冬が近づくと勢いづく鍋ニーズ。さまざまな鍋メニューが登場するなかでも、まさに“他にはない”味とスタイルで女性に大人気なのが、大阪市の「和洋折衷Bacci」の薬膳鍋である。おいしさと美容効果、エンタテインメント性という魅力的な内容で、冬の看板メニューとして不動の地位を築いている。

冬はもちろん夏も食べたい鍋

同店の店主、稲葉加都彦さんは、西洋料理を学ぶために渡ったヨーロッパで、日本人に求められる和食の意義を実感。帰国後は、和食店でも修業して、和洋を取り入れたフュージョン料理店を開店したという。食材にもこだわった創作料理は、今や女性客が8割という驚きの吸引力を発揮している。

そんな女性のハートをガッチリとつかむのが、2年前から登場した薬膳鍋。昨秋からは、パール成分もプラスした「薬膳メレンゲ真珠(パール)鍋」(1人前3500円、注文は2人前から、要予約)にバージョンアップし、冬場はもちろん夏場にも食べたい鍋として、リピーターを増やしている。

具材は、無農薬野菜、キノコ類、豚肉、鶏肉、魚介類。店主の故郷である三重県産の野菜を使用するなど、食材にもこだわって提供している。写真は2人前

真珠の美容成分が融合したメレンゲ

まず出てくるのは、白く艶やかなメレンゲドームに覆われたお鍋。これだけでもボルテージが上がるのだが、コンロにかけることでさらに膨らみ、ドキドキ感が高まっていく。そして、最高潮に膨らんだところで、客が穴を開けて蒸気を抜くというニクい仕掛けが待っている。ドームがしぼんだら、伊勢志摩産の真珠パウダーをプラス。真珠の美容成分が融合したメレンゲをまず味わってから、具材を入れて楽しむわけである。

メレンゲドームの材料は、卵白と山芋のすりおろし。うまく膨らませるためには、配分や泡立て具合、火加減が難しく、デリケートな調理が必要になる。「最初は雪見鍋をイメージして、山芋だけで考えたが、それではありきたり。そこで、卵白を活用して膨らませるアイデアがひらめいた」。試行錯誤や偶然の発見を経て、完成したスタイルである。

女性にアピールする真珠パウダー

締めのパエリアもユニーク

薬膳鍋の味で目指したのが、「薬膳はおいしくない」といったイメージを払拭する“本当にうまい鍋”。鍋のベースは、鯛の骨と鶏の骨からフレンチの手法でだしをとり、昆布や白菜なども加えて仕上げるコクのあるスープ。このベースに、漢方の専門家の監修のもと、クコやナツメなどの数種の生薬を加える。だしが持つ力強さが薬膳材料の香りとも調和し、相乗効果でのおいしさが実現できたという。

また、締めまでユニークなのがこの鍋。なんと、残っただしで炊き上げる「パエリア」(1人前800円)が楽しめるのである。考案のきっかけはテレビの企画からというが、最後に味わうパエリアにハマる人が続出。このアイデアも、鍋の人気をアップさせる要因となっている。「新しい鍋も考えたいが、これに勝てる鍋はなかなか難しい」と、稲葉さん。現在、構想を温め中とかで、今後の新メニューにも期待である。

●店舗情報
「和洋折衷Bacci」 所在地=大阪府大阪市西区江戸堀1-23-21 ビエラ江戸堀1階/開業=2011年1月/営業時間=ランチ(木・日曜のみ)午前11時30分~午後2時30分(LO2時)、ディナー 午後6時~11時(同10時)、金・土曜、祝前日は11時30分(同10時30分)。月曜定休、祝日不定休/坪数・席数=約13坪・店内20席、テラス席4席/1日平均客数=昼40人、夜15人/平均客単価=5500円

◇日食外食レストラン新聞の2016年12月5日号の記事を転載しました。