大根におへそ? 宮城の「へそ大根」のおいしい食べ方
宮城県出身のたべぷろ編集部員・日下千秋です。私は生まれも育ちも宮城、両親も宮城県出身です。宮城では大根の保存食として「へそ大根」というものが作られています。ちょっと変わった名前の「へそ大根」。今回はそんな名前の由来や調理法をご紹介します。
見た目は派手ではありませんが…
宮城でも知る人ぞ知る「へそ大根」。じつは宮城在住の私も数年前まで知りませんでした。
初めてへそ大根を見たのは、あるとき実家で出てきた煮物。見た目は普通の大根の煮物でした。大根に箸を入れてもなぜかすっと割れません。そのままかみついてみると歯ごたえがある!
味は煮物なのに、たくあんのようなザクザクとした歯ごたえが残っているのです。その歯ごたえのある大根がへそ大根でした。そして何だか甘みがあってまた食べたくなる…。大根の煮物を食べただけなのに、ちょっとした衝撃でした。
左右のへそ大根を比べると、色が若干違うのがわかるでしょうか。よく乾燥させたものほど色が黒っぽくなるのだそうです。
はじめてへそ大根を見たかたは、これが一体何かわからないでしょう。この状態で袋に入り、スーパーや道の駅などで売られています。調理するときはここからぬるま湯でじっくり戻して煮物などに使います。見た目にも決して派手ではありませんが、甘みがありとてもいい味を出してくれるのです。
驚くのは種類の多さ。丸い形だけではなく、小さな短冊のような形、スライスしてチップ状になった薄いものも。作り手の数だけいろいろな形があります。
へそ大根の特徴はゆでてから干す
この「へそ大根」という名前は、干すときに開いた穴がまるで「おへそ」のように見えることからきています。ちなみにおへそのような穴は、調理すると水分を含んでふくらみ、すっかり目立たなくなってしまいます。
できるまで手間も時間もかかる保存食。軒先に干してある大根を毎日「出来具合はどうかな」「雨や雪で濡れていないかな」と気にかけているようすがうかがえる、作り手の愛情にあふれるネーミングではないでしょうか。
へそ大根の特徴は、ゆでた後に寒さを利用して凍らせることにあります。作るには寒暖差が必要で、宮城県丸森町筆甫(ひっぽ)地区が有名です。丸森町周辺では秋から初冬にかけて大根の収穫期を迎えるため、収穫後の時期に作られています。
できあがるまでには昼と夜の寒暖差と乾燥した気候が必要になるほか、雨や雪などの水分にも気を付けなければなりません。水分が多すぎたり、湿気があるときれいな飴色になりません。乾燥させすぎてしまっても色が悪くなってしまうのだそうです。
参考サイト:
筆甫地区振興連絡協議会
へそ大根の戻し方と煮物の作り方
へそ大根の調理法は煮物が一般的です。地域によって、具材に保存してある山菜を入れることもあるようです。普通の煮物と具材は変わりませんが、作り方で少しだけ違う点があります。「へそ大根の戻し方」と「調味料の加減」です。
まずへそ大根の戻し方ですが、へそ大根はぬるま湯に浸して水分を含ませる作業をしてからでないと調理に使えません。戻す時間はぬるま湯で約半日ほど。じっくりと時間をかけて戻します。戻し汁にも大根の甘さが出ていますので、捨ててしまわずにぜひ煮物に加えてみてください。
2つ目は調味料、おもに砂糖とみりんの量です。へそ大根の戻し汁を調理に加えると、みりんや砂糖を控えてもおいしく出来上がるのです。ご家庭の味の好みもありますが、我が家では砂糖とみりんの量を普通の煮物を作るときより少なめに加えています。
<材料>
へそ大根、にんじん、こんにゃく、しいたけ、昆布
酒、みりん、砂糖、醤油、白だし
<作り方>
1.はじめにへそ大根を戻します。へそ大根を軽く水で洗ってから、ぬるま湯に浸して半日ほど置いておきます。固さはだいたい耳たぶくらいの柔らかさになるのが目安です。
2.にんじんやこんにゃくなどの具材は食べやすい大きさに切っておきます。
3.耳たぶほどの柔らかさになったへそ大根と切っておいた具材を一緒に、戻し汁を入れて柔らかくなるまで煮ます。
4.具材に火が通ったら、酒やみりん、砂糖、醤油、白だしなどの調味料を加えます。味が馴染んだら完成。
戻し方と砂糖やみりんの量以外、作り方は普通の煮物と変わりありません。
ちょっとやそっとでは煮崩れない歯ごたえ。噛みしめるたびにほのかに感じる優しい甘さ。火が通ってほろっと崩れそうになった大根もおいしいですが、ぜひ多くのかたに一度味わっていただきたい味です。
へそ大根はどこで買える?
じつはこのへそ大根、「知る人ぞ知る」ものなのには理由があります。買うことができる場所や時期が限られているのです。
スーパーなどで、地元の生産者が作った野菜を扱っているコーナーを見かけることがありますよね。そういった産直野菜コーナーの近くや、道の駅など地域の特産品が買える場所などで取り扱っていることが多いようです。
手作りということもあり「また食べたいな」と思って探しても、時期を外すとなかなか手に入れられないこともあります。ネット通販でも購入することができます。
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