整理収納や掃除を通して「幸せ住空間」をつくる、片づけのプロ古堅純子(ふるかた・じゅんこ)さん。片づけ・掃除を目的とせず、暮らしやすい空間をつくってから物を整理する「古堅式メソッド」が好評です。そこで古堅さんに、物を捨てなくてもいい片付けの方法、キッチンや冷蔵庫の収納のコツを教えていただきました。

物を寄せてでも空間をつくること 家族で協力して片付けることも大事

どんなに物を減らしても、テーブルの上に物がのっている空間は、散らかって見えませんか?私が昔から一貫してこだわってきたのは「景色(空間)」です。

古堅式メソッドは「物は捨てなくていい」「物より大切なのは空間」がコンセプト。5000軒にも及ぶ家を片付けしてきた経験から、人はスッキリと片づいた空間を見ると、余計な物を減らそうという気持ちが自然とわいてくるんですよね。そればかりか、空間ができて景色が変わると、何かを始めようという意欲も生まれるものです。

物だらけの家を片づけるには、まず、必要な物以外は寄せて、更地の状態にします。手っ取り早い方法は、比較的使っていないひと部屋をつぶして物置部屋にすること。物を動かす場所がなければ、ブルドーザーのようにガーッと部屋の片隅に寄せて、家具で隠してしまえばいいのです。たとえばチェストを少し前に出し、その後ろに「物」を移します。

更地ができたら、まずはひと部屋、物がない片付いた空間をつくっていきましょう。リビングやダイニングから始めると、家族の意識が変わるのでオススメです。古堅式メソッドは、1人でやらず、家族に協力してもらうのもポイント。同じ片付けでも景色が変わると、ワクワクする気持ちになり、より暮らしが快適に。家族で楽しみながら、片付けに取り組んで欲しいと思います。

「水のライン」「火のライン」「作業ライン」に分けて

キッチン収納のコツは、縦のラインを意識することです。あちこち動き回らず、その場で物が取れるラインをイメージするといいでしょう。

基本は、シンク中心の「水のライン」、コンロ中心の「火のライン」、作業スペースを中心とした「作業ライン」に分けて考えます。キッチンで使うものをこの3つのラインに分けて収納していくのです。

例えば、フライパン、鍋のフタ、調味料などは「火のライン」、すなわちコンロの上や下、振り返って取り出せる収納に入れていきます。そうすると、コンロの前に立った時、必要なものがすぐに取れるので、機能的でストレスなく、キッチンも散らからずに済みますよね。

ちなみに、わが家では、シンクの下にゴミ箱を入れています。生ゴミをすぐに捨てることができるので、三角コーナーも必要ないんです。また、ゴールデンゾーン(物が最も取りやすい腰から背丈までの位置)には、使用頻度の高い物を収納することも大切です。

キッチンは料理をする人だけが使う場所ではないので、動線を考えることも重要。冷蔵庫やウォーターサーバーはキッチンの奥でなく入り口に配置すれば、調理をしている間に家族が水を飲んだり、冷蔵庫の物を取りにきてもぶつからないので、使い勝手も良くなるのです。

野菜室と冷凍室を上手く使い野菜の稼働率を上げる意識を

この時期、実家で必ず食卓に並んでいたのは、トマト、とうもろこし、枝豆、じゃがいもです。いつも野菜が先に出てくるので、うちは貧乏だと思っていたほど(笑)。いまも、凝った料理より、素材そのものがおいしい野菜が好きですね。

野菜の収納は、野菜室と冷凍室を上手く使って、稼働率を上げるのがポイントです。新鮮な野菜はすぐに食べて、食べきれない野菜は切って冷凍室へ。私は、2週間に1度、野菜室が空になるほど使って、冷蔵庫の中を掃除します。そうすれば、稼働率も上がるし、冷蔵庫のメンテナンスにもなりますからね。

冷凍室の中をめぐらせるには、古い野菜ストックを手前にして並べるなど、自分で法則をつくっておくといいでしょう。備蓄しておくことも大事ですが、野菜は新鮮なモノをおいしくいただくことが大事です。

<プロフィル>
ふるかた・じゅんこ 20年以上現場第一主義を貫き、顧客の元へ通っている。5000軒以上のお宅を訪問しサービスを重ね、独自の「古堅式メソッド」を確立。整理収納アドバイザー1級。著書に『なぜかワクワクする片づけの新常識』(朝日新聞出版)、『マンガで古堅式 夢をかなえる片付けのルーティン』(G.B.)など多数。YouTubeチャンネル「週末ビフォーアフター」大好評配信中!

『シニアのためのなぜかワクワクする片づけの新常識』 古堅純子著
朝日新聞出版 定価:869円(税込)

『マンガで古堅式 夢をかなえる片付けのルーティン』 古堅純子(原作) 瀬芹つくね(マンガ)
G.B. 定価:1265円(税込)

◇日本食糧新聞の2021年8月1日号の記事を転載しました。