発酵熟成に15ヵ月かける「元祖くず餅」 老舗の風格とこだわり
「葛餅」と「くず餅」の違いをご存じだろうか。マメ科の植物であるクズ(葛)の根から抽出したデンプン成分の葛粉を用いた餅菓子を「葛餅」と呼ぶが、実は関東にはこれとは別に、小麦粉を使った和菓子の「くず餅」がある。小麦粉からグルテンを分離した後のデンプン質を乳酸菌で長期間発酵させて作るのが「くず餅」(「久寿餅」などとも表記)であり、「葛餅」とはやや異なった風味と乳白色が特徴だ。
くず餅は関東独特の和菓子
とまあ、これは半分以上がネット情報の受け売りなのだが、今回紹介する船橋屋の「くず餅」が、関東独特の和菓子であることはご理解いただけるだろう。
船橋屋の「くず餅」は、「元祖くず餅」と銘打たれている。全国に「元祖」「本家」などを名乗る企業は数多いが、同店が元祖と称するにはそれなりの理由がある。船橋屋は創業が文化二年(1805年)、何と210年以上の歴史を誇る由緒ある老舗なのだ。
創業当時から作り続けている「くず餅」の製法を創製したのは初代の創業者であるという。「元祖」をうたうにふさわしい銘菓だろう。
船橋屋の「くず餅」は、発酵熟成に15ヵ月間という長い時間をかけて作られているそうだ。
クズの根からデンプン質を抽出するのは非常に手間がかかる作業であり、それが葛粉の価値の一つでもあるのだが、小麦粉から生まれる船橋屋の「くず餅」も決して労せずに作り上げられているわけではない。長くのれんを守る老舗として、安易な大量生産の手法に頼らず、その価値を保ち続けているのだ。
筆者は20年近く前からちょっとした手土産に同店の「くず餅」を時折利用しているが、手土産にふさわしい気軽な価格とともに、店舗の販売員のさり気ない心遣いがうれしい店舗でもある。
●店舗情報
「船橋屋」 所在地=東京都江東区亀戸3-2-14(亀戸天神前本店)他
◇外食レストラン新聞の2018年2月5日号の記事を転載しました。
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