鳥獣被害を美食で解決する「ジビエ」。正しい理解と知識を料理人に伝えることを目指し、「プロ向け国産ジビエ料理セミナー」が、9月末から東京と大阪、石川、広島で開催されている。主催は日本ジビエ振興協会が事務局を務める国産ジビエ流通規格検討協議会で、食のプロを育てる辻調理師専門学校が協力。大阪は10月29日、大阪市阿倍野区の同校で実施され、近隣で活躍する料理人41人が、熱心に聴講した。

昨年の「鳥獣被害防止特措法」改正により、ジビエの食肉としての利活用に注目が集まっている。そこで同セミナーは、農林水産省「鳥獣利活用推進支援事業」の一環として開催。ジビエの流通ルールや取り扱いの留意点、安全でおいしい加熱調理方法など、ジビエを提供する際に必要となる知識・調理技術を伝授した。

プログラムではまず、同振興協会藤木徳彦理事長が「国内における鳥獣被害の現状と捕獲鳥獣の食肉利用について」をテーマに「野生鳥獣による農業被害は年間約200億円に上り、農林水産省と環境省は23年までに生息数半減を掲げる。

対策として鹿やイノシシを適性頭数に戻そうと、有害鳥獣捕獲を推進。昨年の法改正では安全性確保や安定供給、販路などをクリアすることで、地域資源としての有効活用を明記し、具体的な動きがスタートした」と紹介。

また、流通ルールや飲食店・食品加工施設での衛生管理ポイントなどについても詳しく説明した。

続いて、同校講師がジビエの栄養的特徴や衛生管理について講義したのち、おいしく衛生的な調理法として「鹿肉のポワレ」の基本加熱調理の実習を行った。

野生の肉は脂肪分が少なく加熱すると固くなりやすいため、調理温度を管理することで軟らかくおいしく調理できる。衛生面では、中心温度75度C1分間で、E型肝炎ウイルスや大腸菌などの感染リスクがなくなるため、低温調理を推奨。

肉に、溶けたバターを絶え間なくかけながら弱火加熱し、肉の表面が白っぽくなったら裏返し、同様にバターをかけ続け、これを5回繰り返す。その後火を止め、フライパンの上で休ませ、スチームコンベクションオーブンで加熱する方法で実習した。

参加者からは、調理法やメニュー例、安全性など多様な質問が寄せられた。

◇日本食糧新聞の2017年11月10日号の記事を転載しました。