もともとは関西地域で行われていた恵方巻きの慣習ですが、2016年の調査では全国の認知度も95%を超えました。2010年の調査以降、恵方巻を認知している人のうち、節分に恵方巻を「食べる予定・食べた」は半数強を占めているそうです(マイボイスコム株式会社調べ)。
豆まきをする人の人数を超えています。なぜ、全国で恵方巻が豆まきより「好まれて」いるのでしょうか。食品開発をさせていただく立場で少し理由を考えてみました。

家族イベントとしてしんどい?

2005年と2016年の調査結果を比較してみると(マイボイスコム株式会社)、恵方巻を食べる人は31.0% → 36.2% に増加しているのに比べて、 豆まきをする人は56.3% → 35.6% に減少しています。

また、年の数の豆を食べると答えた人は42.1% → 23.9%と激減です。どちらもしない、と答えた人も28.2% → 37.0% と増加していました。

理由としては、以下のことが考えられるかと思います。

<1>タスクの有無

豆まきは、掃除をしなくてはなりません。踏んだら最後、豆がベチャッと床に散らばり厄介です。いっぽう恵方巻は食べてしまうのでゴミも出ません。

<2>食嗜好、味覚の変化

また、両者とも「食べる」のですが、恵方巻は味付けが施されていておいしいと思いやすい食べ物です。いっぽうで節分の豆は基本的に味つけをしていないため、現代人には味がないように感じるのです。

さらに、「やわらか~い」食感が好きな現代人にとって、硬い豆は食べにくい存在です。特に濃い味付けや甘みや脂身といった現代が求める嗜好とは真逆なのです。さらに高齢者にとっては、硬くて食べにくいといえます。

<3>家計を助ける

恵方巻はそれで一食になります。太巻きを一本食べきるのが「作法」なのですから、それだけでも小食の人ならお腹いっぱいです。さらに具材も入っているので、家事担当者にとっては罪悪感なく食事を作らなくてよい正当な理由ができる商材です。事実、恵方巻だけで夕食を終える家庭は少なくありません。

<4>選択(カスタマイズ)

本来は7つの食材を入れて七福神をイメージしている恵方巻ですが、人気にともない昨今では関係なく様々選べます。ケーキ店では、ロールケーキの恵方巻がありますし、鰻店では、いわば安価なうな重です。

トンカツ店では、キャベツを入れれば「トンカツ定食」ができてしまいます。豆まきは選択ができない商材ですが、恵方巻は消費者にとって選ぶ楽しみがあるのです。

<5>商材としてPR効果が狙いやすい

提供する側の店や企業にとっても恵方巻は商品力があります。各店の個性を活かしやすく、売上アップにつながるので、広告も出しますし、有効利用できる商品です。

<6>コミュニケーションの不要性

私がもっとも現代で恵方巻が好まれるキーポイントとして感じている点は、コミュニケーションが不要である点です。

豆まきは、ひとりではなんだか寂しく、また、鬼役が必要であったりと家族イベントとして成立していました。しかし核家族化、生活の多様化などで家族そろってイベントをすることがしんどいのです。また、鬼は外、と声をあげることで近所迷惑にならないか、など近隣との関係性も昔とは感覚が違います。

その点、恵方巻は、「黙って食べるだけ」ですから、気遣いの必要がなく心理的にも自由度が高いと言えると思います。

豆まきも良いものです

しかし、私は子供の頃から今も毎年欠かさず豆まきをしています。また、味付けをしていない節分の豆が香ばしくて大好物なのです。節分が終わると売らない店が多いので、シーズンには沢山買い込んでしまいます(笑)。噛むごとにポクポクと自然な大豆の甘みが出てきてゆるやかな気持ちになるものです。

皆様は、どちら派でいらっしゃいますか?