創業150年以上の歴史を誇る老舗そば屋「能登治」(東京・新橋)の七尾信昭店主は、まかない作りが大好きという根っからの料理人。「いろいろ試すことができて、創作意欲が湧く。勉強にもなるからね」と、江戸っ子らしいきっぷのいい口調で話す七尾店主の作るまかないは、余った食材に“おいしい発想”でひと手間加えた、完成度の高い創作メニュー揃いだ。

鴨肉の余った部位をミンチに

取材当日のまかないは、「鴨そぼろの三色丼」。鴨料理が自慢の同店では鴨肉を丸ごと仕入れているが、お客には出せない余った部位は肉屋でミンチにしてもらい、まかないに活用しているという。

この鴨肉ミンチを、ニンジン、干し椎茸、ショウガをそれぞれみじん切りにしたものと一緒にそばつゆ、干し椎茸のもどし汁で煮て砂糖、醤油で味を調え、そぼろにし、甘辛く煮たホウレンソウ、いり卵とともにきれいに盛り付けた丼料理だ。添えられた紅ショウガが味の絶妙なアクセントになり、気が利いている。

「まかないは、立ったままでもさっとかっ込める一品物にすることが多いね」と、七尾店主。この手軽さに加え、鴨肉をそぼろにしてしまうという王道メニューとは異なるちょっとしたぜいたく感こそが、まかないの醍醐味といえるだろう。

「本当は、店の小僧に食材費を1万円渡して1週間分のまかないを好きに作らせるようなやり方を試したいと思っているんだよね。そういうのが、まかないの理想。食材の買い方やメニューの組み立て方、調理の練習など、いい勉強になるでしょう」と、七尾店主は語る。

●店舗情報
「能登治」 所在地=東京都港区新橋3-7-5

◇外食レストラン新聞の2018年7月2日号の記事を転載しました。