悪立地に店を構えるならば「そこまでやるか!」と言わせるくらい演出を徹底する覚悟が必要。そうした逆境をバネに集客アイデアを惜しみなくつぎ込んでヒットを飛ばしているのが東京・北千住の「貝と魚と炉ばたのバンビ」だ。看板商品「藁薫るスモークカルパッチョ」「カールクスモーキー鶏井」や「生抹茶」ドリンクなどユニークな商品をずらり揃え、客の歓声に興味を示した隣席客が連鎖注文することも多いという。

藁の煙で演出力と商品力をアップ

高さ30cmの透明ドームの中は煙が充満してよく見えない。客席でドームを外すと吹き出る煙の中から二段式の皿に盛り付けられたカルパッチョやフックでつるされた鶏の半身揚げが登場。客は歓声を上げながら、こぞって写真を撮り始める。

ドームを開けるとカルパッチョが2段に盛り付けられた皿が登場。カールクスモーキー鶏井はフックでつるしてフォトジェニックな盛り付けに

「商品開発ではインスタグラムやフェイスブックなどSNSに投稿してもらえるような演出ができないかと常に考えています」と宮下悟店長は語る。

もともとは系列店で提供するカツオの藁(わら)焼きから他の料理でも藁の香りで瞬間スモークができないかと考えたのが開発のきっかけ。そこからインパクトを高めるために透明ガラスドームを探し、二段式の木皿やつるしフック式の木皿を自作して現在の演出が出来上がった。

透明ガラスのドームをかぶせてテーブルまで運ぶ。煙で料理が見えないことも期待を高める演出となっている

居酒屋で抹茶をたてるギャップがヒット

味にも妥協はない。カルパッチョでは神奈川三浦漁港にその日水揚げされたばかりの鮮魚を使用。半身揚げの鶏は自家製調味液で1日マリネした後に3日間干し、注文を受けてから揚げるという手間のかかりようだ。そうした努力の結果「半数以上のリピート客さまが、新しいお客さまを連れて驚かせるという好循環が生まれています」と宮下店長。

そんな遊び心はフードだけにとどまらない。ドリンクでは客がセルフで抹茶をたててアルコールを割るスタイルの「生抹茶」シリーズ6アイテムを540~734円(税込み)でラインアップ。銀座の老舗茶店から仕入れた茶道で使用する本格抹茶を茶せんでたてる上品さと居酒屋のギャップがウケてSNS投稿必至のヒット商品だ。

【店舗情報】
「貝と魚と炉ばたのバンビ」
経営=ちゃらり/店舗所在地=東京都足立区千住2-62 富士ビル3階/開業=2016年7月/午後5時~翌午前0時(LO11時)、日曜定休/坪数・席数=16坪・24席/1日平均客数=30人/平均客単価=4200円

◇外食レストラン新聞の2017年8月7日号の記事を転載しました。