残暑厳しいこの頃、いかがお過ごしでしょうか? 新潟生まれ、新潟育ちのたべぷろ編集部員・秋山ツクルと申します。「いごねり」は海藻を煮て冷やし固めた加工食品です。「寒天…こんにゃく?」といった見た目で佐渡産が有名ですが、実は日本のいろんな地域で食べられています。双璧となるのが九州の「おきうと(おきゅうと)」です。ビタミン、ミネラル分を多く含み、夏バテの体にも優しい「いごねり」の食べ方を探りましょう!

「いごねり」は正確に仮名表記ができません!!

新潟で生まれ育ったおじいちゃんおばあちゃんたちは、「い」と「え」の中間母音を使います。これがまさに「越後の、区別がつかない問題」です。

これは70代以上の方々に顕著に見られ、逆にそれ以下の世代では、この「の中間母音」を使いこなせません。

「いごねり」を探すと「えごねり」が見つかったり、単に「いご」「えご」だったりもします。標準語化された方の発音では別の名称・表記になっちゃいますが、越後の70歳、80歳以上のおじいちゃん、おばあちゃんが発音すれば全部同じ「いご(えご)」です。みんな同じものなので、どれでも手近なものを食べてみてください!

佐渡では「いごねり」とねりが付き、本州(新潟市内など)では単に「いご」あるいは「えご」としていることが多いようです。

消えゆく美しい方言。せめてこの食文化だけは受け継ぎたい! 今回は「ごねり」として紹介いたします。

食感は「寒天とこんにゃくの真ん中」

原料は「えご草」という海藻。水でよーく煮て練って、冷やし固めて作ります。味はたんぱく、風味がとっても特徴的で「磯の香」と呼びたいところ。食感はまさに冒頭の「寒天とこんにゃくの真ん中」で面白い。「プリプリ、もちっ」と歯切れよい。日本酒をたしなむ大人が好みそうな「通の味」ともいえましょう。

「巻き」を一度広げて短冊に切り、おかかを乗せて仕上げは醤油。磯の風味が引き立ちます

ご本家の佐渡には2タイプが。本州でよく見るブロック型の「板」のほか、シート状の「巻き」があります。「巻き」は賞味期限が短いため出回りにくいようですが、お取り寄せは十分可能です。加えて「板」には「辛子酢味噌」が添付されていることが多く、「巻き」には調味料がついていません。

佐渡のみなさんは「巻きを長ネギと醤油で」食べることが多いようですが、新潟市内で生まれ育った筆者はトップ画像のように「板を添付の辛子酢味噌で」が定番の味です。いや、かつお節だ、おろし生姜だ、酢醤油だ!という声も聞かれ、風味をいただく食べ物、「好きな味で食べて!」スタイルの食べ物といえます。

「巻き」を巻いたまま輪切りにするとところてん状になります

いつ食べる?「今でしょ!」

いごねりを食べるべき時を考えると、「ちょっとおめでたい日のごちそうの、端っこにちょこん」というシーンが思いつきます。お祝い膳の一品だったり、おもてなし料理として選ばれることが多いかも知れません。大量に出回る品ではなく、ちょっぴり割高なことと、大人味でお酒によく合うことも関係しそうです。

実際子どものころ、筆者は食べるたびに「なんじゃこりゃ」と思ったものです。しかし大人になった今、改めていただいてみると、なんとも複雑に味わえるものと再認識できました。

「旬」から考察すると、「おそらく夏」だと思われます 。これは原料である海藻、えご草の採取解禁が、毎年、梅雨明け前後だからです。

とはいえ、えご草は乾燥保存ができ、メーカーは通年でいごねりを加工、出荷しています。スーパーでも常時扱われ、いつでも買い求められますが、基本的に冷蔵保存食品で冷たい状態でいただくため、やっぱり暑い日の夕方につるん!と食べるのが一番おいしいですね!

夏の間、キンキンに冷えたビール+枝豆を存分に楽しんだ後は、いごねり+日本酒で秋を待ちましょう!

冷蔵庫から出して切り分ければOKなのもうれしいところ。ヘルシーで、現代人が不足がちな栄養素も摂れます。ちょっと通な大人味のいごねりで一杯。ぜひ!

こちらも「巻き」の短冊、ねぎをのせて