「ラーメンの代打」を超えた!? 麺抜きラーメン3選
健康志向とダイエットの双方の観点から、糖質カットの風潮が爆発的な勢いで浸透している。「結果をコミットする」ボディーメーク某社のCMの影響も大きく、もはや「糖質=悪」の様相を呈している。特に糖質量が多い炭水化物を忌避する傾向が顕著だ。そんな中、登場したのが「麺抜きラーメン」である。
“食べて後悔”を軽減!
糖質制限をクリアしながら「でもラーメン食べたい!」という欲望をかなえる、まさに画期的なメニュー……と言いたいところだが、消費者の欲求はそう単純なものではない。ラーメンのおいしさの決め手はやはり麺によるところも大きく、「ラーメンを食べたいから、麺抜きラーメンを食べて一件落着」とはならないのが現実のようなのだ。
では、「麺抜きラーメン」の存在意義は何か。今回、名高い3店の事例を探ったところ、ラーメンに限りなく近い一品ながらもラーメンの代替品ではない形で、消費者に受け入れられている様子がうかがえた。
矛盾をはらんだメニューである、「麺抜きラーメン」。このメニューの実態をご紹介しよう。
<麺を野菜にCHANGE>温野菜350g以上で抑制と欲望を両立
家系ラーメン「壱角家」(70店舗)は、麺の代わりに温野菜350g以上を投じた「ベジタブル家系」(680円・税込み)を開発。5月10日~6月30日に期間販売を行い、好評を得たため、8月4日からグランドメニューに昇格させた。販売実績は多い店で月間約150食、少ない店でも50~60食。「主力ではないが、低糖質に関心のある客層を確実につかんでいる」(広報)と、固定客の新規開拓に手応えを得ている。
ベジタブル家系は、麺(生170g)の代わりに、ボイルしたモヤシ、キャベツ、玉ネギ、ニンジンを家系(豚骨醤油)スープに投じた麺抜きラーメン。「糖質90%オフ、炭水化物0」が売り物だが、濃厚な家系スープとボイル野菜の相性が良く、低糖質ながらも食べ応えは十分。抑制と欲望を両立した、まさにWin-Winのメニュー開発事例といえる。
調理方法は、野菜をテボに入れ、ゆで麺機で約20秒ボイルし、家系スープを張った器に投じるだけ。調理ポイントを上げるならば、キャベツの切り幅。試行錯誤の上、家系スープとのバランスが良い6mmに落ち着いたという。
商品開発に当たった川村直一氏は「果たして売れるのか。正直、半信半疑でした」と明かし、「実売するとすんなり受け止められました。経験上、一過性ではなくジワジワと固定客を増やし、名脇役に育つ雰囲気」と説く。
加えて想定外の珍現象が一つ。「白飯を注文する客が約3割」(広報)という食べ合わせだ。家系ラーメン店は白飯無料がお約束。「無料とはいえ、考えもしなかったニーズ」だという。中華料理店の「野菜炒め定食」ならぬラーメン店の「野菜汁定食」として、定番化の先駆けになるかも!?
「ベジタブルすた」は白飯の代わりに素揚げ野菜350g以上
「壱角家」系列の肉丼チェーン「情熱のすためし どんどん」(19店舗)は、ベジタブル家系の好評にならって9月4日から全店で「ベジタブルすためし」をメニュー化した。豚肉との相性、既存機器のスペックを踏まえ、野菜はボイルではなくフライヤーで素揚げに。こちらは壱角家を大幅に上回る日販20~30食の人気ぶりだ。テークアウトならもっと売れるかも!?
