もんじゃ、天丼、ウナギ、そば、洋食と、老舗グルメが軒を連ねる浅草。昭和一桁に創業した町中華の店、「博雅」もその一軒だ。ラーメン、シュウマイ、餃子、チャーハン…と町中華の定番メニューが並ぶ中で、20年ほど前からメニューにあり、ここ最近にわかに注目を集めているのが「野菜炒め(玉子のせ)」だ。

「博雅」の石塚慎太郎店主は、3代目の長女であり、現女将の純子さんと結婚して4代目を継いだ。「野菜炒め(玉子のせ)」が誕生したのは、純子さんの祖父の2代目と母親(3代目)が店を切り盛りしていたころ。「母から聞いた話では、お客さんと『野菜炒めに卵焼きをのっけたらおいしいんじゃない?』ということになったらしいんです」と純子さん。

野菜炒め(玉子のせ) 880円(税込み) トロトロ卵焼きの光沢感ある黄色が映える

誕生以来、約20年間、お客から地道な支持を得てきた同メニューだが、見た目がご覧の通り映える。SNSが放っておくはずがない。SNSに投稿された写真が話題を呼び、それをキャッチしたテレビ番組が紹介して、瞬く間に注目メニューに。「昔の常連さんや、『テレビを見た母が、昔食べておいしかったと言っていました』というお客さんにもご来店いただいています」と、デビュー20年目にして、“遅咲き”の大人気メニューとなった。

ライスにも、ビールにも相性抜群

具は豚ばら、キャベツ、モヤシ、ニンジン、ニラ、タケノコの水煮、キクラゲ。豚ばらはそのまま入れるのではなく、下ゆでする。「ラードを使っているので、下ゆでして豚ばらの余分な脂を落とし、脂っぽくならないようにしています」と石塚店主。

豚ばらは下ゆでして余分な脂を落としてから加えるなど細かなことに手間を惜しまない

季節によって野菜から出る水分量が異なるので、それに合わせて加熱時間を調整する。具材も調味料も特別な物は一つも使っていないが、料理初心者がよく言う「野菜炒めくらいなら作れます」とは、完成度が異次元的に異なる。

野菜炒めの上に卵焼きをのせただけではないプロの技が、同メニューの人気を支えているといえるだろう。

卵焼きをのせない「野菜炒め」(770円)としても提供している

●店舗情報
「博雅」
所在地=東京都台東区浅草1-15-2/開業=昭和初期/坪数・席数=約18坪・22席/営業時間=11時30分~14時、17時30分~21時、土日12時~21時。水・木曜休/平均客単価=1000~2000円/1日平均集客数=平日70人、土日100人

◇外食レストラン新聞の2022年8月1日号の記事を転載しました。