1年前に模様替えして、すっかりあか抜けたニューヨークのテリヤキ専門のファストフード・レストラン「グレーズ」。ウッディーなインテリアに和風のデザイン。店内で食べる客には、使い捨てではない、瀬戸物の器と木製の箸でサーブする。テリヤキ、ライス、サラダのセットが7$50¢から10$25¢で食べられ、質・量ともに満足できることから、店は常時にぎわっている。

メニューのお手本のようなシンプルさ

同店に次から次へと入って行くのは、ほとんどが二十代の若い世代ばかり。同店は、シアトル流のテリヤキ専門店。同店では、材料は、できる限り、オーガニックで地元の材料を使っている。テリヤキのソースも生のパイナップル、リンゴ、ショウガなどを使って一から作る。

メニューはいたってシンプルで、フォローしやすい。まずは、メインのタンパク質を、胸肉(9$50¢)、もも肉(8$)、ステーキ(10$25¢)、ポーク(9$)、サーモン(10$25¢)、豆腐(8$50¢)、炒めた野菜(7$50¢)の中から一つ選ぶ。次に、ライス(白米、玄米、ご飯の代わりにエキストラのサラダ)を一つ選び、第3段階で、サラダにかけるドレッシングを、セサミ、ニンジンとショウガ、はちみつレモンから一つ選ぶ。これでカスタムメードのマイ・テリヤキの出来上がり。3$の追加で、肉、野菜、魚、豆腐を追加することもできる。

メニューのお手本のようなシンプルさ。しかし、84通りの選択肢を可能にしている。

鶏のテリヤキ(むね肉):9$50¢/ポーク・リブ:5$/蕎麦ヌードルサラダ:4$

若者のテークアウト客が次々と訪れる

テークアウト用には、生分解性のボックスに入れてくれる。量、質ともに満足でき、懐にも優しく、近辺には大学も多いことから、多くの若者たちが次から次へと訪れている。

店内で食べている彼らを見ていると、まずはフォークとナイフを使って、ざっと切り込んでから、テリヤキ、サラダ、ライスを軽く混ぜて食べる人が多かった。同店のボウルは、日本の丼と比べてはるかに浅い。浅いということは、重層的に具を入れるのではなく、並べる形を取ることになる。したがって、同店のテリヤキ・ボウルは、日本の丼物とはまた違う、ユニークな盛り付けになっている。

同店では、テークアウト客がイートイン客よりもずっと多い。店内にあるのは19席。19席以下であれば、客用のトイレを用意しなくても済むのだ。

テークアウト用の鶏のテリヤキ(もも肉):8$

韓国人によるアメリカ人のための日本のテリヤキ

それにしても、シアトル・スタイルのテリヤキとは、いったいどんなものなのだろう? 味は、日本のテリヤキに比べ、かなり甘い。

シアトル出身のオーナー、ポール・クルーグさんによると、シアトルは「テリヤキの街」だ。1970年代にシアトルに移民した数多くの韓国人がテリヤキのマム&ポップ・ショップ(=家族経営の小さな店)をオープンした。したがって、シアトルのテリヤキは、韓国人による、アメリカ人のための、日本のテリヤキなのだ。シアトルでは、実は、ハンバーガーの店よりテリヤキの店が多く、やがて、シアトルのテリヤキは、ニューヨークのピザ、フィラデルフィアのチーズステーキ、または、大阪のたこ焼き、広島のお好み焼きといった位置付けに育ち、何かを食べに行こうというと、テリヤキを食べに行こうということになるそうだ。

しかし、ポールさんがニューヨークに来て直面したのは、あれほど親しんだテリヤキの店がないという現実。そこで、2010年に第1号店をマンハッタンのミッドタウン・イーストにオープン。以来、順次店をオープンしていき、今では、マンハッタンのミッドタウン・ウエスト、ユニオンスクエア、ブルックリンのウィリアムズバーグ、サンフランシスコに2店、シカゴ、ウィスコンシン州のマディソンにも店を展開。近々、ブルックリンのダンボ地区にもオープンする。ポールさんは、「もしハンバーガーの店をオープンしていたら、これほど成功しなかったろう」と言っている。

なるべくオーガニック野菜を使用

◇日食外食レストラン新聞の2016年11月7日号の記事を転載しました。