◆概要
「壱角家」
経営=ガーデン
店舗数=70
所在地=(本部)東京都新宿区新宿2-8-8 とみん新宿ビル
<麺を肉にCHANGE>豚肩ロース8枚・200gの安定した実力
つけ麺を看板に掲げる「舎鈴」(31店舗)は、麺抜きで豚肩ロースをスープに付けて食べる「つけ肉」(880円・税込み)を開発。昨年夏に東京・八重洲店で試験販売したところ、日販500~550食に対し50~100食の注文を集める人気ぶりで、現在6店舗(八重洲店・丸の内店・新宿西口店・田町駅前店・新橋西口店・久臨ダイバーシティ東京店)で提供している。原料の豚肩ロースが手当でき次第、随時各店でメニュー化する予定だ。
きめ細かい肉質が自慢のスペイン産豚の肩ロースを使用。原料が確保でき次第、全店導入を目指す。つけ汁はスタンダードな魚介豚骨スープと人気の坦々スープがある
「つけ肉」は、スペイン産の豚肩ロースを使ったボイル肉約8枚(生肉換算200g)を、魚介豚骨スープのつけ汁に麺の代わりに付けて食べるスタイル。副菜として温野菜100g(モヤシ・キャベツ・白菜・ニンジン、ホウレンソウ)、メンマが付く。
なにより注目すべきは、麺抜きにもかかわらず「半麺」(100円/ゆで165g)とのセット注文が多いこと。約6割の客が半麺を追加注文するという。
この傾向について「低糖質を志向する方は麺量が多いつけ麺に罪悪感を持つ。でも、つけ麺を食べたい。落としどころとして、つけ肉と半麺のセットが免罪符になっているのでは」(広報)と推測し、「半麺の他、ライス(120円/170g)を注文する客もいるので、7~8割はつけ肉をおかずにしている感じですね」と明かす。
三田遼斉社長のひらめきで発案されたという「つけ肉」。いろいろ試してみたが麺の代わりで肉にかなう物がなかった、というのが開発の決め手。
豚肉のボリュームを見て原価が気になるところだが、「利益よりも客の満足を優先する」という社是に即し、「舎鈴」での順次導入拡大を推進。「ジャンクガレッジ」や「東京タンメントナリ」など別ブランド店でも類似メニューを検討中だ。
◆概要
「舎鈴」
経営=松富士食品
店舗数=31(17年9月末時点)
所在地=(本部)東京都千代田区内神田2-2-5 光正ビル
<麺を豆腐にCHANGE>とろ~り豆腐の新感覚
博多発祥の豚骨ラーメン店「一風堂」では、主力メニューである「白丸元味」の麺を豆腐1丁に替えた「白丸とんこつ豆腐」(790円・税込み)を展開している。しかし同品は、低糖質ブームを見据えて考案されたのではない。「ラーメンとは別種の新しい料理として採用しました。それが結果的に、低糖質料理として広まった」(広報)という。
もともと同品は昨年、期間限定メニューとして、東京、福岡の3店舗で試験的に提供したが、販売直後から問い合わせが殺到。この好評を受け、今年3月からは東京、熊本など4店で本格的にメニュー導入した。
売れ行きは好調で「一風堂ルミネエスト新宿店(ニブンノイップウドウ)」の例では、ラーメン各品の日販は平日300~400食、土日500食に対し、「白丸とんこつ豆腐」は限定20食を毎日ほぼ完売。10月からは関東、東海地方を中心に39店で提供を開始している(期間限定)。
同品を注文するのは、女性と30代の若いサラリーマンが目立つ。しかし、「炭水化物は抜きたい。でもラーメン食べたい」としての注文は案外少ない。「一風堂のお客さまは、やはりラーメンがお目当てです(笑)」と、広報の原智彦氏が語るように、糖質ダイエット中であっても、同店を訪れるからには腹をくくり、王道のラーメンを注文するのだ。
同品の注文例でよく見られるのは、複数人で来店したが自分はラーメン気分ではなく、「ラーメンではない料理」を求めての注文。その他、以前食べてファンになったリピーターも多い。実際、まろやかな豆腐と豚骨スープの組み合わせをれんげで楽しむ感覚は、ラーメンとはまるで異なる魅力だ。
麺抜きラーメンというと、「糖質ダイエット中にラーメンが食べたくなった時の救世主」ととらえてしまいがちだが、麺のないラーメンはやはりラーメンの代打選手にはなり得ない。「ヘルシーな新感覚料理」として進化を遂げるのが、麺抜きラーメンにおける一つの正解なのである。
ラーメンにはやっぱり麺がマスト 「糖質半分の麺」という選択
「選べる魅力」を前面に打ち出している同店では、糖質量を2分の1にした「糖質ニブンノイチ麺」という選択肢を用意している。小麦の外皮や糖質量の少ない11種類の穀類をブレンドしたニブンノイチ麺は、そばに近い食感。通常の麺よりもコシは弱いが、香ばしい風味があり「ニブンノイチ麺の方が好み」という声も多いという。
◆概要
「一風堂ルミネエスト新宿店(ニブンノイップウドウ)」
経営=力の源ホールディングス
所在地=東京都新宿区新宿3-38-1 ルミネエスト新宿7階
営業時間=11:00~23:00、土日祝11:00~22:30
席数=35席
◇外食レストラン新聞の2017年11月6日号の記事を転載しました。
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