴で酸味は軽いです。赤は肉の煮込み料理、白は魚介のマリネなどに適しています。

もろみ酢

沖縄の泡盛の酒粕を原料として作られる酢(醸造酢ではない)。アミノ酸やビタミンが多く含まれます。穏やかな酸味が特徴です。酸味が少なく料理の隠し味に適しています。

様々な健康・美容効果が期待される「酢」。酢によって風味や酸味にも特徴があります。好みの「酢」を見つけて、上手に活用しましょう。

酢が持つ3つのすごいチカラ

防腐・抗菌

昔から酢は食材を腐らせないために使われてきました。

O157や腸炎ビブリオ、サルモネラ菌、カンピロバクター、黄色ブドウ球菌、ボツリヌス菌など主要食中毒原因菌に対する高い殺菌・抗菌効果は科学的にも実証されています。その効果は、酸度が高いほど強まり、また食塩と併用すると強まることがわかっています。

食酢は腸管出血性大腸菌O157:H7に対して殺菌作用を有しており,その強さは,酒精酢>穀物酢>米酢の順であった.また,腸管出血性大腸(O157:H7,O26:H11)においては,菌株間での食酢による死滅速度の差は小さかったが,腸管病原性大腸菌(O111:K58:H-)はこれらに比べ明らかに感受性が強く,速やかに死滅した.

初発生菌数に関わらず,食酢による死滅速度は一定であったが,菌体の生育相の影響は大きく,対数増殖期の菌体は定常期のそれに比べ明らかに感受性が強く,殺菌され易かった.
温度が高いほど食酢の殺菌力は強くなり,40~50℃ 程度の温湯での殺菌が応用面からみて効果的と思われた.

引用:感染症学雑誌

以前の記事:お弁当を傷ませない3つのコツとおいしいおかず3選【レシピ付き】

減塩

酸味はなんとなく物足りない味付けを和らげてくれます。焼き魚のお醤油に少量の酢を入れると、塩分を控えていてもおいしく感じられます。

料理に酢を使用することでも塩分の過剰摂取を抑えることができます。健康のために塩分を控えるようにすることよりも、酢を積極的に取り入れることで、おいしく減塩に繋げたいですね。

酸味と塩味の相互作用についてはこれまでに多くの研究が行われており,浜島1)は1~2%食塩溶液に少量の酢酸 (0.01%)を加えることで塩から味(塩味)が強くなることを報告している。

引用:日本調理科学会誌

食欲増進

酢の主成分である酢酸には、胃液や唾液の分泌を促進させる効果があるといわれています。また、胃の働きを良くする消化酵素の働きを活発にする働きがあるため、食欲を増進させる効果があると期待されています。酢には腸内の善玉菌を増やして腸内環境を整える働きもあるので、便秘の改善にもなりお腹もスッキリ!

酢は油料理との相性が良く、油の多い料理に酢が加わるとさっぱりとして食べやすくなります。夏バテで食欲が出ないという時に、酢を使うことはとても理にかなっています。また、酢は一緒に摂ることでビタミンやミネラルの吸収をよくする働きがあるといわれています。特に、カルシウムの吸収率がよくなることが知られています。

酢を摂るときに注意したいこと

  • 空腹時を避けて食事と一緒に
    強い酸味があるものを空腹時に摂ると胃や口内の刺激になることもあるので食事中がおすすめです。酢を使ったドリンクを楽しむ時は、5倍~10倍を目安に薄めて飲みましょう。
  • 摂りすぎないこと
    一日の摂取量は大さじ1~2杯が目安です。料理を作るときや、できあがった料理にかけたりして使いましょう。どんな食べ物も摂りすぎには注意が必要です。
  • 就寝前に摂らない
    酢を飲んでそのまま寝ると歯がとけてしまう酸食歯(さんしょくし)の原因になるといわれていますので注意が必要です。飲んだ後に口をすすぐことをおすすめします。
  • 食事はよく噛んで
    歯が溶けることを恐れて酢の物や酢豚を避ける必要はありません。食事をしっかりよく噛んでいただくことで、唾液が酸を中和して酸性に傾いた口の中を中性に戻してくれます。唾液にはエナメル質を修復する成分も含まれているので通常の食事で歯が溶けることはありません。