こんにちは!長野県伊那市在住のたべぷろ編集部員まつもとゆりかです。信州の名産といえば「蕎麦」が有名ですね。北から南まで、信州には蕎麦処が数多く見うけられます。信州に旅行に行く際にはまずはお蕎麦・・・という方も多いのではないでしょうか。信州は地域によって様々な種類の蕎麦がありますが、今回は信州の南寄りの高遠町で受け継がれている、味噌と大根の汁で食べる「高遠そば」をご紹介します。

蕎麦のうまみや香りを引き立てる「からつゆ」

元来、蕎麦のつゆといえば鰹節などでだし汁を取り、醤油、みりん、砂糖などで味付けをしたもの。そこにワサビやねぎを加えていただくのが一般的ですよね。江戸の職人が試行錯誤し完成させたこの醤油ベースのつゆは「江戸つゆ」と呼ばれているものです。私も信州に移住するまでは、これ以外の蕎麦つゆを食べたことはありませんでした。

「高遠そば」は、大根の絞り汁と焼き味噌だけの非常にシンプルなつゆ(からつゆ)に茹で上げた蕎麦をつけて食べます。薬味には、ねぎと大根の擦りおろしたものを入れます。基本的にはだし汁は使いません。

「鰹だしの香らない蕎麦なんて!」と、この食べ方を聞いた時には衝撃でした。しかも、味噌とうどんならともかく、蕎麦の繊細な風味が味噌で消えるのでは?

ところが、実際にいただいてみると、焼き味噌の香ばしさやコクが食欲をそそり不思議と物足りなさを感じません。むしろサッパリとしたつゆが、蕎麦の旨味や香りを引き立たせてくれます。

「からつゆ」に使用する大根は辛味の強い辛味大根と呼ばれるもので、通常の大根よりも小ぶりで10センチ位の大きさです。このピリッとした辛味の強いつゆは、お酒のお供に蕎麦を召し上がる方にはお勧めです。

蕎麦の歴史をひもといてみると、江戸時代に醤油が普及するまでは、味噌を水で溶いたつゆで蕎麦を食べていたようです。「高遠そば」は蕎麦つゆの歴史の原型とも言われています。

確かに江戸時代、信州の山間地域の庶民にとって、砂糖など高価な調味料には手が届かなかったのでしょう。砂糖を使っていない蕎麦つゆ、現代では逆にヘルシーでいいかもしれませんね。

「高遠そば」という名前の蕎麦は、実は福島県会津地方にもあります。以前、「大根の辛味がクセになる!会津ならではの「高遠そば」という食べ方」でもご紹介していますが、もともと高遠藩(現在の長野県伊那市高遠町)の殿様だった保科正之(ほしな まさゆき)が会津藩に移封された際、信州高遠藩で食べられていたそばの食べ方を伝えたことに由来するそうです。

手軽に作れるのも嬉しい「からつゆ」

醤油ベースの蕎麦つゆは、一から手作りするのはなかなか手間も時間もかかるので、今は濃縮タイプのつゆを使う方も多いと思いますが、時短という点では、この「からつゆ」もかなり手軽に作れるレシピですので、ぜひ一度お試しください。

簡単な昼食やお酒を飲んだ後の夜食にもサッパリといただけます。まず、焼き味噌を作ります。アルミホイルに味噌をのせてオーブントースターで5~6分。表面に軽く焦げ目が付く程度に焼きます。

味噌を焼いている間に大根を擦りおろします。辛味大根が無い場合には、普通の大根でOKです。辛味の強い先端部分を使えば代用できます。蕎麦猪口に大根の汁と味噌を入れ、好みの塩加減で食べますが味が濃い場合は蕎麦湯で割っても美味しくいただけます。

焼き味噌をアレンジしてさらにおいしく!

とてもシンプルな味が魅力の「からつゆ」ですが、焼き味噌に各ご家庭流のアレンジを加えて作ってみるのも楽しいと思います。

例えば、荒めに擦ったクルミを味噌に加えると、つゆの風味とコクが増し食感も楽しめます。擦りゴマなども相性がいいと思います。鰹節を練り込めば、だし汁を使わなくても鰹の風味が際立った蕎麦になります。

また、何といっても蕎麦のシメは蕎麦湯ですが、この「からつゆ」の蕎麦湯もなかなか美味しいので、ぜひ、最後まで高遠そばを堪能してみてください!