忍者、怪獣等々、テーマパークも顔負けのアミューズメント外食店はいろいろ存在する。提供される料理には店のコンセプトを反映したユニークなものが多いが、凝り過ぎて客の支持を得られずコケるケースもしばしば。食べ物としての安心感と笑いの要素がヒットの鍵となるが、ツボを心得た商品開発に定評があるのが、東京・吉祥寺の“ゆうれい居酒屋”「吉祥寺 遊麗」だ。

愛嬌たっぷり「から傘くん」

取材した“霊界の人気メニュー”を紹介すると、手前の「から傘くん」は三角形にカットしたさつま揚げを串揚げにし、焼いた豚ばらスライスをベロ(舌)に、ウズラの卵を目にして提供。刻み海苔でバツになっている目が愛嬌(あいきょう)たっぷり。

お墓参り(475円税込)別添えのおだしで・お清め・して揚げ出し豆腐に
わら人形くん(496円税込)ウズラの卵とソーセージの串揚げ
眼球<4食限定>(496円(税込)クリームチーズの眼球の中にはアーモンドが
から傘くん(453円税込)マヨネーズを青の食紅で着色し、雨を表現

雨の日にはお経の第一声でもある「南無」にちなんで76%引きの108円と超が付くお得ぶりだ。2品目の「眼球(4食限定)」はクリームチーズを目玉状に丸めたもので、リアルさを演出する充血は糸唐辛子を使用している。

瞳はスライスしたオリーブで、中にベリー系ソースを入れる。その奥の「わら人形くん」はウズラの卵を頭にして手脚はソーセージを横縦に組み合わせ、これを串揚げにして完成度(?)を高めている。

真っ赤な血を演出するのはもちろんケチャップだ。奥の「お墓参り」は串揚げにした豆腐を墓石に見立てて、別添えのおだしを“お清め”よろしく上からかけることで普通の揚げ出し豆腐が完成するという趣向だ。

商品名に“~くん”としてみたり、味のイメージがしやすいシンプル調理をベースにするなど、遊び感覚を表現している点が人気の理由だ。

コスプレや棺桶体験も

「お客さまもお化け屋敷的な料理を求めて来店されますから、ご期待に応えるべく2~3ヵ月に1度、スタッフのアイデアをもとに試食会をして新商品を提案するようにしています」とオーナーの森田康一さんは語る。

こうした面白さを追求していくと、うっかり凝り過ぎてしまうことがあるが、「気軽に注文できる価格であることと、提供時間の短い調理オペレーションでなければお客さまの支持は得られませんね」と森田さんはシビアな一面を見せる。

例えば「眼球(4食限定)」は仕込み置きできる商品だが、充血しているように糸唐辛子をデコレーションするには熟練者でも時間が必要で、これが数量限定の理由だ。

お化け屋敷さながらの内装。スタッフは「南無~」と乾杯の掛け声を発したり、会計時にはお釣りを「三途の川の渡り賃です」と言って渡すなど親しみのある(?)接客で楽しませてくれる。客席はメニュー表の上に血まみれの手首の模型が置かれる。スタッフを呼ぶときはコールベルの代わりに「りん」を鳴らすなど凝った演出が話題を呼ぶ。

「内装や料理だけでなく、ご希望のお客さまが死に装束のコスプレができたり、棺桶に入れるなど体験型の楽しさにも注力しています」と、森田さんは同店の取り組みを語る。こうしたプラスアルファが同店の集客力の理由だ。

●店舗情報
「吉祥寺 遊麗」
所在地=東京都武蔵野市吉祥寺南町1-8-11 弥生ビル地下1階
開業=2005年4月
坪数・席数=30坪・40席
営業時間=17時~翌1時。無休
平均客単価=2500~3000円

◇外食レストラン新聞の2018年11月5日号の記事を転載しました。