“たべ鉄女子”の監修をしている鈴木里加子です。高原野菜とチキンカツ――まさにヘルシーな響きのする「高原野菜とカツの弁当」は、今年100周年を迎える老舗「丸政」のとっておきの名物駅弁。さわやかでどこか懐かしいパッケージと、シンプルながらも食欲をそそる献立は、ずいぶんと昔から愛されてきました。しかし、おいしいお弁当には、普通の駅弁には考えられない企業努力が隠されていたのです!今回はそんな「高原野菜とカツの弁当」の魅力を、製造業者である丸政さんにうかがってきました。

ほかほかカツを届ける現地サービスと、それでも「冷めても美味しい」に徹底的にこだわること

「高原野菜とカツの弁当」は、昭和45年の発売当初から愛され続けているロングセラー駅弁。ヘルシーなチキンカツとフレッシュな高原野菜は、まさに女性にも親しまれる組み合わせ。現代でも変わることなく人気を誇っています。

丸政の社長、名取さんと一緒に。今回の駅弁の魅力のほか、今後の展望など、たくさんのお話を聞かせていただきました

こちらのお弁当の一押しポイントは、できたてのほかほかカツがいただけること。なんと乗車時間をあらかじめ指定しておくと、ホームに温かいカツの入った駅弁を届けてくれるんです!できたてが味わえる駅弁は、なかなかありません。

それでも丸政さんがこだわっていることの一つに、「冷めてもおいしいこと」があります。カツはチキンカツを使用していますが、これもじつは、何度も検討を積み重ねてのこと。

はじめはボリュームのあるトンカツも選択肢に入れられていましたが、冷めると硬くなってしまうことがネックと考えられていました。そこで、チキンカツで試したところ、冷めても軟らかく食べられることがわかり、まさに駅弁にぴったりとして採用されたのです。

ふたを開けると、香ばしいチキンカツと新鮮な高原野菜が目に飛び込んできます

また、ご飯もこだわりポイントの一つ。ご飯は季節に応じて米をブレンドして配合を変えます。そのことによって、どの季節においても「冷めてもおいしい」をキープできるからです。

ほかほかを現地でいただけるというサービスだけでなく、おかずやごはん一つ一つが冷めてもおいしいように考えられているからこそ、長年愛されるロングセラー弁当となっています。

フレッシュな生野菜をあえて駅弁に取り入れる

「高原野菜とカツの弁当」と名前の付く通り、高原野菜にもこだわりがあります。一番の特徴といえば、フレッシュな野菜を取り入れていること。通常、駅弁は持ち歩いたり、時間を持たせることを考えて、野菜を加熱することがほとんどです。

しかし、八ヶ岳麓で採れる、地元の高原野菜を生かしたいと考えた丸政では、どうしても生の新鮮な野菜を食べてもらいたいと、あえて生の状態を駅弁に入れられるように試行錯誤を繰り返しました。

色鮮やかな野菜はまさに、「高原野菜とカツの弁当」の一押しポイント。駅弁にはなかなか見られない、生野菜が際立ちます

たくさんの案をひねり、今のフレッシュな野菜を取り入れた駅弁が完成。シャキシャキと音を立てるレタスやセロリ、キュウリなどの生野菜が、ほかの駅弁にはない新鮮さを出しています。

野菜はほとんど前日に仕入れ、翌日に店頭に並ぶようにしている徹底ぶり。その間の管理も生であるからこそ厳重におこなわれているんです。

「今後はインバウンドにも力を入れていく」老舗の丸政だからこそできること

製造元の丸政は、今年100周年を迎える老舗の駅弁屋さん。今回ご紹介した「高原野菜とカツの弁当」以外にも、地元の山梨県・長野県周辺ならではの素材を扱う駅弁を多く取り扱っています。

そんな丸政さんが駅弁を作るときに大切にしているのが、「付加価値の高いものを作っていく」ということ。「高原野菜とカツの弁当」は、温かいままのカツを届けることや、当時珍しい生野菜を取り入れることに難しさがありましたが、企業努力により駅弁として販売することに成功。立派なトレードマークとなりました。

昔懐かしの書体や色合いがかわいらしいパッケージ。今年は製造元の丸政さんが100周年を迎えるため、特別記念デザインで作られています。

さらに、パッケージは発売当初から続く懐かしいものをあえて使用。レトロでかわいらしく、女性にも人気です。じつはこちらの「高原野菜とカツの弁当」のフォントは、もう今は使われていないものなのだとか。希少なデザインもまた、駅弁を彩るポイントとなっています。

ほかにも地方の特色を素材で引き出したり、外国人の方にもわかりやすいよう、ローマ字表記を取り入れたりと、さまざまな工夫が見られる「高原野菜とチキンカツ」。これからもより、多くの人に愛されていくことでしょう。

「今後はインバウンドにも力を入れていきたい」と意気込みを語ってくれた名取社長。小淵沢駅にある「MASAICHI本店」は丸政の新業態で、駅弁だけでなく、お米や梅干し、海苔、ドライフルーツなどの商品販売もおこなっています。

少し値の張るお土産物を意識したり、外国人向けの商品を展開するなど、今までにない新しい挑戦が光る店舗。老舗の伝統を守りつつ、新しいことにも目を向ける。丸政の挑戦は、これからも続いていきそうです。

オシャレ(カワイイ) ★★★★☆
コスパ        ★★★☆☆
ヘルシー       ★★★★☆
食べやすさ      ★★★☆☆

※星は5点満点

<販売情報>
「高原野菜とカツの弁当」
価格:1000円(税込)
主な販売駅:JR小淵沢駅
製造:株式会社丸政(0551-36-2521)