現在、さまざまな店が“ちょい飲み”をキーワードにした新たな取り組みを始めている。「飲みに行く」というとこれまでは居酒屋一択の感があったが、時代は進み、これからはレストランや専門店でライトに飲む文化が浸透していくことが予想される。そんな風潮にスポットを当て、今号ではカレー店のちょい飲み事例を紹介する。

小皿料理は300円台に【カレーショップC&Cダイニング 京橋店】

スペインのバル風小皿料理とごちそう感のあるカレーをゆっくり味わえる、ワンランク上のダイニングを目指している

C&Cカレーが、カジュアルにお酒を楽しめるダイニングを展開している。「時短ランチ向きカレー店」というこれまでのイメージとは異なり、シャレたつまみが楽しめる店だ。

看板メニューのカレーは、シーフードや豚ロース肉などの食材を使い、具材に合わせて隠し味を配合したルウに変えることで、1000円前後の価格帯に挑んでいる。一方、つまみメニューは、数人でわいわいと楽しめるバルのタパス(小皿料理)をイメージ。一般の居酒屋よりも単価を安く抑えて300~400円台を中心に揃えている。

〆のクリーミーカレーラーメン

「カレー店で飲む、という習慣が一般にはまだ根付いていない現状を考えての価格設定です。カレー店というと、やはりランチの印象がまだ強いものですから。まずは“カレー店=お酒を軽く飲め、しっかりとお腹も満たせる場”と認知されるよう、お客さまが気軽に利用できる価格帯にしました」と、レストラン京王・カレーショップC&C担当の高橋俊光氏。

(右上)ジャーマンポテトのチーズ焼き(左上)ハニーペッパーカマンベール(下)オマール海老入りビスククリームコロッケ

また、今後の展開については、次のように語っている。「ランチにおいてカレーは、圧倒的に人気があります。そして、ランチでの来店をきっかけに“夜はライトに飲める店なのか”と知り、安心感を持って夜も足を運んでくださる。これが当店の強みです。今後は、ランチのカレーショップという枠を超え、“600円カレーのC&C”から脱却したアッパーブランドの展開に結び付けたい、と期待しています」。

シーフードのアヒージョ

●データ

所在地=東京都中央区京橋2-2-1京橋エドグラン地下1階
営業時間=11:00~16:00、17:00~22:30、土・休日11:00~17:00
席数=カウンター6席、テーブル30席、テラス15席
ちょい飲み平均客単価=2,000円弱

トッピングメニューをおつまみにカレーハウスCoCo壱番屋 夜ココ JR大宮駅西口店

トッピング用メニューを、つまみとして提供。千切りキャベツを添えたり小鉢に盛ると、ちょい飲みにはぴったりのつまみになる

 ココイチカレーの魅力は何といっても、自由で多彩なトッピングだ。夜ココではこのトッピングの一部メニューを、そのままつまみに代えて提供している。「ヒレカツ」「半熟タマゴ鶏つくね」「クリームコロッケ」などは確かに、つまみにも好適だ。

しかし面白いのは、ツナ、オクラ山芋、納豆などのシンプルなトッピングもまた、お客には好評という事実。実際、こうしたシンプルなトッピングをつまみに転用すると、不思議なほど楽しさが感じられる。

自慢の1本!ロース串カツ

同店の北村綾香店長によると、「夜ココ利用のお客さまは、カレーを食べに来たついでにお酒を注文するか、どこかで飲んだ後、もう少し飲んでカレーで締めよう、という例が主流です」とのことで、ほとんどのお客がカレーを注文。カレーを食べる前にサッと飲むのなら、凝った料理よりもシンプルな一皿の方が好ましい側面もあるのだろう。

つまみになるソーセージサラダが好評

「お客さまのわがままに応えたい、というのが私たちの基本姿勢です。夜ココも、既存メニューをお客さまのニーズでもっと自由に楽しんでいただきたい、と考えて実施しています」と、壱番屋経営企画室長の浅井佳会氏は語る。

●データ
所在地=埼玉県さいたま市大宮区桜木町2-154 川村第一ビル1階
営業時間=11:00~翌0:30(夜ココは17:00~)
席数=カウンター19席
ちょい飲み平均客単価=1,200円

夜は“スパイス居酒屋”に徹する【もうやんカレー大手町】

和洋中のカテゴリーにも属さないオリジナリティーの高い料理が自慢。これらの料理で飲む一杯は、居酒屋でのそれとは一線を画す魅力がある

同店の夜の時間帯は「スパイス料理パブ」をイメージし、どこの国の料理の枠にも収まりきらないスパイス料理を全品500円均一で提供している。

「もともと、お酒とカレーを楽しむお客さまが、カレーの上のトッピングをおつまみのように楽しんでいた。それなら、そのまま小皿メニューにしてしまおう、と考えたのです」と、辻智太郎社長。

トッピングアイテムをアレンジし、スパイスを生かした小皿料理は濃いめの赤ワインを合わせたくなる

多彩なトッピングがのったカレーは満足感は大きいが、反面、一品料理ではお酒を楽しむ人には物足りない。そこで、“スパイスタパス”と銘打った小皿料理を採用したのだ。

カレーと同様、「健康に良くおいしいスパイス料理」をコンセプトに、小皿料理を考案し、同時にサワー、ハイボール200円などのサービス価格を積極的に導入。

現在では、カレー店でありながら“夜は飲める店”のイメージもすっかり定着し、辻社長はこう述べている。「スパイスタパスを採用してから、お酒を飲むお客さま、それも女性客が倍増しました。年齢も20~50代と幅広い層の方が利用してくださっています」。

●データ
所在地=東京都千代田区大手町1-1-2 大手門タワー・JXビル地下1階
営業時間=11:30~15:00、18:00~23:30
席数=カウンター5席、テーブル95席
ちょい飲み平均客単価=2,500円

◇外食レストラン新聞の2017年7月3日号の記事を転載しました。