コンビニやスーパーが喫食コーナーを作るなど、ますます競合が増える外食業界。そうした窮状を打破する一手は外食ならではの“楽しさ”の追求だろう。そのお手本ともいえる店が東京・西荻窪の居酒屋「すっぴん 西荻窪」。漬物という“ありきたり”な商品を社会現象となったあの人気ゲームにもじった演出を施して客に楽しさを提供している。

中身はキュウリ、カブ、ニンジンなどのぬか漬け

「当店はお客さまをお待たせしないクイック提供を全商品で心がけています。もともとすぐ出る商品の代表である漬物をさらに高速化できないかと考えた時にガチャポンのケースに詰めておいて、オーダーが入ったら即投げてお渡しするスタイルを思いつき、すぐに部下をヨドバシカメラのカチャポンコーナーに走らせたんです」と経営母体であるバカワライの小林淳オーナーは笑う。

「つけもんGO」324円(税込み)つけもんGOの内容はキュウリ、カブ、ニンジンのぬか漬けで、1個50~60gとボリュームもある。日本酒は25銘柄と品揃えを充実。グラス130mlを税込み540円の均一価格で提供してお値打ちを訴求する

店内を青色やオレンジ色の謎のボールが飛び交う様子に興味を持った他の客からの連鎖注文も多いという。

一見アイデアだけの商品と思われがちだが、味にもこだわる。地元の老舗居酒屋「やよい」のおかみさんから20年以上の年季が入ったぬか床を分けてもらい、小林オーナー自ら野菜を漬ける。野菜はキュウリ、カブ、ニンジンを主として常時3種類を詰め込む。

注文が入ったら投げてお客に提供するのがつけもんGOの面白さで、3秒の超速提供が可能。万が一落としても容器が開かないことは確認済み

遊び心満載が繁盛の秘訣

同店は連日20人以上お断りするほどの超人気店。その秘密の一つが同品をはじめとする遊び心ある施策の数々だ。

まずおしぼりには、ジバンシィなど1980年代バブル期に流行した香水を振りかけたものを提供。メーン客層である40~50代男女の笑いを狙う。

25種類をグラス130ml税込み540円の均一価格で用意する日本酒では、辛口タイプを「ピーコ」、芳醇タイプを「武田久美子」と表示してこれまたメーン客層の笑いを誘う。もちろん若者客はわけが分からず戸惑うが、それを見た隣客が解説するなど客同士のコミュニケーションが生まれるきっかけにもなっている。

また冷やしトマトなどに振りかける塩を小袋に詰めて店内のそこかしこに隠しておき、客から声がかかったときに「そこの裏を見てくれますか?」と返事。客が言われたとおり見てみると塩が出てくるという具合だ。

こうした客を楽しませる意識をスタッフ全員が共有しており、これが同店の活気を生み出している。「スタッフ全員がお客さまの顔と名前を覚えて距離の近い接客ができるよう、さらに接客に力を入れていく」と小林オーナーは意気込む。

手前のカウンター席には鮮魚がズラリと並ぶ陳列台が組み込まれ、客の目の前で魚をさばいていくライブ感を演出

●店舗情報
「すっぴん 西荻窪」
経営=バカワライ
店舗所在地=東京都杉並区西荻窪3-11-11
開業=2016年11月
午後5時~翌午前1時(金・土曜~翌午前3時)、無休
坪数・席数=14坪・34席
1日平均客数=70人
平均客単価=3750円

◇外食レストラン新聞の2017年10月2日号の記事を転載しました。