ラーメン、つけ麺、油そば……とバリエーションが広がるラーメン。進化形はここまでかと思いきや、まだあった。ラーメンの二大構成要素といえば、スープと麺。これまではスープを変化させることで新しいラーメンが開発されてきたが、麺を大胆に変身させたのが、「焼麺 劔」の「焼麺」。その名の通り、焼いた麺をスープに投入した、「その手があったか!」と目からウロコのラーメンだ。

スープに欠かせないジャガイモ

ラーメンの麺はゆでたものと誰が決めたのだろうか? 「焼きそば」があるのだから、麺を焼くこと自体はひとつも珍しくない。ところが「ラーメンの麺を焼く」となると新発想になる。

「焼麺 劔」の「焼麺」は、単に麺を焼くことだけがウリではない。その麺に合うスープが開発されてこそ、1日約150食を売り上げるヒットメニューになる。

圧力鍋で炊いたポタージュ状のスープ

スープは豚骨と野菜を圧力鍋で5時間炊いた「トンコツ ベジポタ」。「最初は普通の寸胴鍋を使用していたんですが、全体がポタージュ状になるまでに18時間くらいかかり、ガス代もバカにならなくて……」と星劍馬店主。

このスープに欠かせない食材がジャガイモ。「麺を焼くと香ばしさが出て、麺の味が強くなる。それに合わせるには、澄んだスープよりとろみのある方がいい。でも豚骨だけでとろみを出すと脂っぽくなるんです」と、とろみ出しの試行錯誤が始まった。

長芋や里芋を加えたり、ネギを多めにするなど紆余曲折の末にたどり着いたのがジャガイモ。程よいとろみは出るが、しつこくない。豚骨のうま味はあるが、あっさり系のポタージュスープが完成した。

ゆでた麺は片面だけを焼き、ふたをして蒸し焼きに

表面はパリッ、中はモチッ

麺は小麦粉と全粒粉を合わせた特注の太麺。全粒粉を混ぜることで焼いたときに香ばしさが際立つ。細麺だと焼くと全体がパリパリになるが、太麺だと表面はパリッ、中はモチッのダブルの食感が楽しめる。麺はラードで焼いて甘味を出し、片面だけを焼くことでモチモチ感を残す。チャーシューも鉄板で焼くことで、抜群に香ばしくなる……と、ここまで細部にこだわって、「焼麺」は誕生した。

すった鰹節を加えることで味変が楽しめる

今どきのメニューは“味変”がマストだが、最初はパリッとしていた麺がスープを吸うことで食感が変わり、麺の焦げがスープに溶け込むことで、スープの味わいが変化する。さらに途中で紅ショウガや、すった鰹節を加えると、最後の1滴まで飽きることがない。ヒットメニューとは、かくあるべしと合点した。

●店舗情報
「焼麺 劔」
所在地=東京都新宿区高田馬場2-6-10関ビル1階
開業=2011年1月
坪数・席数=10坪・10席
営業時間=11時~15時、18時~21時30分。祝日営業、日曜定休
平均客単価=昼・夜約820円
1日平均集客数=約150人

◇外食レストラン新聞の2017年12月4日号の記事を転載しました。