脳梗塞から復活、野菜をたっぷり食べる生活に ペドロ梅村さん
「ペドロ&カプリシャス」のリーダーとして、また、ラテン・パーカッショニストの第一人者としても有名なペドロ梅村さん。「別れの朝」「五番街のマリーへ」など爆発的なヒットを記録した作品は、いまでも多くのファンの心に刻まれています。結成40周年だった2011年に脳梗塞が見つかり、一時体調が心配されましたが、現在は病気を乗り越え元気に活躍中。「大好きな音楽へのモチベーションと全国のおいしい食べ物が僕の元気を支えてくれる」と話すペドロさんに、メキシコやキューバの思い出、好きな野菜料理などについて伺いました。
音楽の原点はキューバ音楽 多くの出会いで「ペドロラテン」を確立
僕の音楽の原点はキューバ音楽。でも、高校生の時はジャズばかり聴いていたんだ。毎朝うちの姉ちゃんが、フランク・シナトラやグレン・ミラーのレコードをかけて、僕を起こしてくれた。気持ちいいんだ、その目覚めが。
楽器をやり始めたのは、「水原弘とブルーソックス・オーケストラ」に入ってから。本当はドラム志望だったんだけど、なぜかラテン打楽器のコンガで。当時の日本にコンガをやっている人は少なかったから、師匠なんて当然いない。パーカッションのライブを聴きに行ったりして、独学でワザを盗みながら覚えていったんだ。
「ペドロ&カプリシャス」がデビューしたのは、1971年。爆発的にヒットした「別れの朝」を歌った初代ボーカルの故・前野曜子の次に、博多でクラブ歌手をしていた高橋まり(現・高橋真梨子)を迎え入れて、「ジョニィへの伝言」や「五番街のマリーへ」をヒットさせていった。初めて真梨子に会った時はまだ中学生だったんだけど、本当に歌がうまかった。博多では、のちのチューリップのリーダーになる財津和夫さんとも出会ったよ。
その後も本格的なラテン音楽を追求して、1997年には、メキシコ・キューバなどの中南米でコンサートツアーも成功させた。2004年にはキューバの首都ハバナで開催された「日本・キューバ経済交流75周年記念公演」にも招待されたんだ。メキシコもキューバも本当にいい国。初めて行った時の光景はいまでも忘れられない。
メキシコシティでのコンサートが終わって、夜中にバスでグアダラハラへ移動して、ホテルに到着したのは朝。小さなホテルだったけど、昔ながらの建物で本当に素敵だった。周りには教会が立ち並んでいて、それはすごかった。寝るのがもったいないから、ずっと散歩していたよ。コンサート会場も、昔のスペイン風建築。そんな中でパワフルなラテン音楽を奏でるステージに立てるなんて最高の体験だったね。
キャベツとブロッコリーが好物 野菜はシンプルに食べるのが一番
2011年にデビュー40周年を記念して、故・阿久悠さん作詞の「酔いどれマリアが歌う店」を発表しました。阿久さんとはずっと以前から、それこそ「五番街のマリーへ」「ジョニィへの伝言」をつくってくれた頃からの付き合いだけど、ある日、ジャッキー吉川や三木たかしたちと飲んでいる時に、うちのグループがキューバ音楽をやっているって知らなかった、なんて言うんだ。「ごめん、ごめん」って謝ってくれて(笑)、そんな流れで「酔いどれマリアが歌う店」をつくってもらうことになったんだ。
実は、この歌のレコーディングをした翌日に、定期健診で軽い脳梗塞が見つかって。それ以来、食事や健康に気をつけるようになったよ。いまは、野菜はなんでも食べる。好物はキャベツとブロッコリー。群馬の嬬恋キャベツは甘くておいしいよね! 細かく刻んで、しょうゆと唐辛子をかけてサラダ感覚で食べるのが好き。ブロッコリーはゆでてマヨネーズで。野菜はシンプルに食べるのが一番だね。
最近は、自分でも料理をするんだよ。お気に入りはピザトースト。具は、輪切りにしたピーマンと、スライスたまねぎ。ケチャップとタバスコのソースに、チーズをとろけさせて食べるのが最高。タコスもつくるよ。
トルティーヤからつくるのがペドロ流。とうもろこし粉は油っこいから、生地は小麦粉だけ。塩・こしょうで炒めたひき肉を生地で巻いて、つまようじを刺して油で揚げる。タコスソースは、おろしたたまねぎに一味唐辛子を入れて、青唐辛子のピクルスとつぶしたトマトを混ぜたもの。博多のメキシコ料理店「ロシータ」で教えてもらったんだけど、ここのは日本で一番うまいね。
子どもの頃はあまり野菜を食べなかったけど、大人になって変わったね。故郷の山形に戻ると、何でもおいしく感じる。おふくろの親友のおばさんがよくつくってくれたおしんこがおいしいんだ。地元の民田(みんでん)なすの小さいのをからし漬けにしてあって。いまでも、山形に帰る前には連絡して、つくってもらっているんだ。
ライムやマンゴーも大好き うまいものを食べ、元気に演奏を続けたい
メキシコやキューバは、ライムやレモンがおいしい。アボカドにライムをたっぷりと絞って、ゆで卵と混ぜてディップにしたアボカド・デビルドエッグがお気に入り。果物も好きだけど、マンゴーは特別。街角のいたるところで売られていて、そのままかぶりつくのがおススメ。
海外でおいしいものを見つけるコツ? 僕はいつも、仕事前に町をぶらりと歩きながら見当をつけておくんだ。店構えが豪華でない、おばちゃんが2人くらいでやっているような小さなお店。仕事が終わって行ってみると、だいたい当たりの店なんだよね。コンサートでもらった花束を、「お土産だよ」って渡すと、店のおばちゃんの対応が違うんだよ(笑)。
僕は、日本や海外のいろいろな所へ演奏旅行に行っているから、うまいものをたくさん食べてきた。人生を明るく過ごせるのも、大好きな音楽と食べ物に囲まれているから。みんなからも「幸せだね」って言われるんだ。これからも元気に、グループの50周年、60周年をめざして走り続けたいね。
●プロフィール
ペドロ・うめむら 1942年、山形県生まれ。「ペドロ&カプリシャス」のリーダー。パーカッション・コーラスを担当。1971年にリリースされた「別れの朝」でレコードデビュー。「ジョニィへの伝言」「五番街のマリーへ」などのヒットを連発し、1975年にはNHK紅白歌合戦に出場。現在は若手を中心としたpedro y sus conpaneros(ペドロ イスス コンパニェロス)でも活躍中。日本ラテンアメリカ音楽協会理事も務める。
◇百菜元気新聞の2017年1月1日号の記事を転載しました。
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