インスタ映えするきらびやかな弁当がある一方で、“素朴感”の直球勝負で人気なのが、奈良県香芝市にある古都屋の「きこりむすび」。近隣はもちろん、遠方から買いに来るファンも多く、強力な吸引力を発揮している。集客と売上げをけん引する、名物弁当の魅力を取材した。

「おふくろの味」をテイクアウト

同店は、創業26年の地域に密着した弁当店。オープン当時、周囲は閑散としたエリアだったが、現在では、大阪のベッドタウンとして人口が急増。近隣にニュータウンが広がる幹線道路沿いにあり、弁当需要が期待できる立地である。

「当時は、イタリアンなどがもてはやされていた時代。でも、一般家庭では作らなくなった“おふくろの味”が、今後必要になってくるであろうという思いがありました。家庭の味に、もう少し手間暇をかけた料理を食べてもらいたいとオープンしました」と、水谷充宏店主。ミセスをターゲットに、テイクアウト専門のおにぎり店としてスタートした。

国道沿いにあり、奈良観光の途上で立ち寄る遠方の客も多い

そして、開店ほどなく登場したのが「きこりむすび」。和歌山だけではなく奈良にも、山仕事などでの手軽な携帯食として、大きなおにぎりを高菜で包む“めはり寿司”が伝承されている。そのスタイルをヒントに、他のおにぎり店にはない商品をと開発したという。

竹皮を開くと出現するのは、昔話に出てくるような巨大なおにぎり。中には、甘辛く味付けしたチリメンジャコと昆布の佃煮が入っており、見た目通りの男性も満足できるボリュームだ。塩分3%に調整した塩紅サケとコンニャクの煮付け、梅干し、たくあんが添えられており、おかずも素朴である。

「きこりむすび」562円(税込み)竹皮の包装でかさばらず、リュックにも入れやすい。店頭には、他にもさまざまなおにぎりを用意。写真奥手前から時計回りに、玉子・野沢菜・梅・本シメジ(野沢菜=195円、他各108円)。※各税込み。価格は2018年10月15日現在

「シンプルな商品だからこそ、コメや海苔、サケなどの食材には、品質が良く安定供給される“ほんまもん”を使用しています」。中でも、コメはおにぎりの“命”。新米の季節には、各品種の味や食感を確認し、米穀店と相談しながら選定。数種類の品種をブレンドした同店専用のコメを、ガス炊飯器で炊き上げる。

中はふんわり、外はしっかり

きこりむすびでは、ご飯260gに塩味を付け、手で5~6回握るだけで成形。口の中でほどけるような食感を目指し、中はふんわりと外はしっかりした山の形に仕上げている。

同商品は、今や名物として定着し、日販は80~100個。購入者は、2~3個からレジャーや催事用に大量注文する人まで幅広く、他のおにぎりや幕の内などの弁当を同時購入する人も多い。同商品は、購入単価をアップさせる役割も果たしているのである。

「息長く愛される商品として大事にしていきたい」と水谷さん。名物を柱に、今後も地域に根ざして、利用を広げていきたいと話す。

●店舗情報
「古都屋」
所在地=奈良県香芝市旭ヶ丘1-31-1
開業=1992年7月
坪数=8.5坪
営業時間=8時30分~19時。水曜、第2火曜定休
平均客単価=1500円
1日平均集客数=100人

◇外食レストラン新聞の2018年12月3日号の記事を転載しました。