「モクバザ」の宮本英哲店主の前職はグラフィックデザイナー。飲食店を始めるにあたり「料理の素人があれこれ手を出してもうまくいかない。メニューを1本化して、本気でおいしいものを作ろうと努力したら成功するかもしれない」と考えた。キーマカレーに特化したことで、ランチタイムは22席が3回転以上するほどの繁盛ぶりだ。

スパイスのこだわりはカルダモン

キーマカレーに特化した理由は「カレー専門店はあるけど、キーマカレー専門店は希少。ライバルが少ないことで差別化できると考えました」と宮本店主。メニューを絞った分、こだわりは強い。

仕込みは、国産牛肉と豚肉のいろいろな部位を特注でブレンドしたひき肉10kg、みじん切りの玉ネギ20kg、ニンニク、ショウガ、15種類のスパイスを炒めることから始まる。スパイスのこだわりは、カルダモンを主張させること。通常は皮ごと炒めて香りを出すところを、一つずつ丁寧に皮をむいて中身を使う。「その方が食べた瞬間、カルダモンの香りが口の中にパッと広がるんです」。

ライス、ルゥ、チーズの3層を一気にスプーンですくって食べる

炒めに2日がかり計10時間、スタッフが交代で混ぜる

炒める時間は合計で約10時間。2日がかりで炒め、その間、スタッフが交代で混ぜ続ける。寸胴にいっぱいだったものが、鍋底から1cmくらいまでになり、あめ色を通り越してチョコレート色になる。

ペースト状になった玉ネギに、合いびき肉、トマトの水煮缶、ココナツミルク、スパイスと秘伝の自家製ブイヨンを加えてじっくり煮込み、合計で20時間かけて作り上げる。これだけ時間をかけられるのも、基本メニューを1本に絞っているから。食材にロスが出ないことも大きなメリットだ。

キャプション2 ルゥをドーム型に盛り付け、木べらで表面を滑らかにするのがコツ

チーズがツルツル、ピカピカに

こだわりはこれだけではない。モクバザのキーマカレーを一躍有名にしたのが、その盛り付け方にある。円状に成型したライスの上にルゥを盛り付け、全体をドーム状にする。これに卵黄をのせたものが「キーマカレー」で、「チーズキーマカレー」はライスとルゥのドームに溶かしたモッツァレラチーズをまわしかけ、全体をチーズでコーティング。

「木べらを使って完璧なドーム型にするのがコツ。ルゥの表面を丁寧になでつけて、滑らかにします。そうすることでチーズがツルツル、ピカピカになるんです。究極の美しさを追求しています」と元デザイナーだけあってミリ単位の妥協もない。このユニークな盛り付けがインスタで広まり、宮本店主の当初の狙い通り、キーマカレー専門店「モクバザ」は繁盛店になった。

外観にも店主のこだわりが。夜はバーとして営業

●店舗情報
「モクバザ」 所在地=東京都渋谷区神宮前2-28-12 1階/開業=2004年7月/営業時間=午前11時30分~午後3時(LO午後2時30分) 午後7時30分~11時30分(同11時) 日・祝定休 月曜はランチタイムのみ定休/坪数・席数=10坪・22席/1日平均客数=昼70人 夜30人/平均客単価=昼1100円 夜2000円

◇日食外食レストラン新聞の2016年12月5日号の記事を転載しました。