巾着料理は数多いが、うどんで異彩を放つのが、奈良の「麺闘庵」が提供する「巾着きつね」。中にうどんが入った迫力ある見た目に圧倒されるが、主役を支える不可欠の脇役が、口を縛っている青ネギの存在である。

「『巾着は干瓢で結ぶもの』というイメージがあるが、干瓢では油揚げと同色でポイントにならない。そこで思いついたのが“青丹(あおに)”の色を詠み込んだ、奈良の枕詞“あおによし”。青ネギならば、色合いが美しく、うどんの薬味としても相性がよいとひらめきました」と、津保井勇店主。

巾着用の“ひも”として求めるのは、結びやすくちぎれにくい青ネギ。傷がなく程よい太さと長さのしっかりした商品に限定し、品質のよい国産品を仕入れているとか。使用予定の青ネギはあらかじめ根をカットし、水を入れた容器に立てて専用の冷蔵庫で保存する。

使用時に、熱湯でサッとゆでて氷水へ入れることでより鮮明な色合いに。巾着1つにつき1本使用し、首にくるりと巻いて結び、余分な部分をカットすれば、緑のアクセントが利いた巾着が出来上がる。「コストはかかるが、なくてはならないもの」と、青ネギは重要な役割を担っている。

●店舗情報
「麺闘庵」
所在地=奈良県奈良市橋本町30-1

◇外食レストラン新聞の2021年9月6日号の記事を転載しました。